フィンランドの国旗は、白地に青い十字を描いた、清潔で静かなデザインです。シニリスティリップ、青い十字の旗と呼ばれます。青い十字が旗の全体に伸び、その中心が旗ざお側に少し寄っているのが、北欧の旗に共通する形です。派手な紋章も文字もなく、ただ二つの色と十字だけで成り立っています。この二つの色には、フィンランドの自然そのものが写し取られています。今回は、一枚の旗から読み解く、この国と自然の深い結びつきの話です。
1918年、独立とともに
現在の青い十字の旗が正式に定められたのは、1918年五月のことでした。前年の1917年十二月、ロシア革命の混乱のさなかにフィンランドは独立を宣言し、その翌年に、新しい国のしるしとして青い十字の旗を選びました。旗の左に寄った十字は、北欧十字と呼ばれる形です。スウェーデンやノルウェー、デンマーク、アイスランドの旗とも響き合い、この国が北欧の一員であることを静かに示しています。長くほかの国に治められてきた土地が、ようやく自らの顔を持った瞬間でした。
青は、湖と空の色
旗の青は、フィンランドに無数に散らばる湖と、その水面に映る空の色だといわれます。この国には、大小あわせておよそ18万を超える湖があり、「千の湖の国」とも呼ばれます。十九世紀の詩人トペリウスは、フィンランドを表す色として、湖と空の青、冬の雪の白がふさわしいと早くから説いたと伝えられます。夏、沈まない太陽の下で、澄んだ青空を映してきらめく湖面。その光景こそが、フィンランドの人々にとっての故郷の色です。旗の青を見るたびに、彼らは森と水に囲まれた国土を、心に思い起こすのです。
白は、雪の色
白は、長い冬に国土をおおう雪の色です。北部では一年のうち半年ほども雪が残り、雪とともに暮らすフィンランドにとって、白は厳しさであると同時に、清らかさと静けさの象徴でもあります。太陽が地平線から昇らない極夜の日々、人々は雪あかりのほのかな明るさを頼りに冬を越えてきました。雪におおわれた白い森、凍った湖の上に降り積もる新雪。青と白、この二色だけで、フィンランドの四季の骨格が言い表せてしまう。自然が、そのまま国のしるしになっているのです。
自然を、国のかたちに
国旗に自然の色を選ぶという発想には、フィンランドの人々の自然観がにじんでいます。彼らにとって自然は、征服する対象ではなく、ともに生きる相手です。この国には、誰の土地であっても森や湖を歩き、木の実やきのこを摘んでよいとする「自然享受権」という古い慣わしがあります。森で実を摘み、湖で泳ぎ、雪の中を歩く。そうした暮らしの延長線上に、国の象徴も置かれました。青と白の旗は、自然と人が地続きであるという、この国の哲学の静かな宣言でもあります。
サウナもまた、自然の一部
青い湖と白い雪のあいだで育った文化が、サウナです。熱い蒸気で汗を流し、火照った体のまま、夏は青い湖へ、冬は白い雪へ飛び込む。旗が描く青と白の世界に、人が全身で溶け込む行いこそ、フィンランド式のサウナの真髄です。二色のあいだを行き来するその心地よさは、言葉にせずとも体が覚えていくものです。国旗の二色は、この国のサウナの楽しみ方そのものを、静かに指し示しているのです。
盛岡の四季と、青と白
青い水と白い雪という自然のリズムは、岩手・盛岡の四季にもよく似合います。夏は清流で、冬は雪の中で体を冷やし、火の部屋で温め直す。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、四季の自然と結んだサウナ暮らしをお手伝いしています。フィンランドの自然の話も、店でどうぞ。
写真: Ninara (Wikimedia Commons, CC BY 2.0)



