盛岡で自宅サウナの相談を受けると、最後にきまって同じ質問が出ます。週に何回入ればいいのか。サウナの話題では「週4〜7回」という数字が独り歩きしていますが、北スウェーデンで971人に聞いた2024年の調査は、少し違う形を見せました。頻度の階段は、上の二段のあいだで差が見えなくなっていたのです。増えるほど良くなる、という形は確かめられませんでした。ただし一番上の群はわずか73人。数字の読み方ごと、条件を全部書いて紹介します。
「それで、週に何回入ればいいんですか」
盛岡のショールームで、図面と見積の話がひととおり終わったころ。お客様がふっと肩の力を抜いて、こう聞かれることがあります。「それで、週に何回くらい入ればいいんですか」
雪の降りはじめた夕方でした。窓の外は国道4号のヘッドライトの列。奥では薪ストーブが細い火を持っています。
正直に申し上げると、この質問がいちばん答えにくい。多いほうがいいですよ、と言えば売り手の都合になります。何回でもいいですよ、と言えば投げやりです。
サウナの話題では「週4〜7回」という数字がよく出回ります。フィンランドの追跡研究で使われた頻度の区分で、数字そのものは本物です。ただ、それだけが独り歩きして、「週に一度が精一杯の自分には意味がないのか」と肩を落とす方に、私たちは何人もお会いしてきました。
火の仕事を三代続けてきて、思うことがあります。火は、無理に焚くとすぐに続かなくなる。薪ストーブも、サウナも同じです。続く回数を先に決めておくほうが、結局は長く使われます。
そこで今回は、少し違う角度から頻度を見た調査を一本、条件ごと読みます。舞台は北スウェーデン。答えた人は971人です。

北スウェーデン、971人に聞いた一日
調べたのは、スウェーデン最北の二つの県、ノールボッテンとヴェステルボッテンです。2022年、25〜74歳の住民を住民登録の名簿から無作為に抽出しました。無作為抽出とは、名簿からくじ引きのように選ぶこと。サウナ好きだけが集まってしまう偏りを避けるための手続きです。
ただし、選ばれた人が全員来てくれるわけではありません。この2022年の調査で実際に参加したのは、声をかけた人の47%でした。1986年は81%、2014年は62%。回を追うごとに下がっていて、論文でも研究の限界としてはっきり挙げられています。半分以上の人は、答えていない。ここは最初に置いておきます。
調査に参加したのは1,180人。そのうちサウナの設問に答えたのが971人で、参加者の82%にあたります。さらにそのうち641人、回答者の66%がサウナの利用者でした。
この82%は「参加した人のうち、サウナの設問に答えた人の割合」であって、調査そのものの回答率ではありません。回答率にあたるのは、さきほどの47%のほうです。ここを取り違えると、偏りの小さい調査に見えてしまいます。私たちも最初、危うく取り違えるところでした。
数字が並びましたが、これは足し算をする数字ではありません。1,180人の中に971人がいて、その中に641人がいる。入れ子の関係です。研究の紹介記事で人数が足されているのを時々見かけますが、この三つは重なっています。
この調査は横断研究と呼ばれる形をとっています。横断研究とは、ある一時点で、大勢の人の状態をいっせいに見比べた調査のこと。何年も追いかける追跡研究とは違い、写真を一枚撮るような見方です。ですから、どちらが原因でどちらが結果か、という順番までは分かりません。ここも最初に置いておきます。
出典は International Journal of Circumpolar Health の2024年、83巻1号、論文番号2419698です。
入る人と入らない人で、何が違っていたか
まず、サウナを使う人と使わない人の比較です。
利用者は、非利用者にくらべて、不安と軽度の抑うつのスコアが低いという結果でした。そして、幸福感、活力、睡眠への満足度、自分で感じる健康度、メンタルヘルスのスコアが高い。並べてみると、どれも「気分と体調の自己申告」にあたるものです。血液や画像で測った数値ではなく、本人が答えた点数だ、ということも覚えておいてください。
そして、ここがいちばん大事なところです。この比較は、年齢も性別も揃えていません。統計で条件の影響を差し引く多変量調整という手続きを、この論文は行っていないのです。著者自身が、今後の研究では年齢・性別・教育・所得の調整が欠かせない、と書いています。つまり、ならべて数えただけの粗い比較です。
