薪ストーブは壁から離さなければなりません。 上方150cm、側方100cm。数字は決まっています。 では、その数字はどこから来たのか。縮めることはできるのか。法令の条文から書きます。
薪ストーブを置くときの、建築物や可燃物からの距離です。
これが法令の基本です。他の機器と並べると、位置づけが見えます。
| 種別 | 上方 | 側方 | 前方 | 後方 |
|---|---|---|---|---|
| ストーブ(気体燃料・液体燃料以外のもの) | 150 | 100 | 150 | 100 |
| 炉・開放炉 使用温度800℃以上 | 250 | 200 | 300 | 200 |
| 炉・開放炉 使用温度300℃以上800℃未満 | 150 | 150 | 200 | 150 |
| 炉・開放炉 使用温度300℃未満 | 100 | 100 | 100 | 100 |
| 厨房設備(気体燃料以外)使用温度800℃以上 | 250 | 200 | 300 | 200 |
| 厨房設備(気体燃料以外)使用温度300℃以上800℃未満 | 150 | 100 | 200 | 100 |
| 厨房設備(気体燃料以外)使用温度300℃未満 | 100 | 50 | 100 | 50 |
単位はcm。薪ストーブは「ストーブ(気体燃料・液体燃料以外のもの)」にあたる。上方150cm・側方100cm・前方150cm・後方100cm。この数字は平成14年消防庁告示第1号の別表第1による。
離隔距離を定めているのは火災予防条例で、これは市町村ごとに定められている。数字の根拠は全国共通の告示だが、お住まいの市町村の条例を確かめること。
数字の根拠は、告示にはっきり書かれています。
言葉の定義も、すべて決められています。
| 言葉 | 告示の定義 |
|---|---|
| 通常燃焼 | 通常想定される使用における「最大の燃焼となる状態」 |
| 定常状態 | 測定する位置における温度上昇が、30分間につき0.5℃以下になった状態 |
| 許容最高温度 | 通常燃焼の場合、または異常燃焼で安全装置を有しない場合は100℃ |
| 基準周囲温度 | 35℃ |
「うちは部屋が狭いから無理」と諦める方がいます。 その前に、道が三つあることを知っておいてください。
木材が現しの壁に対して、別表第1の距離をそのまま取る。上方150cm・側方100cm・前方150cm・後方100cm。
壁を耐火構造にして仕上げを不燃材料・間柱や下地等を準不燃材料にする、または耐火構造以外でも間柱や下地等を不燃材料で造る。この「離隔距離を要しない構造」にすれば、距離は要らない。
試験によって、火災予防上安全な離隔距離を実際に測る。測った結果が別表第1より短ければ、その距離でよい。
距離が取れないから諦める、ではない。壁の作りを変える(B)か、機種の試験成績を使う(C)かで、納まる場合がある。どれを選ぶかは、間取りと機種と予算で決まる。
薪ストーブを置く部屋は、内装制限の対象になる。壁と天井の室内に面する部分を、原則として準不燃材料で仕上げることが求められる。ただし国土交通省告示第225号が、これを緩める道を用意している。
「ストーブ等可燃物燃焼部分」とは、火源から熱の影響を受け、可燃物が燃焼するおそれのある範囲のこと。この範囲の中を特定不燃材料で仕上げれば、範囲の外は難燃材料や木材等でよい。床は内装制限から外れているが、回り縁や窓台は壁(天井)の一部なので、範囲の中なら特定不燃材料にするか、遮熱板で熱を有効に遮る必要がある。
その範囲と壁・天井の関係は、三通りの考え方に分けられます。
ストーブと壁を離して、可燃物燃焼部分の範囲の外にする
範囲にかかる部分を特定不燃材料で仕上げる
不燃材料の遮熱板を入れて、熱を有効に遮る
| どこ | 必要な距離 |
|---|---|
| 壁との間 | ストーブ等との距離 27.5cm以上/可燃物燃焼部分の壁との距離 2.5cm以上 |
| 天井との間 | ストーブ等との距離 42.5cm以上/可燃物燃焼部分の天井との距離 2.5cm以上 |
| 何と何の距離か | 告示が定めていること |
|---|---|
| ストーブと壁の室内に面する部分 | 可燃物燃焼水平距離の1/3以上。ただし1/3が30cm未満なら30cm以上 |
| ストーブと天井の室内に面する部分 | 可燃物燃焼垂直距離の1/2以上。ただし1/2が45cm未満なら45cm以上 |
