雪の夜、薪ストーブの前で観る映画は格別です。今日は、サウナ好きのための映画案内。観終わったあと、確実にサウナに入りたくなる作品たちの話です。ネタバレはしませんので、安心してどうぞ。

『サウナのあるところ』という傑作
サウナ映画の金字塔といえば、フィンランドのドキュメンタリー『サウナのあるところ』(原題 Miesten vuoro、英題 Steam of Life、2010年)です。監督はヨーナス・ベリグホールとミカ・ホタカイネン。内容は、ただそれだけの映画です。フィンランドの男たちが、サウナに入りながら、ぽつり、ぽつりと自分の人生を語る。派手な事件は何も起きません。ところが、これが沁みる。ふだんは寡黙な男たちが、蒸気の中でだけ、家族のこと、後悔のこと、涙なしには語れない記憶を、静かに打ち明けていく。裸の体から、鎧が一枚ずつ脱げていくような九十分。サウナが「心の鎧を脱ぐ場所」であることを、これほど正面から撮った映画はありません。サウナ好きなら必修、サウナ未経験の方には最高の入門編です。(サウナで本音が出る話は、夫婦の話やこの映画が証明しています。)
カウリスマキと、フィンランドの空気
サウナそのものが主役でなくても、フィンランド映画には、あの国の空気が詰まっています。アキ・カウリスマキ監督の作品群の、寡黙で、不器用で、それでも互いを見捨てない人々。カンヌで大きな賞に輝いた『過去のない男』や、近作『枯れ葉』を観ると、長い冬と、コーヒーと、ときどきサウナのある暮らしが、静かに立ちのぼってきます。彼の映画の登場人物たちの「多くを語らない優しさ」は、サウナの静けさの文化と、同じ根っこから生えています。フィンランド好きになったら、一本ずつ順に観ていく楽しみがあります。(沈黙の文化は、こちら。)
フィンランドを旅する、日本映画
日本から、フィンランドの空気に会いにいける映画もあります。荻上直子監督の『かもめ食堂』(2006年)です。ヘルシンキで小さな食堂を営む日本人女性の物語で、サウナが主役というわけではありませんが、おにぎりとコーヒー、静かな時間、北欧の光の描き方が、ほんとうに気持ちいい。観たあとに、フィンランドと、あの国の暮らしにまつわるすべてが、恋しくなります。派手さのない映画をゆっくり味わえるようになったら、それはもう、サウナ的な時間の楽しみ方が体に入った証拠。あわせて観ると、旅心とサウナ心が同時に温まります。
そして、わが国の『サ道』
日本代表は、やはりドラマ『サ道』。タナカカツキさんの漫画が原作で、ととのいの多幸感を、あそこまで幸せな顔で伝えた映像はありません。「ととのう」という言葉が全国に広まる後押しをした立役者でもあります。詳しくはサ道とブームの話に書きましたが、映画やドラマの力がひとつの文化を根づかせた実例として、後世に残る作品だと思います。観たあとの一回のサウナが、いつもの倍おいしくなる。それが、良いサウナ作品の証拠です。
観たら、入る。これが正しい鑑賞法
サウナ映画の正しい鑑賞法は、ひとつです。観終わったら、そのまま自分のサウナへ。スクリーンの中の蒸気を、三十分後に自分の肌で浴びられる。この続きができるのが、自宅サウナのある家の映画の夜です。火のそばで映画、サウナでととのい、白湯で締め。エンドロールが終わったら、席を立って、蒸気の中へ。完璧な夜番組の完成です。(火のそばの夜の話は、こちら。)
あなたの家を、上映館つきサウナに
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、映画の続きが浴びられる暮らしをお手伝いしています。おすすめの一台のご相談、いつでもどうぞ。まずは今夜、『サウナのあるところ』を。
写真: aoiaio (Wikimedia Commons, CC BY 3.0)