実際、二つの群は同じ顔ぶれではありませんでした。利用者の平均年齢は51.1歳、非利用者は55.1歳。利用者のほうが四歳ほど若い。性別で見ると、男性の72.7%、女性の60.8%が利用者で、利用者のうち男性は48.2%でした。
さらに論文には、こう書かれています。利用者の群が若かったことが、高血圧の診断が少ないこと、痛みや不安が少ないこと、全般的な健康観やメンタルヘルスの高さを説明しうる、と。著者自身が、年齢の差だけで説明がついてしまうかもしれない、と認めているわけです。
読み手として気をつけたいのは、ここから先です。
この調査は一時点の比較ですから、サウナに入ったから気分がよいのか、気分がよいからサウナに入れるのか、どちらとも決められません。後者を逆因果と呼びます。逆因果とは、原因と結果が逆になっている可能性のこと。
冬の朝、雪かきをきちんとする家は健康な家が多い、という話に似ています。雪かきが健康を作ったのか、健康だから雪かきができるのか。外から一日眺めただけでは分かりません。
サウナも同じです。膝が痛い、心臓に不安がある、そもそも家から遠い。そういう事情のある方は、サウナから足が遠のきます。すると「入っていない人」の側に、体調のよくない方や、年齢の高い方が集まりやすくなります。
ですから、この結果は「関連が示された」までです。効いた、とは書けません。
頻度の階段は、途中から差が見えなくなりました
本題の頻度です。
この調査では、利用の頻度を三つに分けています。月1回未満、月1〜4回、週2〜7回。
人数も一緒に書きます。月1回未満が330人、月1〜4回が198人、週2〜7回が73人。いちばん頻度の高い群が、いちばん小さい群です。ここは覚えておいてください。あとでもう一度出てきます。
結果はこうでした。月1〜4回の群も、週2〜7回の群も、月1回未満の群にくらべてメンタルヘルスと活力のスコアが統計的に高い。メンタルヘルスはp<0.001、活力はp=0.004です。統計的に高いというのは、偶然のばらつきでは説明しにくいほどの差がある、という意味。pの値は、その説明しにくさの目安だと思ってください。
そのうえで、もう一つ。月1〜4回を超えて頻度を上げても、スコアはそれ以上には上がりませんでした。
ただし、この三群の比較も、さきほどと同じで年齢や性別を揃えていない粗いものです。調整をかけたらどう動くのかは、この論文からは分かりません。
そして人数です。週2〜7回の群は73人しかいません。人数の少ない群では、たとえ本当に差があっても、統計の網にかからないことがあります。検出力が足りない、という言い方をします。差が見えなかったことと、差がないことは、同じではないのです。
ですから、この節の見出しは「平らだった」ではなく「差が見えなくなった」と書いています。回りくどいのは承知のうえです。
それでも私たちは、この「上がって見えなかった」ほうの結果を、岩手で紹介したいと思いました。差が出た結果ばかり集めると、記事はどんどん景気がよくなります。読んでいて気持ちもいい。けれど暮らしに近いのは、たいてい平らなほうです。
月に一度から四度。雪の週末に一回、月末にもう一回。それくらいの姿が、この調査の中では、いちばん頻度の高い群と差の見えない側に並んでいた。盛岡で自宅サウナを考えている方にとって、これはずいぶん現実的な数字ではないでしょうか。
もっとも、この言い方には、すぐに但し書きが要ります。次の節がそれです。

ただし「月4回が境目」とは書けません
ここは、いちばん丁寧に書きます。
先ほどの三つの区分、月1回未満・月1〜4回・週2〜7回は、研究者があらかじめ決めた箱です。データを見てから「ここに境目がある」と探し当てたものではありません。
この違いは大きいのです。もし箱の切り方が「月1回未満・月2〜8回・週3回以上」だったら、差が見えなくなる場所も変わっていたはずです。木を挽くときに、どこへ墨を打つかで板の見え方が変わるのと同じ。墨は、測る前から打たれていました。
しかも、月1〜4回という箱の中には、月に一度の人も、月に四度の人も、同じ顔で入っています。箱の中の差は、この結果からは見えません。
そして、箱の大きさが揃っていないことも大事です。330人、198人、73人。いちばん右の箱だけが極端に小さい。小さい箱では、線を引いても輪郭がぼやけます。
