薪サウナの魅力は、サウナ室に入る前から始まっています。
薪を選んで、斧を手に取って、火がつきやすい大きさに割る。細い焚き付けを組んで、火を入れて、室がゆっくり温まるのを待つ。この、入る前の時間も、薪サウナの楽しみのうちだと思っています。
スイッチひとつで温まるのとは、少し勝手が違います。でも、自分の手で火を育てると、室に満ちていく熱や木の香りが、なんというか、より濃く感じられる。その時間をもっと楽しくしてくれる道具が、スウェーデンの斧メーカー、グレンスフォシュ・ブルークの斧です。
薪を割ることは、火をつくる準備
薪サウナでは、同じ薪でも大きさによって役割が変わります。
最初に火を起こすための細い焚き付け。炎を安定させるための中割り薪。そして、長く熱を蓄えるための太い薪。一本の薪を、その日の状態やストーブに合わせて割り分ける。それだけで、火の立ち上がりも、燃え方も変わってきます。
斧を振り下ろすと、乾いた薪が小気味よく割れる。木の断面から匂いが立つ。割った薪が少しずつ積み上がっていく。この手を動かしている時間に、気持ちがだんだんサウナのほうへ向いていきます。
自分で割った薪に火をつけて、その火でサウナを温める。一度これをやると、薪サウナが「入るもの」ではなく「自分でつくるもの」になってくる。大げさに聞こえるかもしれませんが、本当にそうなんです。
100年以上、斧を手で鍛えてきた
グレンスフォシュ・ブルークは、スウェーデンのヘルシングランド地方にある小さな村で、1902年から斧づくりを続けています。
工房では今も、熟練した鍛冶職人が鋼を熱して、何度も打ちながら斧頭の形をつくります。大量生産品のように表面をつるつるに磨き上げることはしません。斧頭には、叩いて形を整えた鍛造の跡がそのまま残っている。雑なのではなくて、手で打った証です。

機能を突き詰めた先に、美しさが生まれる
グレンスフォシュの斧は、使うための道具です。
伐採、枝払い、薪割り、焚き付けづくり。用途に合わせて、斧頭の形も刃の厚みも、柄の長さや重さのバランスも、細かく考え抜かれています。薪割り用の斧と、細い焚き付けをつくる小さな斧とでは、求められるものがまるで違う。だから用途に合った斧を使うと、無駄な力を入れずに、薪へすっと刃が入ります。
使うための形を突き詰めた結果として、無駄のない見た目になっている。使い込むほど柄の色は深まって、斧頭には持ち主だけの跡がついていく。買ったときが完成ではなくて、使いながら自分の道具に育てていくんです。ここも、私がグレンスフォシュを好きな理由のひとつです。
鋼を熱し、打ち、鍛える
斧頭には、炭素を多く含む特殊な再利用鋼が使われています。
鋼を高温で熱し、鍛冶職人が状態を見極めながら、大きなハンマーで何度も打つ。四角い鋼材が、繰り返し鍛えられて、少しずつ斧の形へ変わっていきます。鍛造を終えた斧頭は、研磨、焼き入れ、焼き戻しの工程を経て、道具に必要な硬さと粘りを持つ刃に仕上がります。
硬すぎれば刃が欠けるし、柔らかすぎれば切れ味が続かない。その中間の、ちょうどいいところを見極める。ここには素材の知識と、職人の経験が要ります。最後に刃を研いで、木の柄を取り付けて、ようやく一本の斧になる。手作業なので、つくれる本数は多くありません。それでも数を優先して品質を落とすことはしない。長く使える一本をつくる。グレンスフォシュは、ずっとそのやり方を変えていません。

職人のイニシャルが、一本の背景を語る
一本の斧を担当した職人は、完成した品質に納得したときにだけ、斧頭へ自らのイニシャルを刻みます。
誰がつくったのかが分かる。そして、その職人自身が品質に責任を持つ。グレンスフォシュの斧を手にしたときのずっしりした存在感は、たぶんこういうところから来ているんでしょうね。
斧を手に取って、刻印を確かめて、鍛造の跡や刃の形、柄の木目を眺めていると、一本ごとに顔が違うことに気づきます。使うための斧を選ぶ楽しさもあるし、職人の仕事を知る楽しさもある。知れば知るほど、また別の面白さが出てくる。

