EARTHQUAKE / 揺れたとき、どうなるか

薪ストーブは、
簡単には消せません。

協会が8つの消火方法を実際に試しました。 砂も、消火器も、放水も、鎮火には至りませんでした。 都合のいいことは書きません。分かったことを、そのまま並べます。

  1. 熊本地震で分かったこと
  2. 地震対策の三原則
  3. お客様の3分の1が、震度6強以上
  4. 実際に起きたこと
  5. 消せるのか ── 8つ試した
  6. 効いたのは、ひとつだけ
  7. 倒れないようにするには
  8. 会員がやっている対策
  9. まだ、確立されていない
  10. 当社は、どうしているか
  11. よくある質問

熊本地震で分かったこと

2016年4月の熊本地震で、薪ストーブの耐震性が早急に求められることが明らかになった。住宅の耐震性能の向上により住宅が倒壊せず、薪ストーブ設置場所の被害が大きいことが確認されたためである。薪ストーブ・煙突が原因の火災などの二次的被害によって財産や生命が失われることのない対応を、急務としなければならない状況となった。

家が倒れなくなったから、
中の火が問題になった
家が倒れなくなったぶん、家の中の火が問題になった。耐震等級が上がって住宅が持ちこたえるようになると、こんどは「倒れなかった家の中で、ストーブがどうなるか」が残る。

地震対策の三原則

協会は、この三つを掲げています。

① 倒れない
薪ストーブ本体が転倒しないこと
② 外れない
煙突が外れないこと
③ 壊れない
炉台・炉壁が壊れないこと
日本暖炉ストーブ協会 技術委員会 地震WG(2017年)

お客様の3分の1が、震度6強以上

地震の被災経験がない会員は半数。一方で、お客様では3分の1が震度6強以上の被災経験あり。

お客様から、こういう問い合わせが来ているそうです。

施工・使用部材への不安については「不安を感じている」が多数派で、「施工」に関してが7割超と最も高かった。

なのに、対策は「していない」が多数派
対策の実施状況は、本体・煙突・炉台のいずれも「対策していない」が多数派。特に炉台の施工については、対策しているのが1割強。

被災の経験が5割、震度6強以上が3分の1であったことを考えると、対策を実施することが充分に浸透しているとはいえない。
出どころ:日本暖炉ストーブ協会 2024年 FIREWORKS 事前アンケート調査(協会会員向け)

実際に起きたこと

震度6強・7の地域で

震度6弱・5強の地域で

「ストーブ本体が横に1mほどズレ、煙突も外れた」 ── これが、火が入っている最中に起きたらどうなるか。 そこから先が、次の話です。

消せるのか ── 8つ試した

地震等の災害時における、燃焼中の薪ストーブを「消火する」方法の確立を目的とした実証実験。薪ストーブが燃焼している状態で、様々な「鎮圧方法」の有効性を検証した。

2017年1月24日(火)・25日(水)、三重県で行われました。条件はこうです。

煙突スパイラル管 φ150mm・4m
直径5〜7cmの針葉樹 7kg
開始着火から40分後に消火を開始
給気燃焼用給気は全開のまま

言葉の使い分けも、先に決められています。

鎮圧

消火活動によって、火の勢いが収まった状態

鎮火

消火活動によって、火が完全に消え、再燃焼の恐れが無い状態

この実験は「鎮圧」方法の検証であり、「鎮火」を目的としていない。一定の条件下で結果を比べたもの。

試した方法結果何が起きたか
煙突を口元から外す消えなかった燃焼構造にかかわらず燃焼は継続し、火は消えなかった。燃焼スピードは遅くなったが、燃焼の条件は保たれたと考えられる。屋内で煙突が外れた場合、多量の煙が充満する可能性がある。
給気・排気を遮断する★消えた目視確認では、どちらの機種も早い段階で炉内の炎が消えた。翌朝の炉内には炭状の燃え残りがあり、燃焼が継続されなかったことが確認された。ただし天板の温度がなかなか下がらず、地震時に素早く消すという点では課題が残る。本体から漏れ出る排気ガス(COなど)については検証が必要。
砂を投入して窒息させる消えなかった12kg、22kg、37kgと投入した。一時的に炎は消えたが燃焼は継続し、消火できなかった。砂が炉床に流れ落ちはじめると、再び熾火が現れて再燃焼しはじめた。砂の投入が容易なトップローディングという条件でこれなので、一般的なストーブで砂での消火は困難だと予想される。
重曹を投入して窒息させる消えなかった消火できなかったが、瞬間的に火力を抑えた点は評価できる。30分後には勢いは弱いが再燃焼していた。
消火剤を投入(SAT119)消えなかった一時的に炎は消えたが燃焼は継続し、2分後に再着火した。火の中に置くだけでは容器が破裂せず、消火液が機能するほど出なかった。容器を突き割ることは、冷静さを欠く緊急時にできるとは思えない。袋が溶けてガラスに付着し、液体が炉内・アッシュリップ・炉台に付着した。
消火剤を投入(AFO)消えなかった瞬間的に火力を抑えた点は評価できるが、鎮火には至らなかった。ドアが完全に閉まっていない場合は危険が予測される。
転倒したストーブへ消火器消えなかった大量の消火粉末が飛散し、視界不良、息苦しくなるほどで、屋内での使用は困難。ガラスが割れ、床面に熾火が飛散した。消火剤が本体内部の火元には届きにくく、1本では鎮火できなかった。床面の合板は炭化していた。復旧は、転倒の衝撃と粉末と放水により不可能。
転倒したストーブへ放水消えなかった熱い鋳鉄に水がかかった途端に大量の水蒸気が発生し、視界不良や火傷の危険を伴う作業となった。外装部品やガラスに割れは確認できなかった。アッシュリップがあったため、床面の合板に炭化は見られなかった。

