本文へ
YOMIMONO / 家と薪ストーブ ① 熱と水と空気

家と薪ストーブは、
熱と水と空気でつながっている

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2026年10月31日

家の性能が、ここ数年で大きく変わりました。2025年4月からは、原則としてすべての新築住宅に国の省エネ基準への適合が義務づけられ、国は2030年までにこの基準をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の水準まで引き上げる方針を示しています。壁も天井も窓も、熱を逃がさない家が当たり前になっていきます。

暖かい家ほど、薪ストーブは家と一緒に考える必要があります。火は熱を出し、水を出し、空気を吸います。家はその熱と水と空気を、断熱と気密で閉じ込めます。両者がどこで出会い、どこでぶつかるのか。日本暖炉ストーブ協会の研修で学んだことを手がかりに、化学から物理まで順にたどって、家と火の関係をひとつずつ解いていきます。数字はすべて、当社で計算し直してから載せています。

薪1kgを燃やすと、約0.6kgの水が生まれます

話は、木の中身から始まります。乾いた木は、重さで見るとおよそ半分が炭素、6%ほどが水素、残りの大半が酸素でできています。燃えるとき、炭素は酸素と結びついて二酸化炭素になり、水素は酸素と結びついて水になります。水素1gから水が9gできるので、乾いた木1kgに含まれる水素60gからは、約540gの水が生まれます。

そこへ、薪がもともと抱えていた水分が加わります。含水率20%の薪1kgは、水が200g、乾いた木が800gです。燃やすと、木から生まれる水が約430g、もとの水分が200gで、合わせて約630gの水が水蒸気になって煙突を上っていきます。乾いた薪でも、煙はたっぷりと水を抱えています。

薪の含水率薪1kgから出る水煙の露点(空気を1.5〜2倍入れたとき)
15%約0.61kg約44〜49℃
20%約0.63kg約46〜51℃
30%約0.68kg約49〜54℃
40%約0.72kg約53〜58℃

※ 乾いた木を炭素50%・水素6%・酸素44%(重さの割合)として当社で計算。含水率は濡れた状態の重さに対する水の割合。露点は燃やすのに入れる空気の量で変わります。

表の右の列が大切です。煙の中の水蒸気は、煙が45〜50℃あたりまで冷えると水に戻り始めます。煙突の内側がこの温度より冷たいと、そこで水が出て、煤や燃え残りのガスを溶かし込んだ黒い液になって管に張りつきます。これがタール(クレオソート)の始まりです。湿った薪は水の量が増えるうえに、水を蒸発させるために熱を使うので煙の温度も下がります。露点は上がり、煙は冷える。湿った薪で煙突が汚れやすいのは、この二つが重なるからです。

屋外や屋根の上の煙突に断熱二重煙突を使うのも、同じ理由です。管のまわりを断熱材で包み、煙突の内側を露点より高く保ちます。

焚き付けの最初の数分、炉の中は結露しています

火を入れたばかりのストーブは、部屋と同じ15〜20℃しかありません。そこへ露点45℃前後の煙が触れれば、炉の壁やガラスの内側で水蒸気が水に戻ります。焚き付けの直後にガラスがうっすら曇るのは、このためです。

炉の内張りの素材でも、温まり方が違います。鋳鉄は熱をよく伝える金属で、温められた表面の熱をすぐ奥や外側へ逃がします。炉の内側によく使われるバーミキュライトの板は、熱をほとんど伝えません。同じ火を当てても、表面は断熱材の板のほうが先に熱くなり、鋳鉄の面は遅れて温まります。

結露している時間が長いほど、水と煤が炉の中に残ります。焚き付けでは細い薪と空気を十分に使い、炉の中の温度を一気に上げてください。くすぶらせながらゆっくり温めると、炉の中で水が出る時間が長くなります。焚き付けの組み方は焚き付けの読みものにまとめています。

結露するかどうかは、家の中の空気が決めます

結露は、空気が抱えきれなくなった水蒸気が、冷たいものの表面で水に戻る現象です。空気が抱えられる水蒸気の量は温度で決まり、暖かいほど多くなります。ある空気を冷やしていって、水が出始める温度を露点と呼びます。

