フィンランドの北、ラップランドの雪原を、群れをなして歩く動物がいます。トナカイです。フィンランド語でポロと呼ばれるこの動物は、北の暮らしと分かちがたく結びついてきました。今回は、トナカイとともに生きる、ラップランドの暮らしの話です。
二十万頭が、雪原を歩く
フィンランドのラップランドには、およそ二十万頭ものトナカイが暮らしているといわれます。その多くは、柵に囲われているわけではなく、広大な森や雪原を自由に歩き回っています。夏は緑の大地で草をはみ、冬は雪をかき分けて地衣類を探す。人と自然のあいだを行き来しながら、トナカイは北の風景の、なくてはならない一部として生きています。秋になると、散らばった群れを大きな柵に集めて数える囲い込みが各地で行われ、これは北の一年の大きな節目になります。白い雪原に、群れの吐く息だけが白くたなびく光景は、北の冬そのものの姿です。トナカイのいない北の暮らしは思い描けないほど、その存在は風景に溶けこんでいます。
ポロンホイトという、生業
トナカイを飼い、その恵みで暮らしを立てることを、ポロンホイトと呼びます。これは古くからサーミの人々をはじめとする、北の住民の大切な生業でした。トナカイは、肉や毛皮を人々に与え、厳しい冬を越すための糧となります。群れを見守り、季節ごとの移動を助け、必要な分だけをいただく。自然と人との、長い付き合いの形がそこにあります。どのトナカイがだれのものかは、耳に切り込まれた小さなしるしで見分けます。この耳のしるしは家ごとに受け継がれ、放し飼いの群れの中でも、持ち主がひと目で分かる知恵です。
冬を越す、力強い体
トナカイは、北極圏の厳しい冬を生き抜くために、驚くほど優れた体を持っています。密に生えた毛は空気を含み、氷点下の寒さから身を守ります。幅広のひづめは、雪の上を歩き、雪をかき分けて餌を掘り出すのに役立ちます。冷たい空気を鼻の中で温めてから吸い込む仕組みまで備えている。歩くたびに足首の腱が、かちりかちりと乾いた音を立てるのも、トナカイならではの特徴です。吹雪の中でも、この音をたよりに仲間どうしがはぐれずにいられるといわれます。北の自然が、長い時間をかけて磨き上げた、たくましい生き物です。
食卓を支える、恵みの肉
トナカイの肉は、ラップランドの食卓に欠かせない食材です。中でも、薄く削いだ肉をバターで炒め煮にした料理は、ポロンカリスツュスと呼ばれ、マッシュポテトとこけももの実をそえて供される、地域を代表する郷土の味です。脂が少なく滋味深いその肉は、長い冬を生きる人々の体を支えてきました。自然の中で育った命を、余すことなくいただく。北の食文化には、生き物への感謝が深く根づいています。
そりを引く、冬の使者
トナカイは、雪の季節に人や荷物を運ぶ役目も担ってきました。そりを引いて雪原を進む姿は、北の冬を象徴する光景です。世界中で親しまれる、そりを引く冬の使者の物語も、この北極圏の暮らしから生まれました。ラップランドでは、凍った川や雪原でトナカイぞりのレースが開かれ、冬の風物詩として親しまれています。ラップランドは、そうした冬の夢の舞台として、今も世界中の人を惹きつけています。トナカイは、北の冬の主役なのです。
雪の国で、火を囲む
トナカイが歩く雪原の暮らしは、火の温もりと隣り合わせです。厳しい寒さの中でこそ、火と蒸気のありがたみは深まります。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、雪国の冬をゆたかにする火の時間をお手伝いしています。北欧の自然や暮らしの話も、店でどうぞ。
写真: Ninara (Wikimedia Commons, CC BY 2.0)



