SMOKE & ODOUR / 逃げずに全部書きます

煙は見えなくても、
においは届いている。

薪ストーブでいちばん多い心配が、煙です。 何が入っているのか、なぜ出るのか、日本に決まりはあるのか。 都合の悪いことも含めて、裏の取れたことだけを並べます。

  1. 煙とにおいは、別のもの
  2. 煙は、温度で決まる
  3. 燃え方は、三つある
  4. 煙に何が入っているか
  5. においの正体
  6. 日本には、決まりがない
  7. いちばん効くのは、焚き方
  8. 当社がお伝えしていること
  9. 薪のこと
  10. ご近所の話
  11. 火事の統計
  12. よくある質問

煙とにおいは、別のもの

「うちは煙なんて出ていません」と言うお宅と、 「においがする」と言うお隣。どちらも嘘をついていないことがあります。

煙は、燃焼時の不完全燃焼で生じた煤や、低分子量の燃焼生成ガスが縮合してできた微粒子のこと。固体(炭化水素粒子)や液滴(タール粒子)、表面を液体で覆われた固体微粒子の複合体である。

大きさメートルで書くと
煙の粒子0.1〜1.0μm10⁻⁷〜10⁻⁸ m
においの分子1Å〜0.1μm10⁻¹⁰〜10⁻⁸ m
においの分子は、煙の粒子より100倍小さい
煙と一緒にニオイガスも発生するが、煙(粒子)よりニオイガス(分子)の方が軽く、小さいため、早く遠くまで拡散する。

だから、煙突から白いものが見えなくなっても、においは先へ行っています。 煙が見えるかどうかで判断すると、話が噛み合いません。

しかも煙の粒子は、大半がさらに小さい。英国政府の委託試験では、木質燃料から出る粒子の65%以上がPM1(直径1μm以下)だった。目に見える煙より、見えない粒子のほうが本体である。

出どころ:公立諏訪東京理科大学 工学部機械電気工学科 上矢恭子先生の講義(日本暖炉ストーブ協会 安全講習会)/ Ricardo(英国Defra委託・2025年)

煙は、温度で決まる

木は、火をつければ燃えるという単純なものではありません。 温度によって、順番に姿を変えていきます。環境省の資料が、その段階を表にしています。

段階温度起きていること
① 水分の蒸発100℃以上燃料中の水分が放出される熱は吸収され、放出されない
② 可燃性ガスの放出260℃付近熱分解が起きる。化合物が生成・放出される熱はあまり放出されない
③ ガスの発火と燃焼280〜660℃290℃以上でタール分が生成。350〜400℃でガス放出が最大。400℃で煙の放出が終了。450℃でタール生成終了燃焼過程を維持できる熱を放出
④ 木炭の燃焼480℃以上残存固形物がほとんど炎を上げずに燃える残存する熱を放出
煙が出るのは 260〜450℃
煙とタールが出るのは260℃から450℃という中途半端な温度帯で、400℃を超えると煙の放出は終わる。つまり煙が見えているということは、炉の中がまだその温度帯にいるということ。

焚きはじめに白い煙が出るのは、この段階を必ず通るからです。 異常ではありません。 問題になるのは、そこから温度が上がらないまま、長く留まってしまうことです。

これら組成のうち有害物質は、一酸化炭素、炭化水素とタール化合物、未燃の微粒子等である。これらの物質は、良好な燃焼により完全燃焼に近づければ、大幅に減らすことができる。── 環境省『木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン』(平成24年3月)

もう少し細かく見ると

木材の温度起きていること
100℃乾燥による自由水の放出
150℃結合水の放出
225℃木材表面での炭化開始
270℃ヘミセルロースが分解を開始
290℃炭化が緩慢に進行し、少量の気体が放出
350℃急激な発熱反応が始まる。ガス放出増大、煙の発生開始。表面着火
400℃熱分解ガスの発生終了。煙の発生終了。木炭のグラファイト化
450℃ガスの放出およびタールの生成終了
500℃赤熱燃焼による炭の燃焼
出どころ:環境省『木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン』(平成24年3月)表2-3/公立諏訪東京理科大学 工学部機械電気工学科 上矢恭子先生の講義