効いたのは、ひとつだけ

給気と排気を、遮断する
8つの方法のうち、翌朝まで燃焼が継続しなかったのは、これだけでした。
砂も、重曹も、消火剤も、消火器も、放水も、一時的に火の勢いを抑えることはできても、 鎮火には至りませんでした。

ただし、この方法にも課題が残ります。 天板の温度がなかなか下がらないので、地震のときに素早く消すという点では足りません。 本体から漏れる排気ガス(一酸化炭素など)についても、検証が必要とされています。

そして協会は、こう総括しています。

今回の実験で多くの消火方法を試み、結果は様々でしたが、明らかになったのは「薪ストーブが転倒した場合の消火はかなり困難である」「薪ストーブは簡単には消せない」この2点です。今回の実験は鎮圧方法の検証であり、鎮火は目的としていません。消火だけで地震対策が完結する訳ではなく、人命第一と考えれば避難という選択も大切です。

続けて、こう書かれています。この一文が、このページを作った理由です。

ただ、今回の様な実証実験をせず、根拠のない消火方法の推奨、偏った情報や嘘が正しいかのように流布される事こそが危険だと感じています。……お客様に、何が有効であり有効でないのか、地震時にできることできないこと等を具体的に指し示す「ガイドライン」を提供することが重要かと考えます。それは、お客様に対する我々の責任でもあると考え、今後も取り組んでいきたいと思います。── 日本暖炉ストーブ協会 技術委員会 地震WG 消火グループ 消火実験報告

倒れないようにするには

消せないのなら、倒さないことです。 協会は起震車を使って、実際に揺らす実験もしています。 2017年2月22日(水)9:30〜17:00、静岡県浜松市、参加者43名。

5つのタイプのストーブで

7つの固定方法を試した

床と一体化させれば、効果はある
本実験において、耐震マットを装着した耐震部材と薪ストーブ本体とが床に固定(一体化)されることで、一定の効果を得ることが出来た。但し、本体剛性が弱く重心の高いストーブにおいては、この方法のみでの対策では効果は得られない事が推察される。

「背が高くて、本体がしっかりしていないストーブは、マットだけでは足りない」 ということです。機種によって、打つ手が変わります。

会員がやっている対策

全国の会員が、実際にどうしているか。アンケートに挙がったものです。

ストーブ本体

煙突

炉台

お客様への説明

まだ、確立されていない

現状では、煙突・炉台・ストーブ本体などすべてを包括した耐震基準や対策、安全かつ速やかに消火をする方法は、確立されているとは言えません。しかし、過去の協会の取り組みで一定程度の効果が確認された対策は、直近の地震でも効果が得られています。

施工方法や部材強度など、設置に関するエビデンスを持った情報が求められていることが分かります。これにつながる実証実験や専門家による講義を経て、協会独自のガイドライン策定が求められます。

参考:火災の統計

発火源令和6年・全国
ストーブ1,016件
取灰(灰の始末)227件
煙突・煙道149件

煙突・煙道を発火源とする火災は、令和6年に岩手県で6件(令和5年は9件)。

「ストーブ」は薪ストーブ専用の区分ではない(石油・電気などを含む)。「煙突・煙道」も風呂かまど・ボイラー・焼却炉を含む。確定値の資料に「薪」という語は一度も出てこない。

出どころ:消防庁「令和6年(1〜12月)における火災の状況(確定値)」

当社は、どうしているか

岩手は、2011年を経験した土地です。 「うちは大丈夫」と言えるほど、この話は軽くありません。

火災予防条例には、炉について 「地震その他の振動又は衝撃により容易に転倒し、亀裂し、又は破損しない構造とすること」 という定めがあります。数字は書かれていません。だから、どこまでやるかは会社が決めます。

当社では、現場に関わる者はJFSA認定技術者の資格を取っています。 ここに書いた実験の結果は、その講習で共有されているものです。 3年ごとの更新があるので、取ったら終わりにはなりません。

機種によって、打つ手が変わります。 背の高い縦型なのか、低重心の4本脚なのか。炉台がレンガなのかタイルなのか。 お宅ごとに違うので、一律の答えはありません。 設置のときにご相談ください。