室温と湿度露点空気1m³に含まれる水
18℃・50%約7.4℃約7.7g
20℃・40%約6.0℃約6.9g
20℃・50%約9.3℃約8.7g
22℃・45%約9.5℃約8.7g
25℃・40%約10.5℃約9.2g

※ Tetensの式による当社の計算。

湿度計に出る数字は相対湿度で、その温度で抱えられる最大の量に対して、いま何割の水蒸気があるかを示します。水そのものの量は、表の右の列の絶対湿度で見ます。たとえば80℃・相対湿度30%のサウナ室には、空気1m³あたり約88gの水があります。20℃・60%の部屋は約10gです。サウナは乾いて感じられても、部屋のおよそ8倍の水を抱えています。

盛岡の1月の日最低気温は、平年で氷点下5.2℃です。家の中で25℃・40%の暖かい空気が、外気で冷やされた面に触れれば、その面が10.5℃を下回ったところで水が出ます。暖かく快適な部屋ほど、冷たい面との温度差は大きくなります。窓まわりの結露は窓の結露の読みもので詳しく書きました。ここからは、薪ストーブならではの場所を見ていきます。

煙突の囲いは、家の断熱の切れ目になりやすい場所です

断熱材と気密の層は、家をひと続きに包んでこそ働きます。どこか一か所でも途切れると、暖かく湿った室内の空気がそこへ流れ込み、冷えた面で結露します。煙突は天井と屋根を突き抜けるので、この包みを破りやすい場所です。

天井で断熱している家なら、煙突の囲いの下、天井の高さで断熱と気密をつなぎます。屋根で断熱している家なら、屋根の面でつなぎます。どちらの場合も、囲いの部分の断熱を、まわりの天井や屋根と同じ性能にそろえることが大切です。

途切れていると何が起きるか、計算してみます。囲いの中の空気が25℃、屋根の上が氷点下10℃、厚さ0.8mmのステンレスの板金が一枚あるだけで、両側の空気はほとんど動いていないとします。板の内側の表面は約7.5℃まで冷えます。部屋の空気が25℃・40%なら露点は10.5℃です。3℃も足りないので、囲いの天井やチムニーカバーの裏で水が出ます。

金属の板は、熱をほとんど止めません。内側と外側の表面温度は、計算上0.01℃も違いません。板金は雨を防ぎますが、寒さはそのまま通します。囲いの中に落ちた水は木の下地に染みて、雨漏りと見分けのつきにくいシミになります。

ケイカル板が止めるのは火です。熱は通り抜けます

材料によって、熱の伝わりやすさはまるで違います。この伝わりやすさを数字にしたものを熱伝導率と呼び、数字が大きいほど熱をよく通します。

材料熱伝導率(W/m・K)
鋼約55
鋳鉄約48
ステンレス約15
ガラス約1.6
レンガ約0.64
石膏ボード約0.22
ケイ酸カルシウム板(ケイカル板)約0.2
天然木材約0.12
住宅用ロックウール・グラスウール約0.038
動かない空気約0.024

※ 代表的な値。温度や密度、製品によって変わります。

表のいちばん下が空気です。住宅用のグラスウールやロックウールは、繊維のすき間に動かない空気を閉じ込め、その空気に熱を止めさせています。発泡プラスチックの断熱材も、小さな泡に気体を閉じ込める仕組みです。

実際の壁で熱がどれだけ止まるかは、熱伝導率と厚みの両方で決まります。厚みを熱伝導率で割った値を熱抵抗と呼びます。煙突の囲いによく使う厚さ12mmのケイカル板は、0.012÷0.2で0.06です。厚さ100mmの住宅用ロックウールは、0.1÷0.038で約2.6です。ケイカル板でロックウール100mmと同じ熱抵抗を出そうとすると、厚さが約53cm要ります。

ケイカル板の役目は、燃えない面をつくることです。煙突の熱から木を守っているのは、煙突と木のあいだの距離と、断熱二重煙突の断熱材です。当社が煙突の囲いの内寸を450〜500mmとり、その内側に12mmのケイカル板を張っているのは、この二つを両方そろえるためです(煙突について)。

木は100℃でも、長い時間をかけて燃える準備を始めます

木は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンという三つの成分でできています。火を近づけなくても、熱に長くさらされると、木の中ではゆっくり変化が進みます。まず水分が抜け、次に成分が少しずつ分解して、木は炭のような、すき間の多いもろい組織に変わっていきます。これを低温炭化と呼びます。

