「サウナは肌にいい」という言い方は、よく聞きます。でも、いいとはどういう状態を指すのか、考えたことはあるでしょうか。ドイツの研究チームは、そこを「肌が元の状態に戻るまでの速さ」として測りました。習慣の有無で、その速さに差が出たと報告されています。岩手の冬、除雪と暖房で肌がこわばりやすい季節に、この研究を読んでみます。
80℃・15分を2回、41人に
研究を行ったのはKowatzki D、Macholdt C、Krull Kらのチームで、2008年にDermatology誌(217巻2号、173〜180ページ)に発表されました。20歳から49歳までの健常な成人41人を、日常的にサウナに入る習慣のある群と、ない群の二つに分けます。そのうえで全員に、80℃・15分の入浴を2回、負荷として与えました。
測ったのは主に三つです。角層水分量(肌のいちばん表面、角質層に含まれる水分の量)、経表皮水分蒸散量、略してTEWL(肌の内側から外へ逃げていく水分の量。これが多いほど、肌のバリアが弱くなっていると考えられます)、そして皮膚表面のpH(酸性・アルカリ性の度合い)です。どれも肌の状態を数値で追う、皮膚科ではよく使われる指標です。
習慣のある人ほど、戻りが速かった
結果として報告されているのは、次のような違いです。習慣群は角層水分量がもともと高く、80℃・15分の負荷で角層水分量・TEWL・皮膚表面pHがいったん上昇したあと、その回復が有意に速かったとされています。「肌が強くなる」ではなく、「乱れたあと、元の状態に戻るまでの時間が短い」という言い方が、研究の中身に近いはずです。
額の皮脂量(casual sebum、日常的な皮脂の量)は習慣群のほうが低く、発汗中のイオン濃度、表皮の血流、心拍の応答にも、順化らしい違いが見られたと報告されています。うるおいを与える、といった化粧品的な言い方は、この記事では使いません。測定された指標がどう動いたか、という事実だけを書いています。
この研究が言っていないこと
はっきりさせておきたいのは、この研究が「サウナに入れば肌が良くなる」と証明したわけではない、という点です。これは観察研究、つまり後から二つのグループを見比べた研究で、原因と結果を直接示すものではありません。習慣のある人がもともと肌の回復力が高かった、という可能性も排除できません。
対象は20代から40代の健常な成人41人です。人数は決して多くなく、年齢層も限られています。皮膚に持病のある方、乾燥肌が強い方に、そのまま当てはまる結果とは言えません。肌に不安のある方は、自己判断で入浴回数を増やすより、皮膚科の医師にご相談いただくのが確実です。

岩手の冬、肌がこわばる理由
盛岡で暮らしていると、11月から3月まで、外は乾いた冷気、家の中は暖房で乾いた温気という日が続きます。除雪のたびに手や顔が外気にさらされ、帰ってくればストーブの前で急に温まる。肌にとっては、乾燥と温度差の往復運動のような季節です。
この研究が測っているのは、まさにその「乱れてから戻るまで」の時間です。研究の条件は施設のサウナに近い80℃ですが、大事なのは温度そのものより、それをどのくらいの頻度で経験しているか、という点だと私たちは考えています。

続けられる距離に、続けられる湿度を
研究が見ているのは回復の速さです。これは、週に1回入るか、週に3回入るかという頻度の話に、そのままつながります。盛岡の市街地から日帰り温泉やサウナ施設まで、片道30分の冬道を通うのと、家の裏に3畳のサウナ室があるのとでは、続く回数がまるで違います。凍った道を車で往復する手間がなくなるだけで、入る回数は自然に増えます。
D'STYLEの店舗と施工現場では、暖房期の室内湿度を実際に温湿度計で測って記録しています。フィンランド式のストーブはロウリュ、つまりサウナストーンに水をかけて蒸気を足す方式で、湿度を自分で調整できます。乾式の電気サウナとは、肌への当たり方がかなり違います。この研究の「戻りの速さ」という視点で見れば、湿度をコントロールできる設計は、続けやすさという意味で理にかなっていると私たちは考えています。


上がったあとのケアは、また別の話
サウナから上がったあとの肌の扱い方については、この記事とは別に用意しているスキンケア関連の読みものをご覧ください。この記事はあくまで、入浴中から入浴後にかけて肌の指標がどう動いたか、という一つの研究を紹介するものです。

設置の相談で、よく聞かれること
自宅サウナの相談で、私たちがよく聞かれるのは「毎日入っても大丈夫か」という質問です。この研究をもとに答えるなら、「頻度を上げることそのものが問題という報告ではない」というのが正直なところです。ただし、持病をお持ちの方、皮膚に治療中の症状がある方は、頻度の前にまず主治医や皮膚科医にご相談いただくことをお勧めしています。
盛岡の冬、雪かきのあとに温まる場所が家の敷地内にある。それだけで、続けやすさは変わります。この研究の「戻りの速さ」は、そうした日々の積み重ねと無関係ではないはずです。
この研究が教えてくれるのは、サウナが肌を「良くする」ということではなく、乱れたあと元に戻るまでの時間が、習慣によって違って見えたという事実です。原因と結果を直接示す研究ではなく、対象も41人の健常な成人に限られています。そのまま誰にでも当てはまる話ではありません。皮膚に不安のある方、治療中の症状をお持ちの方は、自己判断で頻度を変える前に、皮膚科の医師にご相談ください。岩手・盛岡で自宅サウナの設置をお考えの方には、D'STYLEがフィンランド式ストーブの湿度設計や施工現場の実測データをもとに、無理のない使い方をご提案しています。\n\n本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- Kowatzki D, Macholdt C, Krull K, et al. Dermatology. 2008;217(2):173-180.
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



