YOMIMONO / サウナと血圧の研究

サウナ中、血圧は上がっていた。
93℃・25分の研究で、下がったのは出た後だった

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2026年8月2日

「サウナは血圧を下げる」。そう聞いて来られる方が多いのですが、実測した研究を読むと、入っている最中の血圧は上がり続けています。入浴前より低い値になったのは、出た後でした。93℃・25分のサウナで健康な成人19人を測ったその研究は、加熱中の負荷は、およそ60〜100ワットの運動に相当すると見積もっています。岩手の冬、氷点下の外気浴と水風呂に向かう前に、この順番だけは知っておいてほしいと思います。

「下がるんですよね」と、ショールームで聞かれます

「サウナって、血圧が下がるんですよね」

ショールームで、そう聞かれることがあります。外は雪。薪ストーブの前でお茶を出して、世間話に近い調子で。

聞かれるのは、六十代、七十代の方が多いように思います。血圧の薬を長く飲んでいる、という方もいます。だからこそ、曖昧には答えたくないのです。

私はたいてい、少し遠回りな答え方をします。出た後の話としてなら、そういう報告があります。ただ、入っている最中はむしろ上がっていた、という研究もあるんです、と。

そう言うと、たいてい一瞬、間があきます。健康にいいと聞いて来た方ほど、そうなります。

けれど、ここを飛ばしたくないのです。売っている側だからこそ、順番の話を先にしておきたい。上がる時間があって、そのあとに下がる時間が来る。研究が測ったのは、その二つの時間帯でした。これを一つの言葉にまとめてしまうと、いちばん気をつけるべき場面がまるごと抜け落ちます。

雪かきに似ています。体にいいから雪かきをしましょう、とは誰も言いません。あれは負荷の高い作業とされていて、しかもその負荷が急にかかる。岩手でも冬になると、繰り返し注意が呼びかけられます。動いている最中と、終わって家に入ってからでは、体の中で起きていることが違う。サウナも、似た構造を持っているように見えます。

今日は、その「最中」を実測した研究の話です。専門の言葉が出てきますが、そのつど普段の言葉に置き換えながら進みます。出てくる数字はすべて、その研究が測った条件の中での話だという前提で読んでいただけたらと思います。

雪をかぶった木造小屋の煙突から煙が立ちのぼる、晴れた冬の景色
岩手の冬。雪をかぶった小屋から煙が上がります。この寒さが外気浴を心地よくし、同時に体への負荷にもなります。

93℃・25分。加熱中は、上がり続けていた

Ketelhut S と Ketelhut RG が、Complementary Therapies in Medicine 誌の2019年、44巻218〜222ページに報告した研究があります。

対象は健康な成人19人。うち女性が7人。平均年齢は46.4±10.2歳、BMIは24.4±2 kg/m²でした。93℃・湿度13%のサウナ室に25分間入り、その後30分間、安静にして経過を測っています。

数字の書き方を少しほどきます。46.4±10.2歳の±は、ばらつきの幅です。四十代半ばを中心に、上下に十歳ほど散らばった集まりだった、と読めます。BMIは身長と体重から出す体格の目安です。

加熱中、収縮期血圧も拡張期血圧も、有意に、しかも進行性に上昇したと報告されています(P<0.01)。心拍数も上がり続けます(P<0.001)。収縮期血圧と心拍数を掛け合わせた値、心筋の酸素消費の目安とされる指標も、有意に上昇しました。

言葉を置き換えます。収縮期血圧は、心臓が縮んで血を送り出した瞬間の、高いほうの値。ふだん「上の血圧」と呼ぶものです。拡張期血圧は、心臓がゆるんでいるときの低いほうの値、「下の血圧」。「進行性に」とは、入っている間じゅうじわじわ上がり続け、途中で頭打ちにならなかったということです。掛け合わせた値のほうは、心臓自身がどれくらい働いているかの目安になります。

つまり、この25分のあいだ、体は休んでいなかった。座って汗をかいているだけに見えても、心臓の仕事は増えていた、ということになります。

著者は明確に書いています。急性のサウナ使用は、血圧を下げるのではなく上げる、と。

そして、サウナを出た後。血圧は下がり、入る前の値よりも有意に低い水準になったと報告されています(P<0.001)。

つまり、この研究の19人では、サウナを出た後に、入浴前より低い値になっていました。「下がる」という言い方そのものが間違いというわけではありません。ただ、それはこの条件で、出た後に測ったときの話です。

ここから誰にでも当てはまる結論を引き出せるわけではありませんし、この記事も、こうすれば血圧がどうなる、という話をするものではありません。それでも、入っている最中に何が起きていたかを測った記録として、読む値打ちがあると思っています。