燃え方は、三つある

有炎燃焼

木材の分解生成物と空気(酸素)によってできた可燃性混合気が引火あるいは発火して、光と炎を発して燃焼する。木材の発熱量の3分の2以上がここで出る。

燻焼燃焼

発光はあるが炎のない燃焼で、一般的には大量の煙の発生を伴う。酸素不足の状態、あるいは可燃性混合気が燃焼限界に達していない状態の燃焼。酸素不足の状態では、空気の供給によって爆発的に燃焼が拡大する危険性がある。

赤熱燃焼

有炎燃焼が終わり、タール類の生成や可燃性ガスの放出が終わったあと、熱分解炭素残渣物の酸化によって起こる燃焼。発光はあるが、一般的な炎の形成と煙の発生はない。

煙がいちばん出るのは、この燻焼のとき。空気を絞りすぎた状態、薪を入れすぎた状態、湿った薪を入れた状態が、これにあたる。そしてこの状態で急に扉を開けて空気を入れると、爆発的に燃え広がる危険がある。扉はゆっくり開ける。

煙に何が入っているか

ここは書かない会社が多いところです。けれど、 知らずに使うより知って使うほうがいい。分かっているものを並べます。

粒子状物質(PM)

PM2.5・PM10・PM1
極小の煤やタール粒子。肺の奥まで入り、呼吸器疾患・循環器疾患・肺がんのリスク
黒色炭素(ブラックカーボン)
地球温暖化にも寄与する。肺への沈着性が高い

多環芳香族炭化水素(PAH)

ベンゾ[a]ピレンなど
発がん性・変異原性・催奇形性。タールの中に多量に含まれる

ガス状物質

一酸化炭素(CO)
血液の酸素運搬能力を下げる。不完全燃焼の代表指標
窒素酸化物(NOx)・硫黄酸化物(SOx)・塩化水素(HCl)
呼吸器への刺激。機器の腐食

揮発性有機化合物(VOC)

アルデヒド類・ベンゼンなど
発がん性・刺激性

塗装材・処理材を燃やしたとき

ダイオキシン類
塩素を含む物質の不完全燃焼で発生。重金属が触媒となって生成量が増える
重金属
塗料の鉛、防腐剤のヒ素、塗料のクロムなど

完全に燃やしきれば、出るのは二酸化炭素と水になる。上の物質は、燃やしきれなかったときに出る。そして塗装した木・防腐処理した木・合板・ごみを燃やすと、燃やし方に関係なくダイオキシン類や重金属が出る。

これは気持ちの問題ではない。建設解体材・塗装材・処理材・家庭ごみを薪ストーブで燃やす行為は、廃棄物処理法第16条の2が禁じる「廃棄物の焼却」にあたる。同法第25条の罰則は、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(またはその併科)。薪を燃料として燃やすことは焼却にあたらないが、ごみを入れた瞬間に別の話になる。

出どころ:環境省『木質バイオマスストーブ 環境ガイドブック』(平成24年8月)/廃棄物処理法(e-Gov)

においの正体

においについては、査読を通った日本語の論文があります。 公立諏訪東京理科大学の上矢恭子先生たちが、日本火災学会論文集に出したものです。

においは、燃えきっていない時間の産物
つまりにおいの主役は、炎が立つ前の低い温度で出るアルデヒドである。煙が出る温度帯(260〜450℃)と、においが立つ温度帯(240〜350℃)は重なっている。どちらも「燃えきっていない時間」の産物ということになる。

名前の付いているにおい

悪臭防止法が定める特定悪臭物質22種のうち、アルデヒド類を抜き出したもの。どれも「甘酸っぱい、焦げたにおい」と表現されている。

物質どんなにおいか
プロピオンアルデヒド刺激的な甘酸っぱい焦げたにおい
ノルマルブチルアルデヒド刺激的な甘酸っぱい焦げたにおい
イソブチルアルデヒド刺激的な甘酸っぱい焦げたにおい
ノルマルバレルアルデヒドむせるような甘酸っぱい焦げたにおい
イソバレルアルデヒドむせるような甘酸っぱい焦げたにおい
出どころ:上矢恭子・須川修身・今村友彦・岡泰資「木材の酸化熱分解時に発生するにおいに関する研究」日本火災学会論文集 63巻2号 25-35頁(2013年)/悪臭防止法(e-Gov)

