薪ストーブの写真といえば、燃え盛る炎です。でも、焚き手たちがひそかに愛しているのは、その後の姿。炎が落ち着き、薪が崩れて、オレンジ色に脈打つ熾火(おきび)です。今日は、この静かな主役の話。実用の話から始めて、最後は少し、生き方の話までしてみます。
熾火は、火のいちばん働く姿
意外に思われますが、熾火は炎より高温で、しかも安定しています。炎は燃え方に波がありますが、熾火は炭の塊が静かに、むらなく熱を放ち続ける。だから料理人は熾火を使います。焼き芋も、ピザの窯も、炭火焼きの店も、みんな主役は炎ではなく熾火です(焼き芋の話、熾火の色は温度計の話)。夜、空気を絞って熾火の状態で朝を迎え、そこから一日の火を起こすのが薪ストーブの暮らしの基本形(朝の話)。つまり薪ストーブの一日は、炎の時間より、熾火の時間のほうが長いのです。
いい熾火は、いい焚き方の成績表
熾火の質は、焚き方に正直です。よく乾いた薪を、適切な空気で燃やし切ると、崩れたあとに、赤々とした大粒の熾火がたっぷり残る。湿った薪の中途半端な燃焼は、黒い燃え残りばかりで熾火が育ちません。夜の熾火の残り具合は、その日の焚き方の成績表。朝、灰の下に元気な熾火を見つけたときの「よし」という小さな満足は、焚き手だけの勲章です。
熾火のような人、という褒め言葉
そして、ここからは美学の話です。熾火を眺めていると、いつも思います。若い炎は、高く燃え上がり、音を立て、目を引く。熾火は、光も音も控えめで、しかし芯の温度は炎より高く、朝まで保つ。人にも、そういう二つの熱さがあります。派手に燃え上がる時期と、静かに深く熱い時期と。年齢を重ねるとは、炎から熾火になっていくことだとすれば、それは衰えではなく、熱の完成形に近づくことです。「あの人は熾火のような人だ」。私たちの業界では、これは最上級の褒め言葉になり得ると思っています。
熾火の時間を、暮らしに
岩手・盛岡のD'STYLEは、いい熾火の育つ薪ストーブの設置をお手伝いしています。蓄熱性の高いソープストーンは、熾火の熱を朝まで抱く名手です(石の話)。燃え盛る夜と、静かに熱い朝を、あなたの家に。ご相談、いつでもどうぞ。



