マンションに薪ストーブは無理でも、ペレットストーブなら話は別です。よく「集合住宅ですが、ストーブは入りますか」というお問い合わせをいただきます。答えは条件次第ですが、戸建てでなくても火のある暮らしを始めている方は、実際にいらっしゃいます。
なぜマンションでも置けるのか
薪ストーブには屋根の上まで伸ばす煙突が必要です。集合住宅でこれを通すのは、構造的にまず不可能です。ところがペレットストーブの排気は「FF式」、つまり強制給排気方式です。ファンの力で外気を取り込み、燃焼ガスを排気筒から外へ押し出す。排気筒の径は60mm程度で、壁に穴を開けて外に出すだけで済みます。
エアコンの室外機を取り付けるのと、工事の規模としては近い。屋根まで煙突を立てる必要がないので、マンションの一室でも設置できる可能性が出てくるわけです。
もうひとつ大きいのは、電源があれば動くという点です。ペレットストーブはコンセントから電気を取り、着火も燃料供給もファンの回転もすべて自動で行います。薪ストーブのように手で火を起こして薪をくべる作業がありません。
煙と匂いの実態
正直に申し上げます。排気がゼロではありません。壁から出た排気筒の先から、燃焼ガスは外に出ます。ただ、ペレット燃料の燃焼は非常にクリーンです。薪を燃やしたときのような白い煙や強い匂いは、ほぼ出ません。
着火の直後と消火の直後に、ごく薄い匂いが出ることはあります。それでも、隣の部屋でバーベキューをされるのとは比べものになりません。台所の換気扇から出る調理の排気と、同程度かそれ以下と考えていただいてよいと思います。
排気筒の向きと位置についてはしっかり計画します。隣戸のベランダや窓に直接向けない。排気が滞留しない場所を選ぶ。当たり前のことですが、集合住宅では一戸建て以上にこの配慮が要ります。
安全装置のこと
火を使う道具をマンションに入れるとなれば、安全性への不安は当然です。ここは数字と仕組みで説明します。
現在の国産ペレットストーブには、以下の安全装置が標準で搭載されています。
感震自動消火装置。震度5相当の揺れを感知すると、燃料の供給を即座に止めて消火に入ります。灯油ストーブの対震自動消火装置と同じ考え方です。地震の多い日本では、これがなければそもそも売れません。
過熱防止装置。本体や排気温度が異常に上がったとき、自動で運転を停止します。
逆圧防止装置。強風などで排気筒から外気が逆流した場合に、燃焼を停止する仕組みです。集合住宅の高層階では風が強くなることがありますが、この装置が対応します。
シモタニのペレットストーブは、これらをすべて備えています。安全装置は「付いているかどうか」ではなく「きちんと作動するかどうか」が大事ですから、信頼できるメーカーの機種を選んでください。
燃料の保管
薪ストーブを諦める理由のひとつに「薪を置く場所がない」があります。薪は乾燥させるために屋外に積んでおく必要があり、マンションのバルコニーでは現実的ではありません。
ペレット燃料は、10kgの袋に入った小さな木の粒です。押し入れの一角やクローゼットの隅に積んでおける。湿気さえ避ければ、室内でも問題なく保管できます。
10kgの袋1つで、およそ8時間から10時間は燃え続けます。毎日8時間使うとして、ひと月に30袋、300kg。段ボール箱2つ分くらいの場所があれば、2週間分はストックできます。配達してくれる業者もありますから、まとめ買いして少しずつ使うのが普通です。
確認しておくこと
ここからが、集合住宅ならではの話です。ペレットストーブそのものは置けても、建物のルールが許さなければ設置できません。
管理規約の確認。分譲マンションには管理組合があり、共用部分の改変には承認が必要です。排気筒を壁から外に出す工事は、外壁面を貫通するため「共用部分の改変」に当たる場合があります。まずは管理組合に相談し、規約を確認してください。賃貸であれば大家さんの許可が要ります。
床の耐荷重。ペレットストーブの重量は機種により40kgから100kg程度です。一般的なマンションの床は1平方メートルあたり180kgに耐える設計になっていますから、ストーブ単体で床が抜けることはまずありません。ただし、設置場所の下地や構造は事前に確認しておくべきです。
排気筒の経路。外壁までの距離が遠いと、排気筒の取り回しが複雑になります。窓のそばに設置して、壁ではなく窓パネルを使って排気を出す方法もあります。現場を見なければ判断できないことが多いので、ここは私たちのような施工業者に相談していただくのがいちばん確実です。
すべてのマンションに入るとは言いません。管理規約で火気使用が一切禁止されている物件もありますし、排気筒を出せる壁面がない間取りもあります。無理なものは無理だと、最初にはっきり申し上げます。
火のある暮らしを諦めていた方こそ、一度ご相談ください。「うちのマンションでは無理だろう」と思い込んでいた方が、実は条件が揃っていたということは、少なくありません。



