冬の暖房をエアコンだけでまかなっているご家庭は、岩手でも少なくありません。灯油を買いに行く手間を省きたい、石油ストーブのにおいが苦手、オール電化の家に住んでいる。理由はさまざまですが、真冬の朝に部屋が暖まりきらない、足元が冷える、という悩みは多くの方に共通しています。
そこで考えたいのが、エアコンに何を「足す」かです。候補はいくつもあり、それぞれに得意なことと、引き受けなければならない手間があります。この読みものでは、エアコンだけの冬から一歩進もうとする方に向けて、代表的な四つの選択肢を同じ物差しで並べ、そのなかでペレットストーブがどのような家に向くのかを整理します。
エアコンだけの冬が、寒く感じられる理由
エアコンのカタログに載る暖房能力は、日本産業規格に基づき外気7℃・室内20℃の条件で測った値です。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、盛岡の1月の平均気温はマイナス1.6℃、日最低気温はマイナス5.2℃で、朝の冷え込みは試験の条件を大きく下回ります。エアコンは外の空気から熱を汲み上げる仕組みのため、外が冷えるほど出せる熱が減り、室外機の霜を溶かすあいだは暖房が止まります。
もうひとつは暖め方の違いです。エアコンは温めた空気を吹き出して部屋を暖めるため、暖かい空気は天井へたまり、床の近くが冷えやすくなります。この仕組みは「エアコンで足元が寒い理由」で詳しく扱いました。足す暖房を選ぶときは、この二つ、つまり真冬の朝に熱が足りないことと、足元が冷えることを、どう補えるかが判断の軸になります。
足す暖房の候補は、四つあります
エアコンのある家に暖房を足す方法として、ここでは四つを取り上げます。エアコンそのものを寒冷地向けの機種に替えるか台数を増やす方法、石油ストーブや石油ファンヒーターを置く方法、薪ストーブを据える方法、そしてペレットストーブを据える方法です。
比べる物差しは、真冬の朝に出せる熱、足元の暖かさ、日々の手間、工事の大きさ、停電のときの動き、の五つにします。費用は家ごとの条件で大きく変わるため、ここでは考え方だけにとどめ、具体的な比べ方は「エアコンとペレットストーブの暖房費」に譲ります。
エアコンを替える、増やす
いちばん手軽なのは、エアコンを寒冷地向けの機種に替える方法です。低い外気温でも能力が落ちにくいよう圧縮機や回路が工夫されており、室外機を雪から守る架台や、霜を溶かす仕組みにも配慮されています。燃料の買い置きが要らず、夏の冷房もこなせる点は大きな長所です。違いの詳細は「寒冷地エアコンと標準エアコンの違い」で整理しています。
一方で、外気から熱を汲む仕組みそのものは変わらないため、冷え込みが強いほど能力と効率は下がり、霜取りによる中断もなくなりません。温風で暖めるので足元の冷えも残りやすく、停電すれば止まります。台数を増やせば熱の量は補えますが、冬の電気の使用量と契約の容量もそれだけ大きくなります。
石油ストーブ・石油ファンヒーター
灯油の暖房は、東北の多くの家庭で長く使われてきました。置くだけで使え、外気温に関係なく強い熱を出せます。石油ストーブには電気を使わない機種もあり、停電への備えとして持っている方もいます。
気をつけたいのは、室内に置く開放式の機器が、部屋の空気を使って燃え、燃えたあとのガスもそのまま室内に出すことです。メーカーの取扱説明書では、使用中は1時間に1〜2回、1〜2分ほど換気するよう求めており、換気が足りないと不完全燃焼による一酸化炭素中毒のおそれがあると注意しています。燃焼の空気を屋外から取り込み、排気も屋外に出すFF式であれば室内の空気は汚れませんが、壁に給排気筒を通す工事が要ります。いずれの方式でも、灯油の購入と給油、保管の手間は残ります。
薪ストーブ
薪ストーブは、薪を燃やした熱を鋳物や鋼板の本体から放ち、部屋の壁や床、人の体を直接暖めます。外の気温に左右されず、運転に電気を使わないため、停電の夜にも暖かさが保たれます。炎の大きさと揺らぎを楽しめることも、ほかの暖房にない魅力です。