ですから正しい読み方はこうなります。「研究が月4回という境目を発見した」ではなく、「この三つの区分で見るかぎり、上の二つの群のあいだに差は見えなかった。ただし上の群は73人で、差がないと確かめられたわけではない」。
回りくどく感じられるかもしれません。けれど、この一行を省いた瞬間に、記事は「月4回がベスト」という別のものに変わります。数字を扱うときに、私たちがいちばん気をつけている場所です。
見出しに使った「頭打ち」という言葉も、そういう意味でしか使えません。上がらないことが分かった、のではなく、上がる姿がこの調査では見えなかった。それだけです。
フィンランドの「週4〜7回」と、物差しが違う
姉妹編として、同じシリーズでフィンランドの研究も取り上げています。
東フィンランド大学のKIHD研究では、ベースライン時に42〜60歳だった男性2,315人を、追跡期間の中央値20.7年にわたって追いかけ、認知症204例を記録しました。週1回の群を基準にした多変量調整ハザード比は、週4〜7回の群で0.34、95%信頼区間は0.16〜0.71です。
言葉を噛み砕きます。ハザード比とは、リスクの比のこと。95%信頼区間とは、推定の幅のこと。多変量調整とは、年齢や血圧、喫煙といった条件の影響を統計で差し引いたうえで比べた、という意味です。
こちらでは、頻度の高い群に、認知症の記録が少ないという関連が示されました。対象は男性のみで、女性は含まれていません。
では、どちらが正しいのか。そういう話ではないのです。物差しが違います。
フィンランドの研究が見ていたのは、20年後の診断の記録。北スウェーデンの調査が見ていたのは、答えたその日の気分と活力です。20年後の何かを見るなら高い頻度に関連があり、今日の気分を見るなら月に数回から先は差が見えなかった。同じ「頻度」という言葉でも、後ろにある問いが違います。
そして、揃え方も違います。フィンランドの研究は年齢や血圧を統計で差し引いた比較、北スウェーデンの調査は差し引いていない粗い比較。人数も、2,315人と、いちばん多い群でも330人。並べるときは、この差も一緒に並べないとフェアではありません。
そしてどちらも観察研究、つまり後から見比べた研究であって、因果関係を示すものではありません。
誰を調べた研究なのか、を先に見る
数字を岩手の暮らしに持ち込む前に、誰を調べた研究なのかを確認します。
舞台は北スウェーデンです。岩手よりはるかに北、家庭にサウナがあることが珍しくない土地。日本人を対象にした調査ではありません。年齢は25〜74歳。
性別と年齢については、論文にはっきり書かれています。利用者のうち男性は48.2%。男性の72.7%、女性の60.8%が利用者でした。利用者の平均年齢は51.1歳、非利用者は55.1歳。そして、この比較は年齢も性別も揃えていない粗いものだと、著者自身が限界として記しています。分からないのではなく、揃えていないと書いてある。ここは区別して読みたいところです。
一方で、設計として評価できる点もあります。住民登録の名簿から無作為に選んでいること。サウナ施設の入口でアンケートを配れば、当然サウナ好きばかりが答えます。名簿から選ぶ手続きは、その偏りを減らします。
ただし、名簿から選んでも、行くか行かないかを決めるのは本人です。参加率は47%。1986年の81%、2014年の62%から下がり続けていて、論文でも限界として挙げられています。半分以上が答えていない以上、無作為に選んだあとの自己選択の偏りは残ります。健康な人ほど調査に足を運びやすい、という偏りです。
そのうえ一時点の写真であることも変わりません。無作為抽出という言葉の強さに寄りかからないほうがいい、というのが私たちの読み方です。
私たちが見てきた範囲では、日本でサウナといえば施設に通う形が中心で、家にあるものを気軽に使う暮らしとは前提が違います。移動の時間も、料金も、天気も、回数の壁になります。北欧の頻度をそのまま自分の目標にしなくていい。この一本から持ち帰れるのは、そういう読み方だと思っています。

盛岡の自宅サウナは、実際に週何回動いているか
ここからは研究の話ではなく、現場の話です。
私たちが盛岡と周辺でお納めしてきた自宅サウナについて、見てきた範囲で申し上げると、実際の稼働は週1〜2回が中心です。
設置前の打ち合わせでは、多くの方が「毎日入ります」とおっしゃいます。本当にそのつもりです。私たちも同じ立場なら、そう言うと思います。
