納品したばかりのサウナは、白木が輝いて、木の香りが立って、それは美しいものです。でも、私たちは知っています。サウナがいちばん美しいのは、実は新品のときではありません。五年、十年と使い込まれて、木が深い色にじっくり育ったころ。今日は、木のサウナだけが持つ、経年美の話です。

ベンチは、はちみつ色に育つ
使い込まれたサウナのベンチは、少しずつ、白木からはちみつ色へ、そして飴色へと深まっていきます。熱と、蒸気と、人の肌が、何百回と磨いた色です。木目は浮き立ち、手ざわりはしっとりと落ち着いて、新品の頃のとがった香りは、まろやかな甘い香りに変わる。ウイスキーの樽が年月で酒を育てるように、サウナの木も、時間をかけて自分を育てていきます。この色は、お金では買えません。使った家にだけ、静かに配られていく色です。毎晩そこに座り、汗を流し、家族と過ごした時間の総量が、そのまま木の深さになっていく。言ってみれば、色そのものが、その家の使ってきた歳月の記録なのです。
外壁は、銀灰色に枯れる
屋外のサウナ小屋なら、外壁の変化も見ものです。日と風雨にさらされた木は、数年でシルバーグレーに枯れていきます。これは、木の表面が紫外線と少しずつ付き合った結果の、自然な色。北欧の古い納屋やサウナ小屋の、あの渋い銀色です。日本でも、古い板塀や社寺の木肌に、同じ銀灰色があります。ぴかぴかの新建材にはない、風景に溶けこむ落ち着き。庭の木々が育つのと同じ速度で、小屋も少しずつ庭の一員になっていくのです。(薪棚の美学と同じ楽しみです。こちら。)
侘び寂びという、日本の目
古びることを美しいと見るのは、じつは日本人の得意技です。茶の湯が育てた「侘び寂び」は、時間が加えた枯れた味わいを慈しむ心。使い込まれた道具に宿る風合いを、日本人は昔から「経年美」と呼んで、価値あるものと見てきました。新品が最上で、あとは劣化していくだけ、という見方とは、正反対のまなざしです。サウナの木を育てる楽しみは、この日本人の美意識と、まっすぐつながっています。年月がプラスに働く持ち物は、暮らしの中で、そう多くありません。
美しく年を取らせる、手入れ
ただし、放置と経年美は違います。美しく年を取らせるには、少しの手入れが要ります。使用後の換気と乾燥。ベンチの定期的な水拭きと、ささくれの軽いサンディング。屋外の小屋なら、屋根まわりの点検と、必要に応じた木材保護材の塗り直し。人間の年の取り方と同じで、手をかけた分だけ、品よく枯れていきます。カビと腐れだけは経年美の敵ですから、湿気を残さないことが、すべての基本。腐れに強い青森ヒバのような木がサウナ材に好まれてきたのも、この土台があってこそです。(道具を直しながら使う文化の話は、こちら。)
十年後の色を、楽しみに買う
サウナ選びのとき、私たちがひそかにお伝えしたい視点が、これです。「この木が十年育ったら、どんな色になるか」。新品の姿は、いわば入学式のようなもの。本当の見ごろは、ずっと先にあります。家族の歴史と一緒に、色を深めていく小屋。子どもの背が伸びていくのと並んで、木の色も静かに深まっていく。それは、新品を買い替え続ける暮らしでは、決して手に入らないものです。
育てがいのある一台を
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、長く育てる前提のサウナ設置と、その後の手入れの相談までお付き合いしています。十年後のはちみつ色まで含めて、末永く付き合える、おすすめの一台を。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: Tero Karppinen from Finland (Wikimedia Commons, CC BY 2.0)