2年に1度はメンテナンスをしないと、お互い不安です。 揺れのあとは、とくに一度見せてください。 煙突の継ぎ目も、壁の中の貫通部も、外からは見えません。 他社で設置された機械もお引き受けしています。

当社は独自の保険に加入しており、10年間で最大3億円の保証がかかっています。 使わずに済むのがいちばんですが、 お客様の家に火を入れさせていただく仕事なので、持っています。

揺れが激しいときは、消そうとせずに逃げてください。 協会の実験が示したのは「簡単には消せない」ということです。 火よりも、命が先です。
落ち着いてから、ご連絡ください。
岩手・盛岡の有限会社D'STYLE TEL 019-681-2477 9:00〜17:00/水曜定休

よくある質問

地震のとき、薪ストーブの火はどうすればよいですか?

まず身の安全を確保してください。協会の実験で分かったのは「薪ストーブは簡単には消せない」ということです。8つの消火方法を試した中で、燃焼が継続しなかったのは「給気と排気を遮断する」方法だけでした。ただし天板の温度はなかなか下がりません。揺れが激しいときは、消そうとするより避難してください。協会の報告書も「人命第一と考えれば避難という選択も大切」と書いています。

転倒した薪ストーブに、消火器や水をかければ消せますか?

消せません。協会の実験では、転倒したストーブに消火器を使うと大量の粉末が飛散して視界不良になり、息苦しくなるほどで、屋内での使用は困難でした。ガラスが割れて床面に熾火が飛散し、床の合板は炭化していました。放水した場合は、熱い鋳鉄に水がかかった途端に大量の水蒸気が発生し、視界不良や火傷の危険を伴う作業になりました。どちらも鎮火には至っていません。

砂をかければ消えますか?

消えませんでした。協会の実験では砂を12kg、22kg、37kgと投入しましたが、一時的に炎は消えたものの燃焼は継続しました。砂が炉床に流れ落ちはじめると、再び熾火が現れて再燃焼しています。しかもこの実験は、砂を入れやすいトップローディングの機種で行われたものです。一般的なストーブでは、さらに困難だと予想されています。

薪ストーブの地震対策は、何をすればよいですか?

協会が掲げているのは三原則です。①倒れない(本体)②外れない(煙突)③壊れない(炉台・炉壁)。本体は耐震マットや耐震キット、アンカー止め、口元での支持など。煙突は固定支持を多くとり、壁の下地位置で固定する。炉台は壁から固定し、床が横滑りしないようにする。実験では、耐震マットを装着した部材で本体と床を一体化させると一定の効果がありました。

耐震マットを貼れば大丈夫ですか?

機種によります。協会の耐震実験では、耐震マットを装着した耐震部材と本体を床に固定(一体化)することで一定の効果が得られました。ただし報告書は「本体剛性が弱く重心の高いストーブにおいては、この方法のみでの対策では効果は得られない事が推察される」としています。背の高い縦型のストーブは、口元での支持など別の手立てが要ります。

お客様は、実際にどれくらい被災していますか?

協会が2024年に会員へ行ったアンケートでは、お客様の3分の1が震度6強以上の被災経験があると報告されています。一方で対策の実施状況は、本体・煙突・炉台のいずれも「対策していない」が多数派で、特に炉台の施工について対策しているのは1割強でした。

地震のあと、薪ストーブは使えますか?

見てからでないと分かりません。本体がずれていないか、煙突が外れたり曲がったりしていないか、炉台や炉壁にひびが入っていないか、壁の中の貫通部がずれていないか。外から見えないところにこそ影響が出ます。揺れのあとは、火を入れる前にご連絡ください。他社で設置された機械もお受けします。

薪ストーブの地震対策に、決まった基準はありますか?

ありません。協会自身が「煙突・炉台・ストーブ本体などすべてを包括した耐震基準や対策、安全かつ速やかに消火をする方法は、確立されているとは言えません」と書いています。ただし火災予防条例には、炉について「地震その他の振動又は衝撃により容易に転倒し、亀裂し、又は破損しない構造とすること」という定めがあります。

SAFETY / 安全について、逃げずに書いたページ

見えないところの話を、
ぜんぶ表に出しています。

薪ストーブで本当に怖いのは、壁の中や囲いの中など、 できてしまえば誰にも確かめられないところです。 当社は日本暖炉ストーブ協会に加盟し、現場に関わる者は認定技術者の資格を取っています。 そこで学んだことと、国の資料や研究で裏の取れたことを、そのまま公開しています。

どのページも、出どころを全部書いています。 当社が行った実験ではないものは、そう明記しています。 数字は、一次資料まで確かめたものだけを載せました。

ここまで読んだあなたと、話したい。

ここに書いたことは、全部うちが現場でやっていることです。 煙突の高さも、給気の穴も、機種の選定も、この考え方で決めています。
盛岡のショールームには、火を入れた実機があります。数字の話の続きを、炎の前でどうぞ。

019-681-24779:00〜17:00 定休日:毎週水曜日・大型連休・年末年始