ところが半年後にうかがうと、金曜の夜と、日曜の午後。あるいは土曜だけ。だいたいそのあたりに落ち着いています。
薪サウナストーブの場合は、なおさらです。焚きつけを組んで、火を熾して、室温が上がるのを待つ。この待つ時間そのものが好きだという方も多いのですが、平日の夜に毎回できる作業ではありません。ペレットサウナストーブや電気サウナヒーターなら着火の手間はぐっと減ります。それでも毎日にはなりにくい。
冬はさらに条件が加わります。岩手の路面が凍る時期、外気浴は五分ももちません。雪かきを終えて、体が芯まで冷えてから入る一回。あれは、回数で数えるたぐいの一回ではないように思います。
回数が減った理由をうかがうと、たいていは体調ではなく段取りの話です。夕飯の時間、子どもの送り迎え、翌朝の仕事。サウナは、暮らしの隙間に入るぶんだけ使われます。
週1〜2回。私たちはこの数字を、失敗だと思っていません。

頻度が決まると、薪棚の大きさが決まります
頻度の話は、じつは設計の話でもあります。
週にどれくらい火を入れるかが決まると、そのあとの寸法がいくつも決まります。一年に使う薪の量。薪棚の間口と奥行き。ペレットなら年間の袋数と、その置き場所。電気サウナヒーターなら容量と、電気工事の規模。
毎日入るつもりで組むと、薪棚は大きくなり、庭の使い方が窮屈になります。逆に、月に数回で足りると分かっていれば、薪棚は小さくてよく、そのぶん別のことに場所を使えます。
ですからお客様に頻度をうかがうのは、健康の話をしたいからではありません。薪の山の大きさを決めるためです。
そして、これも正直に書いておきます。北スウェーデンの調査は、サウナを設置すれば気分がよくなることを示したものではありません。横断研究で、しかも年齢も性別も揃えていない粗い比較ですから、そもそもそういう主張ができない形の調査です。私たちが扱っている薪サウナストーブや電気サウナヒーターの働きを確かめた研究でも、もちろんありません。
もう一つ。持病をお持ちの方や、お薬を飲んでいる方は、回数を決める前に主治医にご相談ください。温度も時間も、体の事情で変わります。図面の上で私たちが決められることではありません。
数字は、暮らしの見取り図を引くための目盛りとして使う。それ以上の役目は、負わせないほうがいいと思っています。
雪の日に一回。それで足りるなら、それでいいのです。
雪の重い日でした。納めたばかりのサウナから出てきたお客様が、黙って空を見ていたのを覚えています。あの一回を、何回のうちの一回かで数える気には、なりませんでした。週に何回か、という問いに、研究は一つの答えをくれません。この調査で言えるのは、年齢も性別も揃えない粗い比較、しかも最頻群73人という小ささで、月1〜4回から先の差は見えなかった、ということだけです。差が見えないことは、差がないことの証明ではありません。ならば、続く回数でいい。持病のある方、お薬を飲んでいる方は、必ず主治医にご相談ください。本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- International Journal of Circumpolar Health 2024;83(1):2419698(スウェーデン最北のノールボッテン県・ヴェステルボッテン県で2022年に実施された北スウェーデンMONICA研究。25〜74歳を住民登録から無作為抽出。参加率47%で、1986年81%・2014年62%から低下しており著者らが限界として記載。参加1,180人のうち971人がサウナ設問に回答〈参加者の82%〉、うち641人が利用者。頻度3群の内訳は月1回未満330人・月1〜4回198人・週2〜7回73人で、メンタルヘルスp<0.001、活力p=0.004。多変量調整は行われておらず、利用者は非利用者より若い〈平均51.1歳対55.1歳〉、利用者の48.2%が男性、男性の72.7%・女性の60.8%が利用者。横断研究)
- Laukkanen T, Kunutsor S, Kauhanen J, Laukkanen JA. Age and Ageing 2017;46(2):245-249(東フィンランド大学 KIHD研究。ベースライン時42〜60歳の男性2,315人、追跡期間中央値20.7年、認知症204例。多変量調整ハザード比。観察研究)
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