その代わり、屋根や壁を抜いて煙突を立てる工事が必要で、四つの中では工事がいちばん大きくなります。燃料の薪は、割ってから一冬以上乾かし、含水率を20%以下まで下げてから使うのが基本で、置き場と段取りが欠かせません。火の番や灰の始末も含めて、火と付き合う時間そのものを楽しめるかどうかが分かれ目になります。当社の薪ストーブのページでは、取り扱う機種と工事の流れをご紹介しています。
ペレットストーブ
ペレットストーブの燃料は、製材の端材や林地に残された木などを細かく砕き、圧縮して小さな円柱状に固めた木質ペレットです。日本木質ペレット協会の品質規格では、上位の区分の発熱量を1kgあたり16.5メガジュール以上、含水率を10%以下と定めています。乾いた燃料が一定の形でそろっているため、本体のタンクに入れておけば、機械が少しずつ燃焼室へ送り込み、自動で点火し、設定した温度を保つように燃やし続けます。タイマーを使えば、起きる前に部屋を暖めておくこともできます。
燃えたあとのガスは、ファンで排気筒から屋外へ送り出します。燃焼の空気も屋外から取り込むFF式にすれば、室内の空気を汚しません。屋根まで煙突を立てずに、外壁に排気筒を通して設置できるため、薪ストーブより工事の規模を抑えられます。当社で扱う機種の出力は、たとえばウォームアーツのRS-miniの最大3.1kWから、SS-10の最大12.5kWまで幅があり、部屋の広さに合わせて選べます。外気温に出力が左右されず、炎の見える窓と本体からの輻射熱で、エアコンとは違う暖かさが得られます。
燃料は国内でもつくられています。林野庁のまとめでは、2024年の木質ペレットの国内生産量は15.2万トン、工場は123か所で、岩手県では4工場が約8,400トンを生産しました。一方、点火や燃料の送り、ファンに電気を使うため、停電すると止まります。備え方は「停電した夜の暖房」で扱いました。毎日の燃えかすの掃除と、シーズン後の点検も欠かせません。
暮らしに照らして、選んでいただくために
四つを並べると、それぞれの立ち位置が見えてきます。手間の少なさではエアコンの買い替えが、炎と停電への強さでは薪ストーブが、置くだけの手軽さと熱の強さでは石油の暖房が際立ちます。ペレットストーブは、外気温に左右されない熱と炎のある暮らしを、薪ストーブよりずっと少ない手間で得られる位置にあります。
とくに向いているのは、共働きで朝晩だけ居間を暖めたいご家庭、薪の調達や薪割りは難しいけれど火のある暮らしに惹かれる方、灯油のにおいや換気の手間を減らしたい方です。反対に、燃料を置く乾いた場所がまったく取れない場合や、外壁に排気筒を通せない場合は、別の方法が合っているかもしれません。
どの方法を選んでも、エアコンは夏の冷房と、春や秋の短い暖房のために残しておくと、季節ごとの使い分けがしやすくなります。ペレットストーブに心が傾いたら、次は置き場所や電源、燃料の置き場を順に確かめていく段階です。その手順は「エアコン暖房からペレットストーブへ」にまとめました。ショールームでは、実際に火の入ったペレットストーブの前で、ご自宅の条件をうかがいながら一緒に考えます。
関連するページ:煙突について・盛岡・岩手の薪ストーブ専門店・輻射式と対流式
参考:盛岡の気温は気象庁の平年値(1991〜2020年)、開放式石油ストーブの換気の目安はメーカーの取扱説明書(トヨトミ RS-S23C、PDF)、開放式とFF式の違いは板橋区「室内の空気環境」、ペレットの発熱量と含水率は日本木質ペレット協会の品質規格、国内生産量は林野庁「令和6年における木質粒状燃料(木質ペレット)の生産量等について」、機種の出力は当社のウォームアーツの各機種のページによる。
エアコン暖房の実力 カタログの数字の正体と、外気温ごとの能力低下をまとめています。 ペレットストーブのページ トヨトミ・ウォームアーツ・ハーマン・エディルカミン。国産からイタリア製まで。 ペレットストーブの費用 本体・排気筒・炉台・工事の内訳。費用の目安を先にお示しします。