日本には、決まりがない

意外に思われるかもしれません。 日本には、家庭の薪ストーブの煙を規制する法律がありません。 根拠を条文で示します。

大気汚染防止法

第2条第2項が「ばい煙発生施設」を「工場又は事業場に設置される施設」と定義している。住宅は工場でも事業場でもないので、そもそも定義に入らない。

悪臭防止法

第1条が「工場その他の事業場における事業活動に伴つて発生する悪臭」を対象と明記している。臭気指数という測り方はあるが、一般家庭には適用されない。

消防法・建築基準法

離隔距離など、火災を防ぐための決まりはある。ただしこれは排出を規制するものではない。

環境省自身が、こう書いています。

大気汚染防止法は工場・事業場に設置される一定規模以上のばい煙発生施設からのばい煙の排出を規制しており、家庭等で使用されるもの、又は小規模な木質バイオマスを燃料とするストーブは同法の規制の対象外となっています。── 環境省『木質バイオマスストーブ 環境ガイドブック』(平成24年8月)
現在、日本では団体規格による一部の認証品を除いて、木質バイオマスストーブについて規制や基準が整備されておらず、メーカーの判断にゆだねられています。── 環境省『木質バイオマスストーブ 環境ガイドブック』(平成24年8月)
決まりが無いから、自分で決める
守るべき数字が無いということは、守らなくてよいということではない。決まりが無いからこそ、どこまでやるかは会社ごとの判断になる。当社は、決まりが求めないところまでを自分たちの基準にする。

いちばん効くのは、焚き方

良い機械を入れれば済む、という話ではありません。 オーストリアで、実際に人が住んでいる家4軒を測った研究があります。 焚き方の講習を受ける前と後で、排出がどう変わるか。

オーストリアの実際の住宅4軒で、焚き方の講習を受ける前と後で排出を実測した。教えたのは、着火方法、燃料の性状と炉内での置き方、空気の送り方。

−42%
一酸化炭素(CO)
−57%
有機ガス(OGC)
−45%
粒子(TSP)
−76%
ベンゾ[a]ピレン

いずれも中央値。ベンゾ[a]ピレンは最大で−97%だった。

使用者への訓練による排出削減の効果は、電気集じん機や触媒といった最新の技術的対策に匹敵する。しかしそれらは高価で高度な技術を要する。訓練は安価で、実行しやすく、すべての使用者に適する。── Sturmlechner R. ほか, Atmospheric Environment: X(2024年)

正直に、同じ論文の但し書きも書いておきます。

同じ論文は「訓練を受けた人が元の癖に戻る可能性があり、定期的な訓練が必要かもしれない。この点は検証していない」とも書いている。

絞って長く燃やすことの代償

同じ現行機(Ecodesign適合)で、よく乾いた薪(含水率11〜20%・湿量基準)を使い、定格出力で焚いた場合と、空気を絞って低出力で焚いた場合を比べた。

測ったもの定格で焚く絞って低出力で焚く倍率
PM2.5541252.3倍
総粒子(TPM)731411.9倍
凝縮性の粒子43962.2倍
有機炭素(TOC)1682881.7倍
ブラックカーボン221326.0倍
一酸化炭素1,6882,0311.2倍

単位は g/GJ

粒子 2.3倍 / ブラックカーボン 6.0倍
よく乾いた薪を使っていても、空気を絞って低出力で焚くだけで、粒子は2.3倍、すすの核になるブラックカーボンは6倍になる。湿った薪を絞って焚く最悪の組み合わせは、乾いた薪を定格で焚く場合の約11.5倍だった。

そしてもう一つ。バッチ式(手で薪をくべる)の機器では、揮発性有機化合物の60〜90%が、着火の直後に出る。一日の排出の大半が、最初の20〜30分で決まるということ。(Bhattu ほか, Environmental Science & Technology, 2019年)

