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煙突から掻き出した、タールで塞がりかけた煙道。煙道火災の燃料になる
YOMIMONO / 火のある暮らしの話 #66 CHIMNEY

煙道火災の原因と予防。
タール・低温炭化・二重断熱煙突

橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)|煙突掃除・施工の現場から

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安全

薪ストーブの「煙突の中の火事」、煙道火災。その主犯はタール(クレオソート)です。3mm積もれば発火リスクあり。さらに煙突まわりの木部がじわじわ炭化する「低温炭化」という現象も、長い年月をかけて火事の下地をつくります。タールの正体から、仲間の職人と実物大で検証した煙突まわりの熱の話、そして予防策までをまとめました。

錆びた煙道の内壁に、濡れたように光る真っ黒なタールが二筋、垂れ落ちるように厚く付着している
濡れたように光る、この黒がタールです。まわりの粉っぽい汚れがスス。同じ煙突の中で、まったく別のものが育ちます。

ススとタールは別物です

煙突の中に付く汚れは2種類あります。ひとつはスス。木が燃えたあとに残る乾いた黒い粉で、ブラシで払えばサラサラと落ちます。もうひとつがタール(クレオソート)です。煙に含まれる水分と可燃性ガスが、冷えた煙突の内壁で固まったもので、ベタベタの液状から、焼き付いてカチカチの層になったものまであります。

厄介なのはタールです。正体は燃え残った可燃成分そのものですから、条件がそろえば煙突の中で燃え出します。煙突掃除の世界では、タールが3mm積もれば発火リスクありと判断します。3mmは、焚き方を誤ればワンシーズンで十分に到達する厚さです。

タールを増やす焚き方

タールの原因は「低温の煙」です。代表格が生乾きの薪。水分の多い薪は燃焼温度が上がらず、煙の温度も下がるため、煙突内でタールが一気に増えます。しかも水分の蒸発に熱を奪われるので、部屋は暖まらないのに薪の消費だけが増える、いちばん損な焚き方です。

もうひとつが、空気を絞りすぎたくすぶり燃焼です。火持ちを狙って空気レバーを閉じ切ると、炎が消えて煙だけが立ちのぼる状態になります。この煙こそタールの原料です。ガラスが真っ黒になる焚き方は、煙突の中でも同じことが起きているサインです。

タールが分厚く付着し、内径がふさがりかけた煙道の内部
低温の煙を出し続けると、煙道はここまで狭くなります。黒く光る層は、すべて可燃物。これが煙道火災の"燃料"です。

煙道火災とは「煙突の中の火事」です

煙道火災とは、煙突内に積もったタールに火がついて燃え上がる火事です。タールは一度着火すると勢いよく燃え広がり、煙突内は1,000℃級の高温に達します。シングル煙突なら赤熱し、壁や屋根の木材を発火させる危険があります。

煙道火災から火がまわり、屋根や外壁まで焼けた住宅
煙突から、屋根へ。火がまわってしまった現場です。煙道火災は、家そのものの火事になりえます。

怖いのは、外から気づきにくいことです。煙突はもともと高温に耐える構造ですから、初期は室内から異変が見えません。「ゴー」というジェット機のような吸い込み音、そして煙突トップから吹き上がる火の粉や炎。この2つが代表的な兆候です。

※ 燃焼中に「ゴー」という聞き慣れない吸い込み音がしたら、煙道火災の可能性があります。ストーブの空気調整をすべて閉じ、迷わず119番通報してください。煙突に水を掛けるのは厳禁です。

低温でも、木は炭になる

火事と聞くと、真っ赤に燃える炎を思い浮かべます。煙突まわりで本当に怖いのは、もっと地味な現象です。木材は、発火する温度よりずっと低い熱でも、長い年月くり返し受け続けると、少しずつ炭のように変質していきます。低温炭化と呼ばれる、この静かな進行が曲者です。炭に近づいた木は、もとの木より低い温度で火がつくようになる。何年も問題なく使えていた家で、ある日ふいに火が出る背景には、この長い蓄積があることが多いのです。