サウナ室の壁に取り付けられた、92℃と表示されたコントロールパネル
当社施工のサウナ室のパネル。研究の条件は93℃でした。家では、この数字を自分の体調に合わせて決められます。

「有意に上がった」とは、どういう意味でしょうか

ここで「有意に」とP<0.01の意味に触れておきます。

血圧も心拍も、測るたびに少しずつ違う数字が出ます。体調でも時間帯でも動きます。ですから前と後で数字が違っていても、たまたまのばらつきなのか、本当に変わったのかは、すぐには決められません。

そこで使うのがP値です。もし変化がなかったとしても、これくらいの差なら偶然で出てしまうかもしれない。その見込みを数字にしたものです。P<0.01は、その見込みが百回に一回より小さいという意味。偶然で片づけるには無理がある、という目安です。これを「有意」と呼びます。

気をつけたいのは、有意イコール大きい、ではないことです。有意は「偶然では説明しにくい」という意味であって、「変化が大きい」とも「体にとって重大だ」とも言っていません。

もう一つ。今回の二つは、どちらも人に実際に入ってもらい、前と後を測った実験です。大勢を長年追いかけて、よく入る人とそうでない人を比べる観察研究とは、種類が違います。しかも一回きりの入浴を見た「単回」の研究です。続けて入ったらどうなるかは、この二つからは分かりません。

そして93℃の研究の対象は、健康な成人19人。血圧の薬を飲んでいる方や、心臓に持病のある方を集めた研究ではありません。ご自身に当てはめるときは、この一行を思い出してください。

60〜100ワット。サウナ室は、静かな運動場に近い

同じ研究では、運動負荷試験と比べる形で、サウナ中の負荷の大きさを見積もっています。出てきた数字は、およそ60〜100ワットの動的運動に相当する、というものでした。

ワットは、仕事の勢いを表す単位です。電球で見かけるあのワットと同じで、大きいほど勢いが強い。運動負荷試験は、その場で漕ぐ自転車の形をした機械で、ペダルの重さを変えながら心臓や血圧の反応を測る検査です。

60〜100ワットは、自転車のペダルを軽く漕いでいるくらいの範囲です。息が上がるほどではない。けれど、座って本を読んでいる状態とは、まるで違います。

ここが、サウナ室のわかりにくいところだと思います。見た目には、ただ座っているだけ。動いていない。汗をかいているだけに見える。それなのに、体の中では軽い運動と同じくらいの仕事が進んでいた。静かな運動場のようなものです。

ひとつ注記を添えておきます。この60〜100ワットという数字は、自転車エルゴメータのような動的運動と比べたときの見積もりです。日常の作業を同じ物差しの上に並べた数字ではありません。

そのうえで、岩手の冬に置き換えてみます。雪かきを終えて、冷えた体を温めようとそのままサウナに入る。気持ちはよくわかります。でも除雪は、体への負荷が高い作業とされていて、しかもその負荷が急にかかります。何ワット相当かを比べた数字があるわけではありませんが、その直後に、もう一段、別の負荷を重ねることになるのは確かです。汗もかいて、体の水分も減っている。

薪も同じです。運ぶ、割る、積む。冬の薪仕事を終えたばかりの体は、まだ静まっていません。

順番を変えるだけで、だいぶ違います。雪かきの後は、まず座る。水を飲む。汗が引いてから入る。それだけのことです。

私は、この「まず座る」を守れるかどうかで、冬のサウナの安全はずいぶん変わってくると思っています。

もう一つの研究は73℃・93人。冷却期に、心拍が77から68へ

ここからは別の研究の話です。温度も人数も対象も違いますので、先ほどの93℃・19人の結果と混ぜないように読んでください。

同じ2019年、Complementary Therapies in Medicine 誌の45巻190〜197ページに、Laukkanen T らの報告が載っています。

対象は心血管の危険因子を持つ93人、平均52.0歳。73℃で30分の単回サウナです。先ほどの研究より設定温度が20℃低く、時間は5分長い条件になります。危険因子とは、心臓や血管の病気に結びつきやすい条件のこと。先ほどの「健康な成人」とは、集まっている人が違います。

こちらで目立ったのは、冷却期の変化でした。サウナを出て、体が冷めていく時間帯に、自律神経のバランスが副交感神経の側へ傾いたと報告されています。安静時の心拍数は、入浴前の1分あたり77から、回復後には68へ下がりました。これは心拍の話であって、先ほどの血圧の話とは別の研究、別の指標です。

