フィンランドの人にとって、サウナは体を洗う場所であると同時に、頭を整理する場所でもあります。熱い部屋に静かに座り、余計なことを考えないでいるうちに、こんがらがっていた思考がほどけ、上がるころには頭がすっきりしている。今日は、フィンランドのサウナと集中力、頭の冴えの話をします。画面と予定に追われる毎日ほど、頭をいったん空にする時間の値打ちは増していきます。
静かな部屋が、考えごとを止めてくれる
サウナ室は、驚くほど情報の少ない場所です。薄暗く、音が少なく、視界に入るのは木の壁と石だけ。予定表も画面もありません。フィンランドの家庭では、サウナの中で仕事や込み入った話をしないという、ゆるやかな習わしを持つ人もいます。刺激が絞られたこの環境では、あれこれ考え続けていた頭が、自然と手を止めます。何もしないでいい時間が、張りつめた注意力を休ませてくれるのです。
熱は、高ぶった神経を静める
集中が続かないとき、頭の中は交感神経が優位になって、気持ちが急いていることが多いものです。サウナで全身が温まると、体は少しずつ緊張をゆるめ、副交感神経の働きが顔を出します。呼吸がゆっくりになり、肩の力が抜け、考えが一点に張りつくのをやめる。この、いったん力を抜く時間があるからこそ、次に机へ向かったとき、頭がまた素直に働き出します。ゆるめてから、集中する。順番が大切です。フィンランドには、サウナでは静かにふるまうものだという感覚が古くからあり、大きな声も、せかせかした動きも、そこにはありません。何もせず、ただ熱に身をあずけるこの時間が、張りつめた頭のねじを一本ずつゆるめていきます。
上がったあとの、澄んだ頭
サウナから出たあとに訪れる、あの妙にすっきりした感覚。フィンランドではこれを、体だけでなく心のリセットとして親しんできました。東フィンランド大学のラウッカネン博士らは、規則的なサウナ習慣と心や血管の健康との関わりを長年研究し、2018年にはその成果を医学誌に総説としてまとめています。頭の冴えという実感の背景には、温まって血のめぐりが良くなり、気分が落ち着くという、体ぜんたいの変化があると考えられています。サウナに入っているあいだ、心臓の拍動は中くらいの運動に近い水準までゆるやかに上がり、全身に血がよくめぐります。頭が軽くなる感覚の裏では、この血流の高まりと、気持ちがほどけていく実感とが、静かに重なり合っているのです。
冴えを取り戻す、入り方の目安
頭を軽くしたいときは、我慢比べにしないことです。八十度前後のやさしい熱で八分から十分ほど座り、いったん外気や水で体を落ち着かせ、休憩でしっかり息を整える。これを二回から三回。無理に長く入るより、温めて、冷まして、休むという波をていねいに繰り返すほうが、上がったあとの澄んだ感覚は深くなります。持病のある方や体調のすぐれない日は、時間を短めにし、医師に相談しながら楽しんでください。上がったら、すぐ次の用事に手をつけず、ひと呼吸だけ何もしない間を置く。このわずかな余白が、澄んだ感覚をいっそう長持ちさせてくれます。
画面から離れる、それ自体が効く
現代の頭が疲れる大きな理由は、絶えず情報を浴び続けていることです。フィンランドの人が大切にするのは、サウナにいるあいだ画面を持ち込まないという、ささやかな線引き。数十分でも通知から離れ、熱と静けさに身をあずけるだけで、頭は驚くほど回復します。集中力とは、根を詰めることではなく、休ませ方を知ること。サウナは、その休ませ方を体で教えてくれる場所です。
澄んだ頭を、盛岡の暮らしに
考えすぎて疲れた頭を、火と蒸気でそっとリセットする。この北欧の習慣は、忙しい毎日を送る岩手・盛岡の暮らしにもよく似合います。D'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、家に頭を空にする時間をつくるお手伝いをしています。仕事帰りに整う暮らしの相談も、店でどうぞ。
写真: Santeri Viinamäki (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