遮熱板を入れると温度が下がる、とは言われます。 どれだけ下がるのか。消防庁の検討部会が実際に測っています。
木壁に厚さ15mmの石こうボードを貼り付けて、不燃材料で有効に仕上げをした部分を想定した。試験周囲温度20℃で実施したため、基準周囲温度35℃との差(15℃)を加えた温度で示している。
| 木壁までの距離 | 石こうボードなし | 石こうボード15mmあり |
|---|---|---|
| 前方・後方 15cm | 135.4℃ | 108.2℃ |
| 前方・後方 20cm | — | 101.1℃ |
| 前方・後方 25cm | 126.8℃ | — |
| 前方・後方 30cm | — | 76.7℃ |
| 前方・後方 50cm | 74.0℃ | — |
| 上方 50cm | 177.2℃ | — |
| 上方 80cm | — | 78.8℃ |
| 上方 100cm | 69.6℃ | — |
これは炭火焼き器の試験であって、薪ストーブの数値ではない。薪ストーブにそのまま当てはめてはいけない。ここから読み取れるのは「遮熱を入れると、温度は実際に下がる」という事実と、「距離が倍になると温度は大きく落ちる」という傾向である。
木造建築物などに薪ストーブや炭火焼き器を設置する場合、仕様規定では壁面から1m以上の離隔距離が求められ、設置が困難な場合がある。そこで消防庁は、固体燃料の機器にも性能規定を適用できるよう、試験方法の確立を検討した。
ただし、固体燃料には難しさがあります。
気体燃料・液体燃料と違い、燃料の種別(樹種・炭の種類)、発熱量、寸法などが一定でない
機器の最大温度が一定にならず、燃料の減少や追加で温度が下がるため、「通常燃焼」の定義が不明確になる
機器に自動温度調節機能がなく温度の変動が大きいため、「定常状態」を維持することが現実的でない
国内で一般的に用いられる薪のうち、広葉樹(ナラ)と針葉樹(カラマツ)を選定。含水率は欧州の標準規格(EN 16510-1:2018)を参考に、機械乾燥(含水率15±3%)したものを使用。大きさは一般に流通している長さ30〜40cmに統一。
当社が加盟する 日本暖炉ストーブ協会 は、独自の安全ガイドラインを持っています。 法令より厳しい数字が並びます。
| 何と何の距離か | 協会の推奨 |
|---|---|
| 非認定の薪燃焼機器と可燃壁との離隔距離 | 1,000mm以上 |
| 家具等の可燃物からの距離 | 1,500mm以上 |
| 設置床の保護(不燃仕上げ) | 周囲460mm以上 |
| 断熱二重煙突とシングル煙突を併用する場合の壁貫通 | 325mm以上、またはメーカーの指示に従う |
試験認定を受けていない機種の場合の数値。試験認定品は、その機種の試験成績による距離が使える。
ガイドラインとは
取り組むことが望ましいとされる指針や基準などを記したものであり、法的な拘束はない。
協会自身がそう書いています。 法律が求めていないのに、わざわざ厳しい数字を置いているということです。
建築基準法は、煙突についてこう定めています。
メガネ石が分厚いのは、ここに理由がある。10cm以上の不燃材料で覆えば、15cmの離隔を取らなくてよい、と法令が言っている。 詳しくは煙突の囲いと壁貫通部のページに書きました。
煙突は断熱二重煙突仕様が原則である。シングル煙突を使用する場合は、以下の条件を満たすこととする。
以上の原則を守り、可燃材料からの離隔距離を守る。低温炭化のほか、煙突火災から可燃材料を守るためには断熱二重煙突仕様は不可欠である。
協会のガイドラインの前置きに、このページでいちばん大事な一文があります。
煙突については、さらにこう書かれています。
普段でも260℃を超えることがあり、煙道火災なら1000℃を超える。 離隔距離は、その両方を見込んだ数字だということです。
当社では、現場に関わる者はJFSA認定技術者の資格を取っています。 ここに書いた法令とガイドラインは、その講習で学ぶものです。 3年ごとの更新があるので、取ったら終わりにはなりません。
距離が取れないときに、黙って縮めることはしません。 壁の作りを変えるか、機種を変えるか、間取りから考え直すか。 納まらないものは納まらないと申し上げます。 そのうえで、納める道を一緒に探します。