自律神経は、自分の意思とは関係なく心臓や血管を調節している神経です。アクセル役の交感神経と、ブレーキ役の副交感神経があり、副交感神経の側へ傾いたとは、ブレーキ役が優勢になったということ。77から68へ、1分あたり9回ぶん減ったのも、その流れの中の数字です。

日本で「ととのう」と呼ばれている感覚は、たぶんこの時間帯に重なっているのだろう、と私は思っています。ただし、ここから先は私の推測です。この研究が測ったのは心拍や自律神経の指標であって、「ととのう」という主観的な感覚そのものを測ったわけではありません。熱の中ではなく、熱から出た後。椅子に腰かけて、まだ湯気の立つ肩を風が撫でていく、あの数分。研究の数字と私の実感が、たまたま同じ時間帯を指しているように見える、というだけの話です。

ここでも同じ注意が要ります。93人の単回の実験で、因果関係を示すものではありません。誰にでも同じ変化が起きるとも限りません。

それでも、設計する側としては大事な示唆があります。サウナ室と同じくらい、出た後に座る場所が要る、ということです。ベンチひとつ、椅子ひとつ。その置き場所が、体験を大きく左右します。

実際、外気浴の椅子をどこに置くかで、その家のサウナの使われ方は変わります。雪の吹き込まない軒下か、風の抜ける庭先か。図面の段階で決めておきたいところです。

間接照明を仕込んだ木のサウナベンチ
サウナ室のベンチ。研究で心拍が下がったのは出た後の時間帯でした。座る場所は、室内にも外にも要ります。

氷点下の外気浴と、水風呂の入り口

岩手の冬は、外気浴に向いています。盛岡の1月は、平年で見ると日最低気温がおおむね氷点下5〜6℃台。そこからさらに冷え込む厳寒期には、氷点下10℃を下回る朝もあります。熱くなった体には、この冷たさが心地よい。

朝いちばん、玄関を開けたときの冷気を思い出してみてください。あれが、サウナから出たばかりの体に当たります。気持ちがいいことと、体に負荷がかかることは、同時に成り立ちます。

ただ、ここまでの順番で考えると、注意すべき場面がはっきりします。先ほどの研究の測り方でいえば、サウナから出た直後は、血圧も心拍も上がりきったところです。その状態のまま氷点下の屋外へ出る。雪に倒れ込む。水風呂に頭から沈む。どれも、急な変化を体に重ねる行為です。

だからD'STYLEでは、家庭用サウナを設計するときにいくつかの決まりごとを置いています。ベンチから床へ降りる段差を小さくすること。立ち上がる位置に手すりを付けること。中で人が倒れたときにも扉が開けられる向きにすること。脱衣スペースを暖めておくこと。飲み物を、座ったまま手が届く高さに置けるようにすること。そして、ひとりでは入らない運用にすること。

どれも、出た直後の足元を思ってのことです。熱い部屋から冷たい床へ、暗がりから雪明かりの外へ。その移動のあいだに、つかまるものが手の届く場所にあるか。

これらは、研究が効果を検証した仕様という意味ではありません。火と熱を扱ってきた現場の経験から、私たちが自分たちで決めている作り方です。

フィンランドで研修を受けたとき、現地の水風呂の入り口をよく見ました。飛び込むための場所ではなく、手すりのついた段をゆっくり降りていく形が多かった。急がない作りになっていた、という印象が残っています。

飲酒後は入らないこと。水分は先に。持病のある方、薬を飲んでいる方は、まず主治医にご相談ください。

星空の下、氷を割って作った屋外の水風呂
氷を割った水風呂。出た直後は血圧も心拍も上がりきったところです。飛び込まず、段をゆっくり降ります。

93℃と73℃。温度を自分で決められるということ

今回の二つの研究を並べると、気づくことがあります。血圧と心拍が上がり続けた実験は93℃・湿度13%で25分。心拍が77から68へ下がった実験は73℃で30分。同じ「サウナ」という言葉で呼ばれていますが、部屋の設定温度は20℃違います。別々の研究の数字を並べて読むときは、まずこの条件の差を見ておきたいところです。

20℃の差は、想像するより大きなものです。同じ言葉で呼んでいても、肌に届く熱は別物になります。

私たちが見てきた範囲では、日本の施設サウナは高温側に寄っていることが多いように思います。90℃を超える部屋で、12分計の針をにらみながら我慢する。あの入り方しか知らないと、サウナとは熱さに耐えるものだと思い込んでしまいます。

家に置くサウナのいちばんの違いは、温度を自分で決められることだと思っています。今日は疲れているから低めにする。ふたりで入るから少し下げる。翌朝が早いから短めにする。設定を変えられるということは、体にかける負荷の大きさを、自分で選べるということです。

