フィンランドの北の果て、ラップランドと呼ばれる地に、古くから暮らしてきた人々がいます。サーミです。北欧の北部一帯に住む先住民で、独自の言葉と歌、暮らしの文化を今に伝えています。太陽が沈まない夏の白夜と、昇らない冬の極夜。その極端な光のもとで、彼らは長い歳月を生き抜いてきました。冬の夜空には、しばしばオーロラがゆらめきます。サーミの人々は古くから、この光にさまざまな物語を重ねてきました。今回は、北極圏に生きるサーミの文化の話です。
サープミという、国境のない大地
サーミの人々が暮らす地域は、サープミと呼ばれます。それはフィンランドだけでなく、スウェーデン、ノルウェー、そしてロシアの北部にまたがる、広大な土地です。国境が引かれるはるか昔から、サーミはこの寒冷な大地を舞台に、自然とともに生きてきました。サーミの人々は北欧全体で数万人、フィンランドにもおよそ一万人が暮らすといわれます。その言葉はいくつかの言語に分かれ、雪やトナカイを表す語がとても豊かなことで知られています。
トナカイとともに、季節を旅する
サーミの伝統的な暮らしを支えてきたのは、トナカイの牧畜です。夏は山へ、冬は森へと、季節に合わせてトナカイの群れとともに移動し、その肉や毛皮、角や骨までを暮らしの糧としてきました。トナカイは食料であり、衣であり、移動の手段でもある、暮らしのすべてでした。今も北欧では、トナカイの放牧はサーミの人々に伝統的に結びついた生業とされています。自然のリズムに寄り添い、必要な分だけを受け取る。その知恵が、厳しい北の地での暮らしを可能にしてきたのです。
ヨイクという、魂の歌
サーミの文化を象徴するのが、ヨイクと呼ばれる独特の歌です。ヨイクは、誰かや何かについて「歌う」のではなく、その存在そのものを声で写し取ろうとします。人、トナカイ、山、風。決まった始まりも終わりもなく、円をえがくように繰り返されるのが特徴です。対象と一体になろうとするこの歌は、文字を持たなかった時代から、記憶と感情を運ぶ器でした。かつては抑え込まれた時期もありましたが、今は誇りとともに受け継がれています。北の自然の中で生まれた、深く根源的な音楽です。
色あざやかな、民族の装い
サーミの人々は、祝いの日などに、色鮮やかな民族衣装を身にまといます。青や赤の生地に、赤や黄、緑の縁取りと細やかな装飾を施した衣装は、地域ごとに模様が異なり、着る人の出身を物語ります。ボタンや帯の飾りの一つひとつにも、意味が込められています。厳しい自然の中で暮らしてきた人々が育んだ、鮮やかで誇り高い色彩です。装いは、自らの文化への敬意と誇りの、目に見える表れでもあります。
1996年、自らの議会を持つ
サーミの文化と権利を守る動きも、着実に進んできました。フィンランドでは1996年、北部のイナリを拠点に、サーミの人々が自らのことを話し合うための議会が設けられました。言葉や伝統を次の世代へ伝え、暮らしを守るための場です。青赤緑黄の四色と、太陽と月をかたどった円を描いたサーミの旗は、1986年に定められました。二月六日はサーミのナショナルデーとされ、北欧各地でその文化が祝われます。古い文化が、現代の中で静かに生き続けているのです。
自然に寄り添う、火の暮らし
自然のリズムに寄り添い、必要な分だけを受け取って生きる。サーミの知恵は、火とともに暮らす私たちにも通じます。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、自然と結んだ静かな暮らしをお手伝いしています。北欧の先住民や文化の話も、店でどうぞ。
写真: Ninara (Wikimedia Commons, CC BY 2.0)