長く使うために選ばれた、素材
斧頭に使われる鋼は、将来また別の鋼製品へ再利用できる素材です。
柄には、軽くて強いヒッコリー材やブナ材。亜麻仁油と蜜蝋を染み込ませて、耐久性を持たせています。刃を守るケースは、植物由来のタンニンでなめした革。どれも、壊れにくくて、手入れや修理をしながら長く使えるように選ばれています。
すぐ駄目になる道具を何度も買い替えるより、いい一本を長く使う。結果として、それが資源の節約にもごみを減らすことにもなる。
柄を交換し、斧を次の時間へつなぐ
どれほど優れた斧でも、長く使えば柄は傷み、刃の切れ味も落ちてきます。けれど、柄が傷んだからといって、斧頭まで捨てる必要はありません。
木の柄を交換し、刃を研ぎ直せば、斧はまた道具として蘇ります。有限会社D'STYLEでは、グレンスフォシュの斧の替え柄への交換もご相談を承っています。柄にひびが入った、斧頭が緩んできた、長く使っていなかったので状態を見てほしい。そんなときは、無理に使わず、一度ご相談ください。
長年使ってきた斧には、購入したときの価格だけでは表せない価値があります。手入れをしながら使い続けることで、一つの道具が、家族へ受け継がれていくこともあります。
全種類を、手に取って見比べられる店
D'STYLEでは、グレンスフォシュ・ブルークの斧を全種類取り揃えています。
写真やカタログだけでは分かりにくい、斧頭の大きさ、柄の長さ、重量、握ったときのバランス。その違いを、実物を手に取りながら比べていただけます。一見よく似た斧でも、用途によって刃の厚みも形も、重心の位置も違います。
細い焚き付けをつくる片手斧。キャンプやブッシュクラフトに持っていきやすい小型斧。太い薪を力強く割る薪割り斧。林業や本格的な伐採に使う大型斧。割りたい薪の太さや樹種、体格、使う場所によって、合う一本は変わります。「一番大きいもの」や「一番高いもの」を選べばいいわけではなくて、実際に握り比べて、自分の手に馴染む一本を見つけてほしいんです。

日本に4本しかない、希少な斧も展示
D'STYLEでは通常モデルに加えて、日本国内にわずか4本しかない、希少なグレンスフォシュの斧も展示しています。
これは、グレンスフォシュの歴史と職人の技術を感じられる、特別な一本です。鋼を熱し、何度も打ち鍛えた斧頭には、一本ごとに異なる鍛造の跡が残ります。刻まれた職人のイニシャル、鋼のわずかな表情、天然木の柄の木目まで、まったく同じものは二つとありません。
斧をふだんから使う方はもちろん、グレンスフォシュを長く愛用している方や、北欧の道具・工芸が好きな方にも見てほしい一本です。鍛造品を集めている方、林業やブッシュクラフトをやる方も、たぶん面白がってもらえると思います。カタログの寸法や重量だけでは伝わらない、鋼の質感と、職人仕事の迫力があります。

薪サウナから始まる、斧のある暮らし
薪サウナをきっかけに、初めて斧を手にする方もいます。
最初は火をつける焚き付けをつくるだけだった人が、やがて薪の乾き具合や樹種の違いに気づいて、刃の入り方や斧の重心にまで興味が広がっていく。道具が分かってくると薪づくりが変わるし、薪づくりが変わると火の扱いも変わる。そうやって、薪サウナの楽しみ方が少しずつ深くなっていくんです。
薪を割って、火を起こして、炎を見ながら温度を整える。手間はかかります。でも、その手間のおかげで、頭のなかの慌ただしさがすっと離れていく。斧が薪に入る音。割れた瞬間の手ごたえ。火が大きくなって、室に木の香りと熱が満ちていく時間。

人の手で火をつくって、熱を育てる。昔からずっと続いてきたこの営みを、いまの暮らしに地続きでつないでくれる。グレンスフォシュの斧は、そういう道具なんです。
良いサウナストーブには、良い薪を焚きたい。
その薪をつくるなら、長く付き合える斧が一本あるといい。
火を入れる前の時間から、薪サウナはもう始まっています。これから最初の一本を選ぶ方も、すでに何本も持っている方も、よかったら一度、実物を見にいらしてください。盛岡・国道4号線沿いのショールームに、全種類が並んでいます。手に取って、自分に馴染む一本を探してみてください。良い薪の選び方については三代目の薪屋が話す、いい薪の見分け方と乾かし方もあわせてどうぞ。