2年に1度はメンテナンスをしないと、お互い不安です。 壁の中も囲いの中も、住んでいる方からは見えません。 他社で設置された機械もお引き受けしています。
当社は独自の保険に加入しており、10年間で最大3億円の保証がかかっています。 使わずに済むのがいちばんですが、 お客様の家に火を入れさせていただく仕事なので、持っています。
離隔距離は、図面ができてからでは動かせないことが多いところです。
間取りを考えている段階でお声がけいただくのが、いちばん確実です。
岩手・盛岡の有限会社D'STYLE TEL 019-681-2477 9:00〜17:00/水曜定休
法令の基本は、上方150cm・側方100cm・前方150cm・後方100cmです。平成14年消防庁告示第1号の別表第1で、薪ストーブは「ストーブ(気体燃料・液体燃料以外のもの)」にあたります。ただしこれは木材が現しの壁に対しての数字で、壁を不燃材料にしたり、遮熱板を入れたり、機種の試験成績を使ったりすることで、縮められる場合があります。
壁の表面が100℃を超えないように決められているからです。告示は、通常燃焼のときに可燃物の表面温度が許容最高温度(100℃)を超えない距離と、可燃物に引火しない距離の、いずれか長いほうを離隔距離とする、と定めています。周囲が35℃あることを前提に、そこから65℃上がるところまでを許す決め方です。
一度に燃え上がる温度ではなく、長い時間をかけた変化を見ているからです。当社が加盟する日本暖炉ストーブ協会のガイドラインは「その条件は短期間ではなく半永久的なものであり、木材の低温炭化を考慮に入れています」と書いています。そして「木軸は壁内部に隠蔽されているため、炭化から発火に至るまでの経緯が判りづらく、突然に出火し火災に至る事があります」とも。実際の出火事例では、加熱源が107℃や120℃だった例が報告されています。
諦める前に、3つの道があります。①別表第1どおりの距離を取る ②壁を「離隔距離を要しない構造」にする(耐火構造で仕上げを不燃材料・下地を準不燃材料にするなど)③機種の試験成績による距離を使う(性能規定)。レンガや石で囲う納め方は②にあたります。間取りと機種と予算で、どれを選ぶかが決まります。
消防庁の検討部会が炭火焼き器で実測したところ、厚さ15mmの石こうボードで16〜35℃程度の温度上昇の低減効果が確認されました。これは炭火焼き器の試験なので薪ストーブの数値としては使えませんが、遮熱を入れると温度が実際に下がることと、距離を取ると大きく落ちることが分かります。なお告示225号では、遮熱板を使う場合、遮熱板と壁の間に空気層を設けることが条件になっています。
建築基準法施行令第115条で「木材その他の可燃材料から15センチメートル以上離して設けること。ただし厚さが10センチメートル以上の金属以外の不燃材料で造り、又は覆う部分は、この限りでない」と定められています。メガネ石が分厚いのは、このためです。また協会のガイドラインは「煙突は断熱二重煙突仕様が原則」とし、シングル煙突は室内のみ・貫通部には使わない、としています。
協会のガイドラインでは、非認定の薪燃焼機器と可燃壁との離隔距離は1,000mm以上、家具等の可燃物からも1,500mm以上、設置床は不燃仕上げで周囲460mm以上の保護、としています。ただしガイドラインは協会自身が「法的な拘束はない」と書いているもので、法令上の基準とは別のものです。
離隔距離を定めているのは火災予防条例で、これは市町村ごとに定められています。数字の根拠は全国共通の告示ですが、お住まいの市町村の条例をご確認ください。当社でも一緒に確認します。
薪ストーブで本当に怖いのは、壁の中や囲いの中など、 できてしまえば誰にも確かめられないところです。 当社は日本暖炉ストーブ協会に加盟し、現場に関わる者は認定技術者の資格を取っています。 そこで学んだことと、国の資料や研究で裏の取れたことを、そのまま公開しています。
どのページも、出どころを全部書いています。 当社が行った実験ではないものは、そう明記しています。 数字は、一次資料まで確かめたものだけを載せました。
ここに書いたことは、全部うちが現場でやっていることです。
煙突の高さも、給気の穴も、機種の選定も、この考え方で決めています。
盛岡のショールームには、火を入れた実機があります。数字の話の続きを、炎の前でどうぞ。