すき間の多い炭は、空気を抱えて熱を逃がしにくくなります。さらに炭は、空気中の酸素とゆっくり反応して自分でも熱を出します。熱がこもり、こもった熱が反応を進め、反応がまた熱を出す。この繰り返しで、木の内部の温度は少しずつ上がり、ついには燃え出します。100〜150℃ほどの熱でも、何年もかけてこの状態に至ることがあります。

消防の決まりで、ストーブのまわりの木の表面温度の上限が100℃と定められているのは、この現象があるからだと考えられます。気をつけたいのは、目に見えない場所の木です。ケイカル板の裏の下地に合板を使っていると、その合板は表面の板越しに何年も熱を受け続けます。表から見て異常がなくても、裏では炭化が進んでいるかもしれません。

遮熱板の裏に空気の層を設けるのも、熱をこもらせないためです。熱せられた遮熱板が後ろの空気を温め、温まった空気が上へ抜け、下から新しい空気が入ってきます。この流れが熱を運び出すので、守りたい壁が温まりません。上下に空気の出入り口がない空気層では、空気が動かず熱がたまります。消防が台所のコンロに示している対策でも、防熱板は不燃材のスペーサーで壁から1cm以上離し、通気のよいすき間をとることとされています。

離隔の数字は、木の表面温度から決められています

ストーブと壁のあいだに空ける距離を離隔と呼びます。この数字には、温度にもとづいた決め方があります。総務省消防庁の告示では、近くの木などの可燃物の表面温度が許容最高温度を超えない距離、あるいは可燃物に火がつかない距離のうち、長いほうを離隔距離とします。許容最高温度はふだんの燃焼で100℃、試験のときのまわりの温度は35℃が基準です。部屋の温度より65℃以上は上げない、という考え方です。

薪のような固体燃料を使う機器には、専用の試験も定められています。一度に入れられる量の薪を入れ、重さが半分になるまで燃やすことを1回として、これを5回繰り返します。そのうち4回以上で、可燃物の表面温度が許容最高温度を超えないことを確かめます。メーカーが試験で確かめた機種は、取扱説明書の離隔が基準になります。試験で確かめていない機種には、協会の資料で上方1.5m、側方と後方1m、前方2mという大きな最低距離が示されています。

建物の側にも決まりがあります。建築基準法では、煙突は木材などの可燃材料から15cm以上離して設けることとされ、天井裏や小屋裏を通る部分は、たまったほこりが煙突の熱で燃えないよう、断熱した構造にすることが求められています。協会では、シングル煙突と可燃物のあいだを18インチ、約460mmとることを、守るべき寸法として定めています。アメリカの防火基準をもとにした数字です。

部屋の仕上げにも決まりがあります。2階建て以上の家で、最上階以外の階に火を使う設備を置く部屋は、壁と天井の仕上げを燃えにくい材料にすることが求められます(内装制限)。2階建ての1階のリビングに薪ストーブを入れるなら、この決まりにかかります。木の天井や梁を見せた仕上げにしたい場合も、ストーブのまわりの範囲を燃えない材料で仕上げ、離隔や遮熱板の条件を満たすことで、それ以外の部分を木で仕上げられる緩和の告示があります。リフォームで薪ストーブを入れるときは、とくに見落としやすい点です。

気密の家では、煙突と家が空気を引っぱり合います

煙突が煙を引き上げる力は、煙突の中の熱く軽い空気と、外の冷たく重い空気との重さの差から生まれます。高さ5mの煙突で、中の平均が200℃、外が0℃なら、その力は約27パスカルです。煙が100℃まで冷えると約17パスカル、60℃では約11パスカルまで弱まります。煙突が冷えると、煙は結露するうえに上がりにくくもなります。

家にも同じ力が働きます。冬の2階建ての家では、暖かい空気が上へ抜けようとするため、1階の床に近いほど室内の気圧が外より下がります。高さ6mの家で室内20℃、外が氷点下5℃なら、1階の足もとで約3パスカルです。そこへ換気扇やレンジフードの排気が加わり、気密の高い家ほど負圧は深くなります。負圧が煙突の力を上回ると、煙は部屋へ戻ります。協会の過去の実験では、高気密住宅で起こりうる負圧の条件で、一酸化炭素中毒の症状が出る濃度が測られています。