モニターの図を前に、煙突まわりの熱について解説する様子
仲間の職人と集まって、煙突まわりの熱の伝わり方を検証した勉強会の一コマ。

煙突まわりの熱は、どこに籠るのか

煙突の熱は、まっすぐ上に抜けるだけでは済みません。貫通部の金物や周囲の木部へ、じわじわと伝わっていきます。仲間の職人たちと、実物大のモックアップ(壁と屋根の一部を実物と同じように組んだ試験体)を足場の上に立ち上げ、煙突が屋根を貫く部分の熱を手を動かして確かめました。カタログの数字だけでは見えないことが、実物で組むと浮かび上がります。

勉強会で共有した、煙突まわりの熱の伝わり方の図解
熱の伝わり方を図でも共有しながら、実測とつき合わせていきました。

二重断熱煙突と適切な離隔があれば、木部の温度は安全な範囲に収まります。逆にそこが甘いと、長い年月のあいだに木がゆっくり炭化し、ある日の一度の高温で火がつく。目に見える炎よりも、目に見えない「じわじわ」のほうを先回りして確かめておきたいのです。

煙突と遮熱まわりの納まりを検証する試験体
煙突と遮熱まわりの納まりを、一箇所ずつ確かめる。

二重断熱煙突と、離隔という知恵

煙突を二重にして、あいだに断熱の層をはさむと、内側は高温を保って引きを強くしつつ、外側の表面は触れられるほどに温度が下がります。煙道の中はしっかり熱く、まわりの木部には熱を移さない。この構造が二重断熱煙突です。あわせて、煙突と木部のあいだに適切な距離をとり、遮熱の板をはさむ。「離す」という古くからの知恵が、屋根裏の木を静かに守り続けます。

屋根を貫く煙突の板金・フラッシングの納まり
屋根を貫く部分の板金の納まりも、実物で確認。

予防は3つだけ。難しいことはありません

煙道火災は、原因がタールとはっきりしている火事です。だから予防もはっきりしています。第一に、含水率20%以下までしっかり乾かした薪を使うこと。第二に、空気を絞りすぎず、炎のある燃焼を保つこと。第三に、年1回の煙突掃除でタールとススをリセットすることです。

盛岡や岩手のように焚く期間が長い東北では、ワンシーズンでたまる汚れの量も多くなります。シーズンオフに煙突の中を毎年ゼロへ戻す習慣が、燃費にも安全にも効く最良の保険です。そして煙突まわりの施工が適切かどうかの確認も、年に一度の点検で一緒にやる価値があります。

この記事のポイント

  • スス=乾いた粉、タール=煙が冷えて固まった可燃物。危険なのはタール
  • タールは3mm積もると発火リスク。煙道火災では煙突内が1,000℃級になる
  • 生乾きの薪と空気の絞りすぎがタールを増やし、薪の消費も増やす
  • 低温炭化:発火温度より低い熱でも、長年受け続けると木は炭化し、燃えやすくなる
  • 二重断熱煙突と適切な離隔が、煙突まわりの木部を低温炭化から守る
  • 兆候は「ゴー」という吸い込み音と、煙突トップからの火の粉
  • 予防は乾いた薪・炎のある燃焼・年1回の煙突掃除の3つ

煙突の内側は、外からいくら眺めても見えません。屋根裏の木が静かに変質していても、気づくすべは普段の暮らしにはありません。D'STYLEは英国RODTECH認定・東北第一号の煙突掃除人が、盛岡を拠点に岩手・東北へ出張し、タールの付着状況から煙突まわりの納まりまで確認したうえで掃除と点検を行います。他店やハウスメーカーで設置した薪ストーブも大歓迎です。安心して次のシーズンを迎えるために、年1回の煙突掃除はプロに任せてください。

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D'STYLEは盛岡から岩手・東北全域へ出張し、タールの状態から煙突まわりの納まりまで確認する本格的な煙突掃除・点検を行います。9月〜3月は追加料金¥5,500をいただくため、8月末までのご予約がお得です。

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写真: Jarkko Iso-Heiko (Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.5), Timo Newton-Syms (Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.0)

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橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

住田町の山主だった祖父から三代、火と生きてきました。英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)。盛岡・国道4号線沿いのショールームにいます。

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