煙突の高さは、どうやって決めているのか。現場でよく聞かれる質問です。当社は、煙突の全高を4m以上とり、屋根の頂点(棟)から水平に3m以内で屋根を抜くときは棟より600mm以上高く、3mより離れるときは屋根面から900mm以上の高さを目安にしています。この数字の裏には、屋根の上を流れる風の性質があります。
この読みものでは、風が屋根に当たったときに何が起きるのかを、風の圧力と煙突の引きの計算から順にたどります。
風は、屋根を押し、屋根を越えて渦を巻きます
風が家に当たると、風を受ける側の壁や屋根の斜面は押されて、気圧がわずかに高くなります。この押された空気の層を風圧帯と呼びます。風は棟を越えるところで屋根から離れ、反対側の斜面の上では渦を巻いて乱れます。煙突の口がどちらに入るかで、煙突の引きは変わります。
風が持つ力は、速さの2乗で大きくなります。空気が風として持つ圧力は、風速3m/sで約6パスカル、8m/sで約40パスカルです。一方、煙突が煙を引き上げる力は、高さ5mの煙突で煙が平均200℃なら約27パスカル、煙が60℃まで冷えると約11パスカルしかありません。
| 比べるもの | 力の大きさ |
|---|---|
| 風速3m/sの風 | 約6パスカル |
| 風速8m/sの風 | 約40パスカル |
| 風速10m/sの風 | 約63パスカル |
| 煙突5m・煙200℃・外0℃の引き | 約27パスカル |
| 煙突5m・煙100℃・外0℃の引き | 約17パスカル |
| 煙突5m・煙60℃・外0℃の引き | 約11パスカル |
※ 風の圧力は空気の密度1.25kg/m³として½ρv²、煙突の引きは内外の空気の重さの差から当社で計算。
強い風の日は、風の力が煙突の引きを上回ることがあります。風が煙突の口を押さえつける場所に立っていれば、煙は上がりにくくなり、ときには押し戻されます。
引きが弱くなりやすいのは、風上側の低い煙突です
風を受ける斜面の、軒に近い低い位置に煙突を出すと、煙突の口は風に押された風圧帯の中に沈みます。口のまわりの気圧が上がるので、煙突の上と下の圧力の差が縮み、引きが弱まります。風が強い日には、一時的に空気が逆に流れることもあります。
風下側の斜面では、棟を越えた風が渦を巻きます。渦の中は気圧が下がりやすく、煙突の口から空気を吸い出す向きに働くことが多い場所です。ただ、渦は向きも強さも揺れ動くので、煙の流れが乱れやすくなります。
どちらの斜面でも、煙突の口を棟より十分に高く出せば、押された空気の層と乱れた渦の上に抜けられます。棟から水平に離れるほど、渦の影響も小さくなります。当社が棟の近くでは棟より600mm以上高くする目安を使っているのは、この風の層を越えるためです。
温かい煙突は、風に負けにくい
表のとおり、煙突の引きは煙の温度で大きく変わります。同じ5mの煙突でも、煙が200℃なら27パスカル、60℃なら11パスカルです。屋根の上の部分を断熱二重煙突にして煙の温度を保つと、風に負けにくくなります。全高を高くとることも、引きそのものを強くします。煙突の高さを6mにすれば、200℃の煙で約32パスカルになります。
焚き付けの直後は煙突が冷えていて、引きがいちばん弱い時間です。風の強い日の焚き付けで煙が戻りやすいのは、このためです。細い薪と十分な空気で、煙突を早く温めてください。
家に開いた口も、煙突の引きを変えます
煙突の引きは、煙突の口の圧力と、煙突の根元、つまり家の中の圧力の差で決まります。風を受ける側の窓や天窓が開いていると、風の圧力が家の中に入り、家の中の気圧が変わります。風の向きや開いた口の位置によって、引きが強まることも弱まることもあります。換気扇やレンジフードも、家の中の気圧を下げて引きを弱めます。
気密の高い家での負圧の話は高気密住宅と薪ストーブに、家と煙突の空気の引っぱり合いは家と薪ストーブは、熱と水と空気でつながっているに書きました。
煙突トップは、雨と吹き下ろしの風を防ぎます
煙突の先に付けるトップの役目は、まず雨や雪を煙突に入れないことです。真上や斜め上から吹き下ろす風が煙突の口に直接入るのも防ぎます。一方で、横から吹く風に対しては、トップの形を変えるより、煙突の口をどこに出すかのほうが引きに大きく効きます。トップを選ぶ前に、煙突の位置と高さを決めます。
煙突の位置を決めるときに確かめること
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 煙突を出す斜面 | 冬によく吹く風を受ける斜面の低い位置は、風圧帯に入りやすい |
| 棟との関係 | 棟から3m以内なら棟より600mm以上。口を風圧帯と渦の上に出す |
| 全高 | 4m以上。高さは引きそのものを強くする |
| 煙突の温度 | 屋根の上は断熱二重煙突。煙が温かいほど風に負けにくい |
| 家の中の圧力 | 天窓、換気扇、レンジフード。家の口も煙突の引きを変える |
| まわりの建物と地形 | 隣の高い建物や斜面も、風の流れと煙の行き先を変える |
煙突がよく引けば、煙は少なく、早く空へ上がります。近所に煙を流さないことは、薪ストーブを長く楽しむための約束です。当社は図面の上で風を読み、煙突の口を置く場所を決めていきます。新築でもリフォームでも、屋根の形が決まる前にご相談いただくと、選べる位置が広がります。
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風の圧力と煙突の引きの数字は、当社の計算です。