岩手県宮古市の三陸海岸に、青い海と白い岩がつくる、息をのむ景色があります。浄土ヶ浜(じょうどがはま)。とがった白い岩が海から林立し、そのあいだに緑の松、足元には澄んだ青い海。天気のよい日には海の色が藍から翠へとうつろい、白い岩がいっそうまばゆく際立ちます。極楽浄土になぞらえて名付けられた、三陸を代表する景勝地です。三陸復興国立公園の中心をなす浜としても知られています。今日は北東北・岩手編、この海辺と、火の話をします。
極楽浄土と、名付けた和尚
浄土ヶ浜の名は、今からおよそ三百年前、天和のころ(1681年から1684年)にさかのぼります。宮古山常安寺の霊鏡竜湖(れいきょうりゅうこ)和尚が、この浜のあまりの美しさに「さながら極楽浄土のごとし」と感嘆し、それが名の由来になったと伝えられます。白い岩、青い海、緑の松。その清らかな取り合わせは、たしかにこの世のものと思えぬ静けさをたたえています。日本の渚百選にも選ばれた、名の通りの浜です。
白い岩は、火が生んだ石
浄土ヶ浜の白くとがった岩は、流紋岩という火山岩です。はるか昔、地下のマグマが冷えて固まってできた石で、白い色は石に含まれる成分によるものです。火が生んだ石が、長い年月の波に削られ、いまの鋭い姿になりました。火の営みと、水の営みが、気の遠くなる時間をかけて、この白い岩を彫り上げたのです。松の緑がその白に映え、季節や光によって海の青を変えながら、飽きることのない景色を見せてくれます。
青の洞窟へ、小さな舟で
浄土ヶ浜の楽しみのひとつが、「さっぱ船」と呼ばれる小さな舟での遊覧です。船頭の操る舟は岩のすきまをぬって進み、「青の洞窟」と呼ばれる海食洞へと向かいます。洞の中から外の光を見ると、海面が神秘的な青に輝く。夏にはウミネコが舟について飛び、餌を求めて羽を広げます。海の上から見上げる白い岩は、浜から眺めるのとはまた違う迫力で、この浜の奥行きを教えてくれます。岩と岩のすきまを舟がくぐるたび、光と影がめまぐるしく移り変わり、海の表情の豊かさに、思わず息をのみます。
三陸の海は、恵みと祈りの海
浄土ヶ浜のある三陸海岸は、豊かな漁場として知られる、恵みの海です。同時に、2011年の津波で大きな痛みを負った海でもあります。浄土ヶ浜も被害を受けましたが、人々の手で美しい姿を取り戻し、いまも変わらず訪れる人を迎えています。海の恵みに感謝し、海と共に生きてきた三陸の人々にとって、この浜は祈りの場所でもあります。静かな浜辺に立つと、海の大きさと、人の営みの尊さが、胸に迫ります。
朝日を、迎える浜
太平洋にひらけた浄土ヶ浜は、朝日を迎える浜でもあります。水平線からのぼる光が白い岩を淡い桃色に染め、松の影を長くのばし、海面をきらきらと照らしていく。とりわけ元日の初日の出には、暗いうちから多くの人が浜辺に集まり、新しい年の最初の光を静かに待ちます。冷たい潮風の中で、体を縮めながら見つめる朝日の温かさは、格別のものです。海のかなたから昇る火が、白い岩の浜を少しずつあたためていく。光そのものが、この世のものと思えぬ静けさに満ちる。浄土ヶ浜の朝は、名の通りの清らかさをたたえています。
海の青と、火の温もりと
白い岩と青い海の清らかさは、心を洗ってくれます。そして冷たい海風にさらされた体には、火の温もりがいっそう恋しくなる。冷と温を行き来するほど、温かさは深くしみる。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターや薪ストーブで、そんな火と蒸気のある暮らしをお手伝いしています。三陸の海を旅した帰りに、火の話を店でどうぞ。



