フィンランドは、湖の国です。国土に十八万を超える湖が点在し、夏は青くきらめく水面が、冬にはすべて分厚い氷におおわれます。人はその氷の上を歩き、車を走らせ、スケートですべり、穴をあけて魚を釣る。凍った湖は、冬のあいだだけあらわれる、もうひとつの大地です。今日は、フィンランドの凍る湖と、氷の上の暮らしの話をします。
湖が、歩ける大地になる
冬が深まると、フィンランドの湖はまず岸から凍りはじめ、やがて全面が厚い氷に閉ざされます。氷はときに数十センチもの厚みになり、人はもちろん、そりや自動車の重さにも耐えます。夏には船で渡っていた対岸へ、冬はまっすぐ氷の上を歩いて行ける。水だったところが道になり、広場になる。この季節ごとの大きな変わりようこそ、湖の国に暮らす人々にとっての、あたりまえの冬の風景です。
氷の道、ヤーティエ
フィンランドには、凍った湖や海の上に作られる公式の氷の道、ヤーティエがあります。氷の厚さをきちんと測り、安全を確かめたうえで開かれるこの道は、冬のあいだだけあらわれる特別な近道です。ヨーロッパでいちばん長い氷の道は、十キロメートルを超えます。窓の外いっぱいに広がる白い氷原を、車で静かに横切っていく。夏には決して通れない水の上を進むこの体験は、湖の国ならではの、忘れがたい冬の記憶になります。
氷が鳴く、湖の冬
凍りついた湖は、しんと静まっているようでいて、ときおり不思議な音を立てます。氷が冷え込みで縮んだり、日差しでゆるんだりするとき、湖のあちこちから、ぴしり、ぼーんと低く響く音が生まれる。まるで湖が歌っているようなその音は、氷が厚みを増していく証でもあります。氷の上を歩く人は、この音や色、ひび割れのようすを読みながら、安全な厚さを確かめます。透きとおった黒い氷は丈夫で、白くにごった氷はもろい。長く湖とつきあってきた北の人々は、氷の表情から冬の深まりを感じ取り、その上で遊ぶ日を心待ちにします。
氷の上で、遊び、釣る
凍った湖は、冬の遊び場でもあります。氷をきれいにみがいた天然のリンクでスケートを楽しみ、そりを引き、犬と散歩する。氷に穴をあけて糸をたらす穴釣りは、フィンランドの冬の定番です。静まりかえった氷の上で、あたたかい服を着こんで魚を待つ時間は、なんとも言えないのどかさに満ちています。氷がきしむ低い音や、風のない静けさ。子どもたちは氷の上ではしゃぎ、大人はのんびりと糸をたらす。凍った湖の上には、夏とはまるで違う、澄んだ時間が流れています。
凍る湖と、サウナと水風呂
凍った湖は、サウナとも深く結びついています。湖畔のサウナで体を熱くしたあと、氷に切った穴、アヴァントへ入る。心臓が驚くほどの冷たさと、そのあとに訪れる爽快感は、フィンランドの冬のサウナの醍醐味です。熱い蒸気と、凍る湖。この極端な組み合わせを、彼らは何百年も楽しんできました。氷の張った湖のそばで火をたき、蒸気を浴びる。それは、冬の厳しさを楽しみへと変える、北国の暮らしの知恵です。熱さと冷たさのあいだを行き来するうちに、体はほぐれ、頭は澄んでいく。湖のほとりに湯気を立てるサウナ小屋の灯りは、フィンランドの冬を象徴する、あたたかな風景です。
凍る季節を、火と蒸気で楽しむ
凍る湖のそばで火をたき、熱い蒸気を浴びて、冷たい水へ。この北欧の冬の楽しみ方は、寒さの厳しい岩手にこそ似合います。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、冬を待ち遠しくする火と蒸気の時間をご提案しています。凍える季節を楽しむ暮らしの話も、店でどうぞ。
写真: kallerna (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



