ここ数年、当店にご相談に来られる方の中に、「中古の家を買って、これからリフォームします」という方が目に見えて増えてきました。すでにある家を手直しして暮らし、その計画の中で薪ストーブやサウナも一緒にかなえたいというご相談です。
中古住宅に薪ストーブを入れること自体は、珍しい工事でもありません。ただ、家を買う前に確かめておくと後の工事が楽になる点や、資金と制度の面で知っておきたいことがいくつかあります。この読みものでは、物件選びから火入れまでの順番に沿ってお話しします。整備した中古のストーブ本体の選び方は、「中古の薪ストーブを、長く使うための選び方」に分けてまとめました。
家は、すでにたくさんある
総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の住宅はおよそ6,502万戸あり、そのうち空き家は約900万戸、空き家率は13.8%でした。空き家の数も率も、この調査で過去最も高い値です。
住まいを探す方にとって、中古住宅はずいぶん身近な選択肢になりました。古い家には、広い敷地や土間、使っていない座敷など、新築では得にくい余白が残っていることがあります。その余白は、薪ストーブやサウナを置く場所として生かせます。薪の置き場を確保しやすい敷地の広さも、地方の中古住宅ならではの利点です。
買う前に見ておきたい、建物の三つの点
一つめは、建てられた年です。建築基準法の耐震基準は1981年6月に大きく改められ、それ以降に建築確認を受けた建物は、いわゆる新耐震基準で建てられています。それより古い家では、リフォームとあわせて耐震診断や補強を検討することになります。
二つめは、床の強さです。建築基準法施行令では、住宅の居室の床を設計するときの積載荷重を1平方メートルあたり1,800ニュートン、およそ180kgとしています。薪ストーブは重いもので200kgを超え、たとえばバーモントキャスティングスのデファイアントは235kgあります。これに石やタイルの炉台が加わるため、置く場所の床下を確かめ、必要に応じて補強します。
三つめは、煙突の通り道です。屋根を抜くか壁から出すか、二階の部屋や屋根裏をどう通すかは、間取りと屋根の形でおおよそ決まります。雪の多い地域では、屋根からの落雪が煙突に当たらない位置かどうかも大切です。購入前に図面を見せてもらい、屋根裏を確かめられれば、煙突の経路をある程度判断できます。煙突の考え方は煙突のページで詳しくご紹介しています。
フラット35(リノベ)という選択肢
中古住宅の購入とリフォームを一緒に考える方に知っていただきたい制度が、住宅金融支援機構の「フラット35(リノベ)」です。中古住宅を買って性能を高めるリフォームを行う場合に、フラット35の借入金利が当初5年間引き下げられます。
引き下げ幅は二段階で、金利Aプランは年1.0%、金利Bプランは年0.5%です。Aプランでは、リフォーム後に断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上など、省エネ、耐震、バリアフリー、耐久性のいずれかで高い基準を満たす必要があります。Bプランでは、断熱材の追加や高効率設備の設置、手すりの取り付けなどが工事の例として挙げられています。どちらも、専門家による現況検査(インスペクション)や瑕疵保険への加入など、住宅を維持するための措置を一つ以上行うことが条件です。
ご自身で中古住宅を買ってリフォームする「リフォーム一体タイプ」は、取り扱う金融機関が限られます。また、予算に達する見込みになると受付が終わり、フラット35Sとの併用もできません。金利が下がる対象は住宅ローン全体で、薪ストーブに直接出る補助とは性格が異なりますが、断熱改修を含む計画とは相性のよい制度です。条件は改定されることがあるため、最新の内容は機構の案内と金融機関でお確かめください。
正直にお伝えします ― 薪ストーブ・サウナ単体は、多くの場合、補助金の対象外です
国の住宅リフォーム向けの補助は、窓や壁・床の断熱改修など、住宅全体の省エネ性能を高める工事が中心です。薪ストーブやサウナの購入・設置費そのものは、多くの場合、対象に含まれません。
薪ストーブやペレットストーブに使える補助金の多くは、盛岡市や陸前高田市など、市町村が独自に設けている制度です。購入や工事の前に申請するのが原則で、予算枠にも限りがあります。市町村ごとの一覧は「薪ストーブ・ペレットストーブ補助金まとめ」のページにあります。
断熱と一緒に、火の場所を決める
中古住宅は、建てられた時代によって断熱の水準が大きく異なります。窓の交換や壁・天井の断熱改修を予定しているなら、薪ストーブの設置も同じ時期に計画するのが合理的です。職人が家に入る期間が一度で済み、床の補強や壁の下地づくり、煙突が壁や天井を抜ける部分の処理を、内装を仕上げる前にまとめて行えます。
断熱と気密を高めると、家の中の空気の出入りが少なくなります。薪ストーブは燃焼に室内の空気を使うため、気密の高い家では、外から燃焼用の空気を取り入れる工夫や、換気設備との兼ね合いを考えておく必要があります。断熱を整えた家では、ストーブの暖かさが長く室内にとどまり、少ない薪で家全体を暖めやすくなります。
2025年4月に施行された改正建築基準法では、木造二階建ての住宅なども、主要な構造部分を大きく手直しする大規模な修繕・模様替えで建築確認が必要になりました。リフォームの規模によっては設計と手続きに時間がかかるため、早めに工務店や設計者と段取りを確かめておくと安心です。

購入から火入れまでの流れ
順番を大まかに書いておきます。まず、物件を決める前の段階でご相談いただければ、煙突の通り道や床の状態を一緒に確かめられます。フラット35(リノベ)などの融資を使う場合は、リフォームの内容によって条件が変わるため、売買契約の前に金融機関へ相談しておくことをおすすめします。
次に、断熱や水まわりを含むリフォーム全体の計画の中で、薪ストーブやサウナの位置を決めます。煙突の位置、炉台と炉壁の範囲、サウナ室の広さや電源・給排水は、内装が仕上がってからでは動かしにくい部分です。市町村の補助金を使う場合は、この段階で申請の時期を確かめます。
そのうえで施工に入り、断熱・内装の工事と、薪ストーブ・サウナの設置を、できるだけ同じ時期にまとめて進めます。

サウナは、リフォームで作りやすい場所
サウナは建物の内側に設ける設備なので、中古住宅のリフォームと相性がよい設備です。使っていない部屋や浴室の隣の納戸などは、サウナ室の候補になります。浴室の近くであれば、水風呂やシャワーへの動線も短くできます。
電気式のサウナヒーターを使う場合は、専用の電源回路が必要になることが多く、分電盤の容量や契約の見直しを伴うこともあります。これも内装工事の前に決めておきたい点です。自宅にサウナを作るときの考え方は、「個室サウナ・貸切サウナ」の話にも書きました。
すでにある家に、自分たちの暮らし方を足していく。中古住宅のリフォームは、もう一つの家づくりです。岩手・盛岡で中古住宅のリフォームをお考えの方は、物件選びの段階からD'STYLEにご相談ください。煙突やサウナ室の設計から施工まで、お住まいの状況に合わせてご提案します。
参考:住宅数と空き家の数は総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(日本語)、フラット35(リノベ)は住宅金融支援機構の案内(日本語)、建築基準法の改正は国土交通省の資料(日本語)による。床の積載荷重は建築基準法施行令第85条による。

