フィンランドの短い秋、森と大地が一斉に色づく、まばゆい季節があります。ルスカと呼ばれる紅葉です。夏の白夜が終わり、日ざしがみるみる短くなる九月ごろ、北の大地は一気に秋の色に包まれます。日本の紅葉が木々の葉を中心に色づくのに対し、ルスカは、地をはう小さな草や苔まで赤や黄に染まり、大地そのものが燃えるように輝く。空の青、白樺の白い幹、そして足もとの赤。その色の重なりは、北の国だけがもつぜいたくです。今日は、北の国の秋を彩る、ルスカの話をします。
大地ごと、色が変わる
ルスカがもっとも美しいのは、北のラップランドです。夏が終わり、朝晩の冷え込みが強まると、白樺は黄金色に、ナナカマドの仲間は燃えるような赤に染まります。木だけではありません。地面をおおうコケモモやブルーベリーの低い葉、苔までもが赤くいろどられ、山の斜面が一枚の大きな絵のように輝く。木の紅葉というより、大地全体の紅葉。これがルスカの、日本の秋とはひと味違うところです。
ひとときの、はなやぎ
ルスカの美しさは、長くは続きません。北の秋は駆け足で、色づいたと思うまもなく、木々は葉を落とし、やがて雪の季節がやってきます。だからこそ、フィンランドの人はこの短いはなやぎを見のがすまいと、こぞって森や山へ出かけます。ルスカのころのハイキングは、秋の大切な行事です。色づいた大地を歩き、澄んだ空気を吸い、遠い山なみをながめる。うつろいゆく季節を体いっぱいに味わう、ぜいたくな時間です。澄んだ空の下、足もとで枯れ葉を踏む音までが、秋からの贈りもののように感じられます。短いからこそ、その一日一日が惜しく、心にくっきりと刻まれます。
冬支度の、合図として
ルスカは、美しいだけの季節ではありません。この紅葉は、長く厳しい冬がすぐそこまで来ているという合図でもあります。色づく大地を見て、人々は薪を積み、食べものをたくわえ、家をあたためる支度をととのえます。はなやかな紅葉と、冬への備え。この二つがひとつに結びついているところに、北の暮らしのたくましさがあります。うつくしさを愛でながら、静かに手を動かして冬にそなえる。ルスカは、季節の変わり目を告げる旗印です。
岩手の紅葉と、重ねてみる
岩手の秋もまた、目をうばう紅葉に彩られます。八幡平や栗駒の山肌、奥入瀬に連なる渓谷は、赤や黄に染まって多くの人を惹きつけます。山の上から里へと、紅葉はゆっくり下りてきて、里が色づくころには、朝の空気に冬の気配がまじりはじめる。紅葉が里まで下りたら、そろそろ薪ストーブに火を入れる季節です。色づく山は、フィンランドでも岩手でも、あたたかい火のはじまりを告げてくれます。
森の実りを、摘みながら
ルスカのころの森は、色づくだけでなく、実りの季節でもあります。地面をおおうコケモモやブルーベリーの茂みには、青や赤の小さな実がたわわに実り、人々はかごを手に森へ入って摘みとります。フィンランドには、だれの森でも木の実やきのこを摘んでよいという古くからの習わしがあり、秋の森歩きは暮らしに根づいた楽しみです。摘んだ実はジャムや保存食になり、長い冬のあいだの食卓を彩ります。色づく大地を歩き、実を摘み、冬にそなえる。ルスカの季節は、目だけでなく、手と舌でも味わう秋なのです。
色づく季節に、火を入れる
紅葉が深まり、朝夕が冷え込みはじめたら、火の季節のはじまりです。岩手・盛岡のD'STYLEは、薪ストーブやハルビアのサウナヒーターで、色づく季節から春までを、あたたかく楽しむ暮らしをご提案しています。秋の紅葉と火のはじまりの話も、店でどうぞ。
写真: WikiLucas00 (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



