日本でも愛されるムーミン。あの丸くて白い生きものたちの物語は、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンが生み出しました。かわいらしい絵の奥に流れているのは、実はフィンランドの森と湖、そして厳しくも美しい季節のうつろいです。今日は、ムーミンを通して、サウナ文化と地続きの北欧の自然観をのぞいてみます。
作者が愛した、島の暮らし
トーベ・ヤンソン(1914〜2001年)は、夏をフィンランド湾の小さな島で過ごすことを何より愛した人でした。電気も水道も乏しい岩の島で、絵を描き、物語を書き、海を眺めて暮らす。この島暮らしの手ざわりが、ムーミン谷の風景の下敷きになっています。自然は美しいだけでなく、嵐も来れば冬も来る。人(や生きもの)は、その大きな自然のなかの小さな一部にすぎない。この謙虚な自然観が、物語の根っこにあります。フィンランド人が湖畔のコテージ、モッキ(こちら)で夏を過ごす暮らしと、まっすぐつながっています。
冬眠と、光の祝祭
ムーミンたちは冬になると冬眠します。この設定にも、フィンランドの冬の暗さと、春の光への渇望が映っています。長い暗い冬を静かにやり過ごし、光が戻る季節を待ちわびる。ある物語では、冬眠から早く目覚めたムーミンが、雪と氷の静かな世界をさまよう。北欧の冬ごもりの感覚が、そのまま物語になっています。逆に、夏至(ユハンヌスの話)のような光の祝祭は、生きものたちが浮かれ、火を焚き、踊る場面として描かれる。暗と明、静と動を行き来する北欧の一年が、物語のリズムそのものなのです。
「静けさ」を、こわがらない
ムーミンの物語には、なにも起こらない静かな時間がたっぷり流れます。海を見て、雨を聞き、ただそこにいる。この「静けさをこわがらない」感覚は、サウナの静けさ(こちら)と同じ質のものです。予定を詰め込まず、自然のそばで、時間がゆっくり流れるのを許す。忙しい現代人がサウナや森に求めているものを、ムーミン谷はずっと前から描いていました。ヤンソン自身の島暮らしが、そういう時間の宝庫だったのでしょう。
季節を、まるごと生きる物語
ムーミンのもうひとつの魅力は、季節をまるごと描くことです。長い冬、爆発するような短い夏、ものがなしい秋。フィンランドの一年は、日本以上に振れ幅が大きく、その振れ幅こそが暮らしの主役になります。白夜の夏に湖で泳ぎ、暗い冬に窓辺で光を待ち、秋にはベリーを摘んで冬にそなえる。季節に逆らわず、そのつど違う楽しみを見つける。サウナの入り方が季節で変わる(こちら)ように、暮らしのすべてが季節と踊っている。ムーミン谷は、季節を敵にせず相棒にする、北欧の知恵の教科書でもあります。日本の四季を慈しむ心と、どこか深く響き合うのです。
物語のそばに、火のある暮らしを
ムーミンの世界に惹かれる人は、たぶん静かな自然と、季節を感じる暮らしが好きな人です。それはそのまま、火と蒸気のある暮らしを好む心とかさなります。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターや薪ストーブで、季節を感じながら静かに過ごす時間をお手伝いしています。物語のような冬ごもりを、岩手の家で。ご相談、店でどうぞ。
写真: Kospo75 (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



