薪ストーブのカタログには、必ずkW(キロワット)が書いてある。8kW、10kW、12kW。数字が大きいほうが暖かい、と思いたくなる。
半分は合っている。ただし、kWが教えてくれるのは「1秒あたりにどれだけ熱を出すか」だけだ。勢いはわかる。でも「その暖かさがどれだけ続くか」は、カタログのどこにも書いていない。
石のストーブには、18.4kWhの電池が入っている
ソープストーン(滑石)のストーブと、鋳鉄のストーブを並べて考えてみる。
ソープストーンは熱をため込む。薪を焚いている間に石が温まり、火が消えた後もじわじわ放熱する。蓄えられる熱量は約18.4kWh。1,000ワットのヒーターを18時間以上つけっぱなしにしたのと同じ量だ。
鋳鉄は約7.2kWh。ソープストーンの4割しかない。つまり鋳鉄のストーブは火が消えれば早く冷める。
どちらが「いいストーブ」かという話ではない。鋳鉄は立ち上がりが早く、燃やしている間の暖かさは十分だ。ソープストーンは立ち上がりが遅い代わりに、朝まで暖かさが残る。暮らし方によって、どちらが合うかが変わる。
ところがカタログのkWには、この違いが一切出てこない。
50度下がると、暖かさは半分になる
ストーブの表面温度が300℃から250℃に下がったとする。50℃の差。たいしたことがないように見える。
ところが輻射熱は温度の4乗に比例する。50℃下がっただけで、あなたの体に届く暖かさはおよそ半分になる。温度が少し落ちるだけで暖かさが急に減る。石のストーブが「冷めにくい」ことに意味があるのは、この物理法則があるからだ。
デコボコは、飾りじゃない
薪ストーブの表面を見ると、つるりとしたものと、彫刻のようにデコボコしたものがある。
デコボコは装飾ではない。表面積を増やしている。表面積が大きいほど、空気に触れる面が広がり、輻射熱の出方が変わる。実測すると、デコボコのあるストーブは平滑なストーブより1割から2割、放熱面積が大きい。
カタログには、表面積の数字も出てこない。
ATK指数は、カタログが見せないものを測る
こうした「カタログに出てこない暖かさの質」を数字にしたのが、当社が考えたATK指数だ。
ATK指数は4つの軸で構成されている。蓄熱性能(A)、放熱特性(T)、構造と質量(K)、そして燃焼効率。100点満点で、基準機はヨツール F500 ECOの77点。
蓄熱が大きいストーブはA軸が高い。放熱面積が広いストーブはT軸が高い。重くて頑丈なストーブはK軸が高い。どれか一つが飛び抜けていても、他が弱ければ点数は上がらない。
ただし、ATK指数は「いちばんいいストーブ」を決めるための数字ではない。あなたの暮らし方に合うストーブを探すための物差しだ。夜中に薪を足せない家庭なら蓄熱の高い機種が合う。朝から晩まで家にいて薪を足せるなら、立ち上がりの早い鋳鉄のほうが使いやすいかもしれない。
なぜ 20/40/25/15 なのか
ATK指数の4軸には重みがついている。蓄熱20点、放熱40点、構造25点、効率15点。
放熱が最も重いのは、暖かさを体で感じるのは輻射熱だからだ。蓄熱がいくら大きくても、表面から出てこなければ暖かくない。石の中に閉じ込められた熱は、石のための熱であって、あなたのための熱ではない。
効率が最も軽いのは、現代の薪ストーブはどの機種も80%前後の燃焼効率を持っていて、差が小さいからだ。差が小さいところに大きな重みをつけても、点数が動かない。
この数字が、できないこと
ATK指数には限界がある。はっきり書いておく。
炎の美しさは測れない。操作性も、薪の入れやすさも、灰の始末のしやすさも、数字にならない。ATK指数が測っているのは「暖かさの質」だけだ。ストーブを選ぶ理由は暖かさだけではないことを、900件の設置を見てきた当社がいちばんよく知っている。
数字で見えるものと、体で感じるもの。両方を並べて初めて、あなたに合う一台が見えてくる。