では、どう焚くか

煙突からの煙が陽炎または水蒸気が出てすぐに消滅し、煙臭もほとんどない状態が正常な燃焼── 環境省『木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン』(平成24年3月)
正しく設置され、正しく使われた薪燃焼機器は、ごく少量の煙しか出さないはずです。日常的に煙が見えたり臭ったりするなら、どこかに問題があります。── 米国環境保護庁 Burn Wise
出どころ:Sturmlechner R. ほか, Atmospheric Environment: X(2024年)/Ricardo『Emission Factors for Domestic Solid Fuels』WP3(英国Defra委託・2025年)/環境省『木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン』(平成24年3月)

当社がお伝えしていること

ここまでは、国の資料と研究の話でした。 ここからは、当社が岩手の現場でお客様にお伝えしていることを書きます。 社長の言葉のまま載せます。

薪棚に入れて、2年。

乾燥が甘い薪を使うと、どうしても煙やにおいが出てしまいます。そうならないように、薪棚に入れて2年間乾燥させるのが望ましい。

雨には当てず、風には当てる
雨には当てず、風には当てる。これが良質な薪を作るためのポイントです。

この一行は、調べてみると海外の資料と同じことを言っていました。

米国EPA

上だけ覆い、横は開ける。横を覆うと湿気がこもる。

ニュージーランドの研究

覆いは濡れた薪を乾かさない。乾いた薪が再び湿るのを防ぐのが役目。

英国(法令)

2m³以上で売る薪には、最低2年の乾燥手順を書いた告知を添える義務がある。

現場で積み上げてきたやり方が、海外の研究や法令と同じところに来ています。「雨に当てない・風に当てる」は、覆い方の話としてそのまま裏が取れます。

ボールペンの太さから、炎を育てる。

割り箸とまでは言わなくても、ボールペンくらいの太さの薪を用意します。そこから、小さな炎をゆっくりと大きな炎に育てていくイメージで焚いていく。

小さな炎を、育てる
市街地になればなるほど、近隣からの煙のトラブルは避けたいものです。小さな炎を徐々に育てていくことで、煙が出ない形で、においも出ない形で燃やすことができます。

この焚き方が効く理由は、測定でも説明がつきます。手で薪をくべる機器では、揮発性有機化合物の60〜90%が着火の直後に出ます。つまり最初の20〜30分が、その日の煙のほとんどを決めている。細い薪から炎を育てるのは、その山をなだらかにする焚き方です。

そういう焚き方を意識して薪ストーブを使うことが、トラブルの回避になります。そして結果として、長く、気持ちよく薪ストーブのある暮らしを楽しむことにつながります。

2年に1度は、見せてください。

2年に1度はメンテナンスをしないと、お互い不安です。煙突の中も、炉内の消耗品も、使っている人からは見えないところにあります。ご連絡いただければうかがいます。

煙とにおいの多くは、薪と焚き方で決まります。ただし煤やタールが溜まってくれば、同じ焚き方をしていても煙は増えます。溜まっているかどうかは、開けてみないと分かりません。

据える側の備え

当社では、現場に関わる者はJFSA認定技術者の資格を取っています。建築基準法・消防法・労働安全衛生法と海外のガイドラインを学び、試験を受けた者だけが認定されます。3年ごとの更新があるので、取ったら終わりにはなりません。

当社は独自の保険に加入しており、10年間で最大3億円の保証がかかっています。資格を取り、基準どおりに据えて、それでも残る「万が一」のための備えです。使わずに済むのがいちばんですが、お客様の家に火を入れさせていただく仕事なので、持っています。

弊社のお客様でなくても構いません。煙のことやにおいのことが気になっている方がおられましたら、しっかりとサポートします。ぜひ聞きに来てください。
岩手・盛岡の有限会社D'STYLE TEL 019-681-2477 9:00〜17:00/水曜定休

薪のこと

薪の含水率には湿量基準乾量基準の2つがあり、同じ木でも数字が変わる。20%(湿量基準)=25%(乾量基準)。燃料の話で使うのは湿量基準で、このページの数字もすべて湿量基準。製材のJAS規格は乾量基準なので、木材屋さんの数字とは基準が違うことがある。

