フィンランドの夏から秋にかけて、森は宝の山になります。ブルーベリー、コケモモ、そして黄金色のクラウドベリー。人々はかごを手に森へ入り、野生のベリーを摘みます。今日はフィンランド編、森のベリー摘みと、その健やかな恵みの話をします。
だれでも、摘んでよい
フィンランドには「自然享受権」という考え方があり、森が私有地であっても、だれでも自由に歩き入り、野生のベリーやきのこを摘むことが認められています。他人の暮らしを乱さず、自然を傷つけなければ、森の恵みはみなのもの。夏の終わりから秋にかけて、老いも若きも、かごやバケツを持って森へ出かけます。ベリー摘みは、フィンランドの人にとって、季節が来れば自然と体が動く、暮らしの一部です。
ブルーベリーと、コケモモ
フィンランドの森で摘まれるベリーの代表が、野生のブルーベリーと、コケモモです。野生のブルーベリーは、栽培種より小粒で、味も香りも濃い。実だけでなく果肉まで青紫に染まっているのが、野生種の特徴です。コケモモは、リンゴンベリーとも呼ばれる赤い小さな実で、酸味が強く、煮てジャムやソースにします。肉料理に添えるコケモモのソースは、フィンランドの食卓に欠かせない、甘酸っぱい名脇役です。
湿地に実る、黄金のベリー
ベリーの中でも、とりわけ珍重されるのが、クラウドベリーです。フィンランド語でラッカと呼ばれるこの実は、湿地帯にだけ実る、オレンジがかった黄金色のベリーです。採れる場所も量も限られ、摘むのに手間がかかるため、「森の黄金」とも呼ばれます。ほのかな酸味と独特の香りを持ち、ジャムやデザートに使われる、高級な恵みです。よい採り場は家族の秘密とされることもあるほど、大切にされています。
冬に備えて、蓄える
夏に摘んだベリーは、その場で味わうだけでなく、冷凍したり、ジャムやジュースにしたりして蓄えられます。長い冬のあいだ、生の果物が乏しくなる時期に、夏の恵みが食卓をいろどる。凍らせたベリーを冬に取り出せば、太陽の光をたっぷり浴びた夏の味と栄養が、そのままよみがえります。森の恵みを蓄えて冬を越す暮らしは、四季のめぐりに寄り添う、北の国の理にかなった知恵です。
北の暮らしを、支えた実
森のベリーは、ただのおやつではありませんでした。日の光が乏しく、野菜の育ちにくい北の国で、ベリーは体に欠かせない栄養の、貴重な源だったのです。とりわけ黄金色のクラウドベリーはビタミンを豊かに含み、船乗りや北極圏の人々を、体をむしばむ病から守ってきたと伝えられます。ラップランドに暮らす先住民サーミの人々も、夏に摘んだ実を蓄え、長い冬の食卓をいろどってきました。摘んだベリーは、暖かい室内で薪の火にかけ、コトコトと煮つめてジャムやジュースにする。夏の森の恵みが、火の力を借りて、冬まで保たれる保存食に姿を変えるのです。森が実らせ、火が守り、人が冬を越す。北の暮らしは、こうして自然の恵みと火の温もりの両方に、静かに支えられてきました。一粒のベリーには、短い夏の太陽と、それを蓄える人の知恵が、まるごと詰まっているのです。
サウナのあとに、森の実を
ベリーは、ビタミンや体によい成分を豊かに含みます。汗をかいたサウナのあと、冷やしたベリーやそのジュースで水分と栄養を補うのは、フィンランドらしい、体にやさしい習わしです。森が育てた実で体をうるおす心地よさは、格別。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、季節の恵みとサウナのある暮らしをお手伝いしています。北欧の森の話も、店でどうぞ。