そして、家のサウナには移動時間がありません。せっかく来たのだから、と無理をして長く入る理由が、そもそも要らない。明日また入ればいい。

雪の多い土地ほど、この「明日また」が効いてきます。除雪で疲れた日は、低めに、短く。風のない晴れた日は、外気浴を少し長めに取る。冬は長いのですから、一日で使い切る必要はありません。

木で仕上げた自宅のサウナ室と、壁際に据えたハルビアのヒーター
木で包んだご自宅のサウナ室。移動時間がないぶん、無理をして長く入る理由がありません。明日また入れます。

D'STYLEは岩手・盛岡で、薪ストーブとサウナの設計・施工をしています。代表の橋本大治は三代続く火の家系で、英国RODTECH社認定の煙突掃除インストラクターです。火と熱を長く扱ってきたので、熱は気持ちよさである前に、扱いを誤れば危ないものだという感覚が体に残っています。

サウナも同じです。ですから私たちは、温度や仕上げの話より先に、段差と手すりと扉の向きの話をします。自社ブランドのサウナ室KUUTAでも、そこは変えません。

血圧に気がかりのある方は、どうか先に主治医へ。そのうえで、岩手の冬に合う入り方を一緒に考えられたらと思います。設置のご相談は、いつでもどうぞ。

本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。

参照した研究

この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。

→ サウナと心臓の20年研究(フィンランドKIHDコホートの全体像)を読む
D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

住田町の山主だった祖父から三代、火と生きてきました。英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)。盛岡・国道4号線沿いのショールームにいます。

つづけて読む

劣化して砕けたサウナストーンの接写
REPAIR

サウナ修理・ストーン交換はこちら

ハルビアのサウナヒーター
HEATER

ハルビアのサウナヒーター

自宅サウナの施工例
#04 HOME SAUNA

自宅サウナは、岩手でこそ、つくりやすい。

火にあたりに、来ませんか。

盛岡・国道4号線沿いのショールームで、実際の薪ストーブとサウナを体感できます。ご相談は無料です。

019-681-2477 9:00〜17:00/定休日:毎週水曜日・大型連休・年末年始
アクセス
国道4号線沿い/滝沢中央スマートICから車で約10分
来場を予約する フォームで相談する

サウナ・薪ストーブ・ペレットの対応エリア岩手県・青森県・秋田県の全域と、宮城県・山形県の一部エリアに対応しています(県名をタップで市町村一覧)。

岩手県全域
盛岡市・宮古市・大船渡市・花巻市・北上市・久慈市・遠野市・一関市・陸前高田市・釜石市・二戸市・八幡平市・奥州市・滝沢市・雫石町・葛巻町・岩手町・紫波町・矢巾町・西和賀町・金ケ崎町・平泉町・住田町・大槌町・山田町・岩泉町・軽米町・洋野町・一戸町・田野畑村・普代村・野田村・九戸村
青森県全域
青森市・弘前市・八戸市・黒石市・五所川原市・十和田市・三沢市・むつ市・つがる市・平川市・平内町・今別町・外ヶ浜町・鰺ヶ沢町・深浦町・藤崎町・大鰐町・板柳町・鶴田町・中泊町・野辺地町・七戸町・六戸町・横浜町・東北町・おいらせ町・大間町・三戸町・五戸町・田子町・南部町・階上町・蓬田村・西目屋村・田舎館村・六ヶ所村・東通村・風間浦村・佐井村・新郷村
秋田県全域
秋田市・能代市・横手市・大館市・男鹿市・湯沢市・鹿角市・由利本荘市・潟上市・大仙市・北秋田市・にかほ市・仙北市・小坂町・藤里町・三種町・八峰町・五城目町・八郎潟町・井川町・美郷町・羽後町・上小阿仁村・大潟村・東成瀬村
宮城県県北〜仙台・名取
仙台市・名取市・多賀城市・塩竈市・富谷市・大崎市・栗原市・登米市・石巻市・気仙沼市・利府町・七ヶ浜町・松島町・大和町・大郷町・色麻町・加美町・涌谷町・美里町・女川町・南三陸町・大衡村
山形県最上・村山を中心に
新庄市・金山町・最上町・舟形町・真室川町・大蔵村・鮭川村・戸沢村・山形市・寒河江市・上山市・村山市・天童市・東根市・尾花沢市・山辺町・中山町・河北町・西川町・朝日町・大江町・大石田町

対応市町村の詳細・現地調査について →

薪ストーブ・サウナの「補助金」、使えます岩手・青森・秋田・宮城・山形の自治体制度を確認する →