測ったもの湿った薪
21〜30%
よく乾いた薪
11〜20%
乾かしすぎ
0〜10%
PM2.535948131
一酸化炭素3,3151,5032,386
揮発性有機化合物75396373
ブラックカーボン1611647
ベンゾ[a]ピレン(mg/GJ)5923140

単位は g/GJ(ベンゾ[a]ピレンのみ mg/GJ)

乾かしすぎも、悪い
表をよく見てほしい。乾かしすぎ(0〜10%)は、よく乾いた薪(11〜20%)より粒子が2.7倍、発がん性のベンゾ[a]ピレンが6.1倍になっている。ベンゾ[a]ピレンにいたっては、湿った薪より悪い。

英国Defraの委託試験

乾きすぎた燃料は燃焼速度が速くなり、空気の供給が追いつかない。現代の機械は、適正に乾いた薪に最適化されている。

IEA Bioenergy Task 32

薪は乾いていること(12〜20%・湿量基準)。自然通気の薪ストーブでは、含水率10%未満は、局所的な酸素不足により粒子と一酸化炭素の排出を著しく増やしうる。

Price-Allison ほか(2019)

25%を超えると煙は著しく増える。一方、8〜20%の範囲では含水率の影響は有意でない。

「20%」は魔法の境目ではないし、「乾かせば乾かすほど良い」でもない。8〜20%に収まっていれば、その中の差は小さい。

水分計は、当てになりません

実測(乾燥炉)水分計の表示
トウヒ 伐採直後42.9%22%
トウヒ 乾燥材39.8%22%
ブナ 伐採直後36.4%29%
ブナ 人工乾燥3.6%4%
両手法の差は最大100%に達した。人工乾燥材だけが一致した。── Price-Allison ほか, Fuel 239: 1038-1045(2019年)

実際には40%以上ある薪が、水分計では22%と表示されうる。繊維飽和点(乾量基準で約30%)を超えると、ピン式の水分計は原理的に当てにならない。「水分計で20%台だから大丈夫」は、濡れた薪では成立しない。

必ず割りたての中央の面で測る。木口は低く出る。

どれくらい乾かせばよいか

岐阜県森林研究所(日本で見つかった唯一の公的試験)

スギ間伐材35cm前後、四割または半割、枕木の上に高さ1m、10月開始。約2か月で7割以上が20%以下に。軒下は5か月で全数10%前後。露天では30%近いままの薪も残った。結論は「スギで3か月以上、ヒノキで4か月以上」。

米国EPA

針葉樹は最低6か月、広葉樹は12か月。積む前に割る。地面から離す。上だけ覆い、横は開ける(横を覆うと湿気がこもる)。

英国(法令)

2m³以上で販売する薪には、最低2年の乾燥手順を書いた告知を添える義務がある。

ニュージーランドの研究

夏24週で53%→21〜33%。冬17週では58%→49〜51%で、ほとんど乾かなかった。覆いは濡れた薪を乾かさない。乾いた薪が再び湿るのを防ぐのが役目。

広葉樹(ナラなど)について、日本の公的な乾燥曲線は見つからなかった。「ナラは2年」といった言い方は当社の経験によるもので、公的な試験の裏づけがあるものではない。

薪には、国際規格があります

薪には国際規格がある。分類は木材の出所による。品質基準は含水率(M)・寸法(L/D)・樹種・灰分の4つで決まる。日本ではまだあまり知られていません。

項目A1クラス(最高級)A2クラスBクラス
主な原料幹、枝(樹皮を含む)幹、枝、伐採残渣幹、枝、化学未処理の廃材
含水率(M)M15(15%以下)または M20(20%以下)M25(25%以下)M25(25%以下)
灰分(A)1.0% 以下1.5% 以下3.0% 以下
推奨用途高性能薪ストーブ、暖炉一般的なストーブ、ボイラー産業用大型ボイラー等

欧州エコデザインや米EPA基準をクリアした薪ストーブの薪として推奨されるのは A1クラス。

水を燃やしても、暖かくなりません

含水率発熱量
含水率 0%19.5 MJ/kg約4,660 kcal/kg
含水率 20%14.8 MJ/kg約3,540 kcal/kg
含水率 50%(生木)7.9 MJ/kg約1,890 kcal/kg

