石割桜が咲いて、朝の冷え込みがゆるみ、焚かない日がぽつぽつ増えてくる。岩手なら四月の終わりから五月、薪ストーブのシーズンが終わります。夏の仕込みの話は以前書きましたが、今日はその前段、「春じまい」の話です。シーズン最後の火を、どう見送るか。これをきちんとやるかどうかで、秋の初火入れの気持ちよさが決まります。

名残の一焚きを、楽しむ
まず、事務的な話の前に、風情の話を。今シーズン最後だな、という夜は、意識して「名残の一焚き」を楽しんでください。とっておきの薪で、ゆっくり燃やして、家族で火を眺める。ひと冬、家を暖めてくれた道具への、ささやかな慰労会です。茶道に名残の茶事があるように、火の暮らしにも名残の一焚きを。とっておきの一本は、去年いちばんきれいに割れた薪でも、思い出のある庭木でもいい。火を見ながら、この冬の出来事を家族で振り返る夜にすると、春の入り口が、少しあらたまった気持ちになります。この儀式があると、季節の区切りが、暮らしの中にくっきり刻まれます。
灰は、完全撤去が鉄則
火を見送ったら、実務です。いちばん大事なのは、灰の完全撤去。シーズン中は熾火の布団として役立った灰も、夏の湿気の季節には、湿気を吸って炉内の金属を錆びさせる犯人に変わります。完全に冷えたのを確かめて、炉内の灰をきれいに掻き出す。取り出した灰は、畑と庭で第二の人生へ(灰の使い道)。ついでに炉内を眺めて、耐火部品のひび割れや傷みをチェックしておくと、秋に慌てません。灰を落としたあとの炉の底や隅に、湿気取りをひとつ置いておくと、夏のあいだの結露と錆を、さらに遠ざけられます。
ガラスと天板を、磨き上げる
次に、化粧直しです。ガラスの煤を灰で磨き落とし、天板と外装を乾拭き。天板の錆が気になる機種は、専用のポリッシュやオイルで薄く防錆を。がんばった道具がぴかぴかになると、オフシーズンの姿が置物として様になります。ガラス磨きに使う灰は、ざるでふるって細かい粉だけを、湿らせた新聞紙や布に少しつけて。研磨剤いらずで、こびりついた煤がすっと落ちます。火の副産物で火の道具を磨く、無駄のない循環です。夏の飾り方は、夏の記事でどうぞ。ドアのガスケット(パッキン)のへたりも、この時期に確認しておくと、交換の段取りが夏のうちに組めます。
薪も、夏を越す支度を
春じまいは、道具だけの話ではありません。残った薪の夏越しも、この時期の仕事です。使いきれずに残った薪は、雨のかからない風通しのいい場所へ。地面に直置きせず、すのこや角材で底を浮かせておくと、湿気とカビを防げます。梅雨から夏は、薪の中で過ごす虫が動きやすい季節でもあるので、時々ようすを見てあげてください(薪と虫の話)。そして、次のひと冬に足りるだけの薪を、この春から夏のうちに仕込み、乾かし始める。一年半先を見て動くのが、薪の暮らしのこつ。名残を惜しみつつ、もう次の冬の支度が始まっているのです。
そして、煙突掃除の予約を
春じまいの締めくくりは、煙突掃除の予約です。理由は単純で、秋は混むから。春から夏の掃除なら日程はゆったり、当店では8月末までをおすすめしています。ひと冬分の煤を落として、秋を待つ。ここまでやれば、春じまいは満点です。(掃除の時期の話は、こちら。)
季節の儀式ごと、お手伝いします
岩手・盛岡のD'STYLEは、煙突掃除、メンテナンス、部品交換まで、春じまいの実務をまるごと承っています。名残の一焚きはご家族で、煤の始末はプロで。それが長持ちの黄金分担です。ご予約、お早めにどうぞ。
写真: Smoky Vendace (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