備えは、家の側と火の側の両方に要ります。家の気密性能、換気の方式、レンジフード、ストーブの外気導入、そして一酸化炭素警報器まで、まとめて考えます。詳しくは高気密住宅と薪ストーブと煙突のドラフトの話に書きました。

夏の薪ストーブは、内側から錆びることがあります

結露は冬だけの話でもありません。外気が34℃・湿度70%の夏の日、外の空気の露点は約27.7℃です。エアコンで26℃に冷やした部屋では、ストーブの鋳物も鋼板も26℃まで冷えています。夏は家の中のほうが外より涼しいので、煙突の空気の流れは冬と逆になり、外の湿った空気が煙突を下りてきます。その空気が露点より冷たい鉄に触れると、炉の内側で水が出ます。

シーズンが終わったら灰と煤を取り除き、空気の調整を閉じておきます。灰や煤は湿気を抱え込み、鉄の錆を早めます。煙突掃除をシーズンの終わりに済ませておくと、夏のあいだの錆とにおいを抑えられます。

霧の朝と、風のない夕方

霧は、空気が露点まで冷えて、水蒸気が細かい水の粒に戻ったものです。よく晴れて風のない寒い朝は、地面の熱が空へ逃げて気温が下がり、霧が出やすくなります。こういう日は空気がほとんど動かず、煙が広がらずに家のまわりに残りがちです。オランダの薪ストーブ利用者の団体などは、風がなく霧の濃い日には火を入れず、風が出るのを待つよう勧めています。

焚くなら、乾いた薪を使い、焚き付けを短く切り上げて、早く高い温度で燃やします。煙の量を減らすことが、近所への何よりの気づかいになります。

家と火を、同じ図面で考えます

ここまでの話を、家づくりやリフォームの打ち合わせで確かめたい項目にまとめました。

確かめること理由
煙突まわりの断熱と気密天井断熱なら天井の高さ、屋根断熱なら屋根の面で、まわりと同じ性能でつながっているか。切れ目は囲いの中の結露になる
囲いの下地ケイカル板の裏に合板など燃える下地が入っていないか。熱は板を通り抜け、木は100℃でも炭化が進む
遮熱板の空気層上下に空気の出入り口があり、空気が流れる構造か。動かない空気層は熱をためる
離隔と内装制限機種ごとの離隔、煙突と可燃物の距離、部屋の仕上げの決まりを図面の段階で確かめる
換気と外気導入家の換気方式、レンジフード、ストーブの給気をまとめて考える。一酸化炭素警報器も付ける
薪の乾き含水率20%以下の薪を使う。煙の露点が下がり、煙突の汚れと煙が減る

日本暖炉ストーブ協会では、全国の施工会社とメーカーが毎年集まり、こうしたことを実験と計算で確かめ合っています。D'STYLEは2017年9月に、岩手県内の施工販売会社として初めて協会に入会しました。研修で学んだことは、岩手の家の寒さと照らし合わせて、現場の納まりに生かしていきます。家の性能が上がるほど、薪ストーブ屋は家のことを知っていなければなりません。新築でもリフォームでも、図面の段階から一緒に考えさせてください。

関連するページ:煙突について・高気密住宅と薪ストーブ・窓の結露はなぜ起きるか・煙突の話。仕組みから手入れまで・薪は、ガスになってから燃える・焚き付けの読みもの

参考:日本暖炉ストーブ協会 青年部の研修資料(2024年、結露・熱・気密断熱、安全離隔)、総務省消防庁「対象火気設備等及び対象火気器具等の離隔距離に関する基準」(平成14年消防庁告示第1号)、建築基準法および同施行令、盛岡の気温は気象庁の平年値(1991〜2020年、盛岡)。露点・水の量・表面温度・ドラフトの数字は、当社が計算し直したものです。

D'STYLE
有限会社D'STYLE

岩手県盛岡市。薪ストーブ・ペレットストーブ・サウナの設計施工と煙突掃除。設置実績900件超。日本暖炉ストーブ協会会員。

家と火を、同じ図面で。

煙突まわりの断熱と気密、離隔、換気。図面の段階で一緒に決めておくと、後からの手直しが少なく、安全に納まります。工務店さま・設計事務所さまとの連携も承ります。