スギ材を想定した値(湿量基準)。ただし「50%の薪は熱が44%減る」と読むのは正しくない。50%の薪は半分が水なので、木の実質1kgで比べれば、水を蒸発させる分の損は約1割。残りは、水を買って、運んで、積んでいる分にあたる。実際の損はこれより大きく、炉の温度が上がらないことによる不完全燃焼が上乗せされる。

ご近所の話

環境省が、北海道から九州まで72の市町村に電話で聞き取りをしています。 薪ストーブのクレームを受けたことがあるか。

地域クレームありなし
北海道50
東北71
信越64
関東410
東京22
その他725
東北は、あり7・なし1
寒い地方ほど苦情がある。東北は「あり7・なし1」。岩手で薪ストーブを扱う以上、この数字から目をそらすわけにいかない。

何が原因だったか

直接の原因件数
薪の含水率が高い13件
煙突の高さ不足7件
隣家との離隔距離不足5件
煙突の設置方法がまずい3件
隣家とのコミュニケーション不足3件
煙突の不具合2件

そして、その奥にある原因。

根本の原因件数
適切な利用方法の不理解18件
適正燃料に対する不理解17件
適切な清掃方法の不理解9件
技術面、品質面、基準面に関わる要因は少なく、利用方法、清掃方法、燃料に対する適切な理解と実践できるようにすることがきわめて重要である。── 環境省『木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン』(平成24年3月)(薪ストーブ事業者22社へのアンケート)

機械の問題ではなく、使い方の問題だと、国の報告書が言っています。 だから当社は、売って終わりにしません。

うまくいかなかった話も、書きます

同じ報告書には、こういう記録も残っています。 都合が悪いので普通は載せませんが、隠すほうが不誠実だと思います。

煙突の高さも十分にあり、乾燥した薪も使用していたが、隣家から「室内で臭いがして息苦しい」というクレームがあった。とりあえず煙突をさらに1m高くしたが、結果的には解決に至っていない。
比較的敷地の広い住宅地で、傾斜地の山側の住民が、下で薪ストーブを使っている住宅から出る煙の被害を訴えた。訴訟に至り、使用禁止の判決が出た。
クレームをつけられ、メーカーに現地をチェックしてもらったが、使用方法に問題はなかった。市役所の環境課に相談したが、違法な行為ではないので住民で話し合って解決するように言われた。使用者の楽しみのために近所の人に嫌な思いをさせるのは不本意なので、薪ストーブの利用をやめている。

どれも環境省『木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン』(平成24年3月)に記録されているもの。判決については、裁判所・年月日・事件番号までは公表されていない。

正しく焚いていても、解決しないことがあります。 だからこそ、建てる前の計画と、ご近所への挨拶が効きます。 煙突の位置は、あとから変えるのが難しいところです。

気をつける6つの場面

隣家のひさしが重なりそうな距離ひさしより低い位置に煙突を設けると、ひさしの下に煙がこもる
隣家の洗濯干し場が近い洗濯物に煙の臭いが付く
隣家の窓が近い煙が窓から室内へ入る
隣家の給気口が近い煙が給気口から室内へ引き込まれる
隣が高層の建物自宅の屋根より高く煙突を立てていても、煙が流れていく
集合住宅で自分の部屋より上に部屋がある煙がのぼって窓から入る
出どころ:環境省『木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン』(平成24年3月)(北海道から九州まで72市町村への電話ヒアリング)/環境省『木質バイオマスストーブ 環境ガイドブック』(平成24年8月)

火事の統計

発火源令和6年・全国
総出火件数37,141件
ストーブ1,016件
取灰(灰の始末)227件
煙突・煙道149件

煙突・煙道を発火源とする火災は、令和6年に岩手県で6件(令和5年は9件)。

「煙突・煙道」は薪ストーブ専用の区分ではない。風呂かまど・ボイラー・焼却炉を含む。確定値の資料に「薪」という語は一度も出てこない。「岩手の薪ストーブの煙突火災が年6件」とは言えない。

