秋のフィンランドの森は、きのこの宝庫になります。人々はかごを手に森へ分け入り、地面や倒木の上に顔を出したきのこを、一つ一つ摘んでいく。きのこ狩り、フィンランド語でシエネスティスは、この国の秋を代表する楽しみです。摘んだきのこは食卓を豊かにし、冬の保存食にもなります。今日は、北欧の秋の森と、きのこ狩りの話をします。

森が、食べものであふれる季節
フィンランドの短い夏が終わり、空気がひんやりしはじめる九月ごろ、森は一年でいちばんにぎやかな季節を迎えます。雨と気温がちょうどよくなると、森じゅうにきのこが次々と顔を出す。黄色いあんず茸のカンタレッリ、香り高いポルチーニ。フィンランドの人はどのきのこが食べられるかを子どものころから教わり、家族でかごを持って森へ出かけます。森の恵みを自分の手で集める喜びは、この国の秋の何よりのごちそうです。
きのこと、ベリーの森
秋の森がもたらすのは、きのこばかりではありません。同じころ、森の地面や湿原には、色とりどりのベリーが実ります。甘ずっぱいこけももプオルッカ、青い実のビルベリー、湿原に育つ黄金色のクラウドベリー。フィンランドの人はきのこと同じように、かごを提げてベリーを摘みにでかけます。摘んだ実はジャムや果実の飲みものにし、肉料理にそえたり、冷凍して長い冬にそなえたりする。とりわけ北のラップランドでは、秋になると森じゅうの木々が赤や黄に燃えるように色づき、この紅葉をルスカと呼んで、人々は短い秋の輝きを惜しむように歩きます。摘みたてのベリーの甘ずっぱさは、その年の秋の記憶そのものです。
だれもが、森に入れる
フィンランドできのこ狩りがこれほど身近なのは、自然享受権という考え方があるからです。森の持ち主がだれであっても、人はそこに入り、きのこやベリーを自由に摘んでよい。そのかわり、自然をこわさず、あとを荒らさず、静かに恵みを分けてもらう。この権利のおかげで、都会に住む人も、休日には気軽に森へ出かけ、季節の実りを手に入れられます。森はみんなのもの、という感覚が、暮らしの根っこに根づいているのです。
摘んで、食べて、たくわえる
摘んできたきのこは、その日のうちに料理して味わいます。バターでいため、生クリームをからめてパンにのせたり、あたたかなスープに仕立てたり。フィンランドの食卓に、森の香りがそのまま運ばれてきます。食べきれないぶんは、天日で乾かしたり、塩や酢に漬けたりして、長い冬にそなえてたくわえる。夏と秋の恵みを、こつこつと冬へ蓄えていく。この保存の暮らしは、厳しい冬を持つ北の国で、人々が代々受け継いできた知恵です。
岩手の秋の、山の恵み
岩手もまた、秋の山の恵みが豊かな土地です。里山では昔から、きのこや木の実、山の幸を分けてもらう暮らしが続いてきました。もっとも、きのこは見分けが難しく、危ないものも混じります。地元の詳しい人と一緒に、確かなものだけをいただくのが安心です。森を歩いて季節の実りを探す楽しみは、北欧も岩手も変わりません。かごを提げて秋の山へ入る時間は、それだけで心を豊かにしてくれます。土の匂いと落ち葉を踏む音の中で季節を全身に感じるひとときは、何ものにも代えがたい秋の贈りものです。
秋の恵みを、火のそばで味わう
森で集めた秋の恵みを、あたたかい火のそばで味わう。この幸福は、北欧でも岩手でも同じです。岩手・盛岡のD'STYLEは、天板で煮込みもできる薪ストーブや、ハルビアのサウナヒーターで、季節の実りを楽しむ暮らしをご提案しています。秋の森と火のある食卓の話も、店でどうぞ。
写真: Arto J (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