灰の始末のほうが、多い
日本では取灰(227件)のほうが煙突・煙道(149件)より多い。灰の始末のほうが、件数としては上ということになる。
灰は消火後2日ほど火の気が残ります。蓋つきの金属容器へ。掃除機では絶対に吸わないでください。
出どころ:消防庁「令和6年(1〜12月)における火災の状況(確定値)」

この数字は、どこから来たか

このページの数字は、すべて原典を確かめたものだけを載せています。 環境省の資料、消防庁の統計、法令の条文、査読を通った論文、 英国政府が委託した試験報告。当社が行った実験ではありません。

当社は平成29年9月1日に 日本暖炉ストーブ協会 へ入会しました(岩手県内の施工販売会社としては初の加盟です)。 協会でも煙とにおいの測定が続いていますが、 まだ公表されていないものは、このページには載せていません。 確かめられないことを根拠にすると、読んだ方が確かめようがなくなるからです。

環境省『木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン』(平成24年3月)/ 同『木質バイオマスストーブ 環境ガイドブック』(平成24年8月)/ 消防庁「令和6年における火災の状況(確定値)」/ 環境省「令和6年度悪臭防止法等施行状況調査」(令和8年2月)/ 上矢恭子・須川修身・今村友彦・岡泰資「木材の酸化熱分解時に発生するにおいに関する研究」日本火災学会論文集 63巻2号 25-35頁(2013年)/ Sturmlechner R. ほか, Atmospheric Environment: X(2024)/ Ricardo『Emission Factors for Domestic Solid Fuels』WP3(英国Defra委託・2025)/ Price-Allison A. ほか, Fuel 239(2019)/ IEA Bioenergy Task 32/ISO 17225-5/ 大気汚染防止法・悪臭防止法・廃棄物処理法(e-Gov 法令検索)

よくある質問

煙は出ていないのに、においがすると言われました。なぜですか?

煙の粒子とにおいの分子では、大きさが100倍以上違うからです。煙の粒子は0.1〜1.0マイクロメートル、においの分子は1オングストロームから0.1マイクロメートル。においの分子のほうが軽くて小さいので、早く、遠くまで拡散します。煙が見えなくなっても、においだけが届くのはこのためです。

薪ストーブの煙には、何が入っているのですか?

完全に燃やしきれば、出るのは二酸化炭素と水です。燃やしきれないと、PM2.5などの粒子、多環芳香族炭化水素(PAH)、一酸化炭素、窒素酸化物、アルデヒド類やベンゼンなどの揮発性有機化合物が出ます。環境省の資料は「これらの物質は、良好な燃焼により完全燃焼に近づければ、大幅に減らすことができる」としています。塗装材・防腐処理材・合板・ごみを燃やすと、燃やし方に関係なくダイオキシン類や重金属が出ます。

日本には、薪ストーブの煙を規制する法律はありますか?

ありません。大気汚染防止法の「ばい煙発生施設」は工場または事業場に設置される施設と定義されているため、住宅は対象外です。悪臭防止法も事業場が対象です。環境省自身が「家庭等で使用されるもの…は同法の規制の対象外」「規制や基準が整備されておらず、メーカーの判断にゆだねられています」と書いています。守るべき数字が無いということは、守らなくてよいということではありません。

煙を減らすのに、いちばん効くことは何ですか?

焚き方です。オーストリアで実際の住宅4軒を測った研究では、焚き方の講習を受けただけで一酸化炭素が42%、粒子が45%、発がん性のベンゾ[a]ピレンが76%減りました。論文は「使用者への訓練の効果は、電気集じん機や触媒といった最新の技術的対策に匹敵する」と結論しています。当社が焚き方をお伝えしているのは、これが理由です。

夜、空気を絞って長く燃やすのは良くないのですか?

煙の面では、代償が大きいことが実測されています。英国政府が委託した試験では、よく乾いた薪を使っていても、空気を絞って低出力で焚くとPM2.5が2.3倍、ブラックカーボンが6.0倍になりました。湿った薪を絞って焚く組み合わせは、乾いた薪を定格で焚く場合の約11.5倍です。

薪は、乾かせば乾かすほど良いのですか?

違います。英国政府の委託試験では、含水率0〜10%まで乾かした薪は、11〜20%の薪と比べてPM2.5が2.7倍、ベンゾ[a]ピレンが6.1倍でした。ベンゾ[a]ピレンにいたっては湿った薪より悪い数字です。乾きすぎた薪は燃焼が速くなり、空気の供給が追いつかないためと説明されています。8〜20%(湿量基準)に収まっていれば、その中の差は小さいという研究もあります。

水分計で20%台なら、大丈夫ですか?

濡れた薪では当てになりません。ある研究では、乾燥炉で測った実測値が42.9%の薪を、ピン式の水分計は22%と表示しました。両手法の差は最大100%に達したと報告されています。繊維飽和点を超えると、原理的に測れなくなるためです。測るときは必ず割りたての中央の面で。木口は低く出ます。

正しく焚いているか、どう見分ければよいですか?

環境省の資料に、そのまま使える一文があります。「煙突からの煙が陽炎または水蒸気が出てすぐに消滅し、煙臭もほとんどない状態が正常な燃焼」。米国EPAも「正しく設置され、正しく使われた薪燃焼機器は、ごく少量の煙しか出さないはずです。日常的に煙が見えたり臭ったりするなら、どこかに問題があります」としています。

薪は、どうやって乾かせばよいですか?

当社は薪棚に入れて2年間乾燥させることをおすすめしています。大切なのは、雨には当てず、風には当てることです。屋根はかけても、横は開けておく。横まで覆うと、湿気がこもって乾きません。米国EPAも「上だけ覆い、横は開ける」としていますし、ニュージーランドの研究では、覆いは濡れた薪を乾かす役には立たず、乾いた薪が再び湿るのを防ぐのが役目だと報告されています。

煙を出さない焚き方を、具体的に教えてください。

割り箸とまでは言わなくても、ボールペンくらいの太さの薪を用意してください。そこから、小さな炎をゆっくりと大きな炎に育てていくイメージで焚きます。いきなり太い薪に火をつけようとすると、燃えきらないまま煙だけが出る時間が長くなります。手で薪をくべる機器では、揮発性有機化合物の60〜90%が着火の直後に出るという測定があります。最初の20〜30分が、その日の煙のほとんどを決めています。

市街地でも薪ストーブは使えますか?

使えます。ただし市街地になるほど、近隣への煙とにおいの配慮が要ります。細い薪から小さな炎を育てる焚き方をすれば、煙もにおいも出さずに燃やすことができます。建てる前なら、煙突の位置と高さを隣家との関係で決められるので、計画の段階からご相談いただくのがいちばん確実です。

ご近所から苦情が来たら、どうすればよいですか?

まずご連絡ください。環境省の調査では、クレームの直接原因の最多は「薪の含水率が高い」で、次が煙突の高さ不足でした。根本原因の9割は「利用方法・燃料・清掃への理解不足」とされています。多くは直せるものです。ただし正直に申し上げると、煙突を高くしても解決しなかった例、訴訟になって使用禁止の判決が出た例も、同じ報告書に記録されています。早いうちにご相談いただくほど、打てる手は多くなります。

SAFETY / 安全について、逃げずに書いたページ

見えないところの話を、
ぜんぶ表に出しています。

薪ストーブで本当に怖いのは、壁の中や囲いの中など、 できてしまえば誰にも確かめられないところです。 当社は日本暖炉ストーブ協会に加盟し、現場に関わる者は認定技術者の資格を取っています。 そこで学んだことと、国の資料や研究で裏の取れたことを、そのまま公開しています。

どのページも、出どころを全部書いています。 当社が行った実験ではないものは、そう明記しています。 数字は、一次資料まで確かめたものだけを載せました。

ここまで読んだあなたと、話したい。

ここに書いたことは、全部うちが現場でやっていることです。 煙突の高さも、給気の穴も、機種の選定も、この考え方で決めています。
盛岡のショールームには、火を入れた実機があります。数字の話の続きを、炎の前でどうぞ。

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