サウナ上がりの椅子の上で、ふっと訪れる時間があります。頭が妙に澄んで、体が軽い。世界の輪郭が、いつもよりやわらかく見える。サウナ好きはこれを「ととのう」と呼びます。はじめて味わった日のことは、たいていの人が驚くほどよく覚えているものです。強いのに、うるさくない。そういう心地よさです。
では、あのとき体の中では何が起きているのか。仕組みが分かると、ととのいはぐっと近くなります。正体の話から、そこへたどり着くための組み立て方、うまくいかない日のことまで、順に書いていきます。
「ととのう」の正体は、体の大きな切り替え
鍵を握るのは、自律神経です。体を活動へ向かわせる交感神経と、休息へ向かわせる副交感神経。ふだんはゆるやかに入れ替わるこの二つが、サウナでは短い時間のうちに、大きく振れます。
まず、熱いサウナ室。体が温まるにつれて心拍は上がり、汗が流れ、体は軽い運動をしているときに近い状態になることが知られています。座っているだけで、体の中は活動モードです。
次に、水風呂。火照った体に冷たさが触れた瞬間、肌はきゅっと引き締まって、緊張は一気に頂点まで上がります。息を細く長く吐きながら、その一瞬をやり過ごす。
そして、外気浴。熱からも冷たさからも解き放たれた体は、もう頑張る理由がありません。張りつめていた糸がふっとゆるんで、副交感神経が優位な深い休息へと切り替わっていく。心拍が静まり、手足の先までじんわり血がめぐる。この落差の大きさが、日常ではまず味わえない深いリラックスを連れてくるのだと考えられています。頭の中のおしゃべりがいつのまにか止まって、目の前の景色だけが残る。それが、ととのう、ということです。

ととのうための、3セットの組み立て
基本は「温める、冷やす、休む」をワンセットとして、3セット繰り返すやり方です。サウナ室は8分から10分、無理のない範囲で。冷やす時間は短く、外気浴はたっぷり10分から15分。この配分が土台になります。
1セット目は、体を目覚めさせる準備運動です。ここで深いととのいを求めず、ゆっくり温まってください。2セット目から、体の反応がはっきり変わります。汗の出が早くなり、水風呂の冷たさがやわらかく感じられ、外気浴の景色が一段深くなる。多くの方が「来た」と口にするのは、実際、2セット目か3セット目の外気浴です。
入り方の細かい手順、温度の選び方、タオルや水分の準備は、はじめてのサウナ、正しい入り方の全部にまとめてあります。基本を押さえてから臨むと、3セットの質がまるで違ってきます。
ととのいは、外気浴で決まる
ととのいが訪れるのは、じつはサウナ室の中ではなくて、椅子の上です。熱も冷たさも、外気浴という本番のための仕込みにすぎません。だから、休む場所にはとことんこだわってほしいんです。風がやわらかく通ること。目を閉じていられる静けさがあること。できれば、体を預けて横になれること。これがそろうと、外気浴はそれだけでごちそうになります。
それと、これは言っておきたいのですが、岩手の冬の外気浴は本当にいいです。雪が音を吸い込んだ、あの真っ白な静けさ。キンと冷えた空気が、火照った頬を撫でていく。晴れた夜なら、頭の上から星が降ってくる。氷点下がごほうびに変わる感覚は、この土地で冬にサウナへ入る人だけのものだと思います。
私はフィンランドで、アヴァントを体験してきました。凍った湖に四角く開けた穴へ、サウナ上がりの体で入る氷水浴です。入る前は正直、足がすくみました。それでも肩まで沈んで見上げた空と、水から上がったあとに全身を包んだ、あの燃えるような多幸感は、いまも体が覚えています。本場の人たちが冬を待ちわびる理由が、一度で分かりました。冷やし方のバリエーションは体を冷やす7つの方法で詳しく紹介しています。

ととのわない日には、理由がある
同じ手順で入ったのに、今日は何も来ない。そんな日があります。原因はたいてい、サウナの外にあります。
まずは睡眠不足。寝不足の日は熱がやけに重く感じて、外気浴でも頭の芯がほどけてくれません。体が休息を欲しがっているときは、サウナより先に眠ったほうがいい。それから満腹。食事の直後は体が消化で手いっぱいで、熱と冷たさに応える余力が残っていません。食後はしばらく置いてから向かってください。あとは、急ぎすぎ。時計を気にしてセットを詰め込み、外気浴を早々に切り上げる。ととのいは、追いかけるほど逃げていく気がします。予定を空にして、休む時間を惜しまなかった日にかぎって、向こうからやってきます。
ととのいの前に、まず安全
最後に、これがいちばん大事です。めまい、頭がぼんやりする、胸がざわつく。こうしたサインは「ととのいの入口」とまぎらわしいのですが、実際は体が「もう出よう」と出しているサインです。がまんして粘っても、待っているのはととのいと正反対の状態でしかありません。迷ったら出る。水分をこまめにとる。飲酒後は入らない。持病のある方や妊娠中の方は、事前に医師へ相談する。この土台があってこそ、あの深いリラックスは安心して味わえます。詳しくはサウナの安全対策の記事にまとめました。あわせて読んでください。
温めて、冷やして、あとは体をゆだねるだけ。
ととのいは、たぶん椅子の上で待っています。
自分の「ととのう」を、見つけに来てください
ととのい方は、人の数だけあります。熱いのが好きな人もいれば、ロウリュの蒸気で汗を誘う人もいる。雪の上で休むのが最高だという人もいます。私自身は、リトアニアの真っ暗なスモークサウナで、柏の葉に全身を叩かれながら、身体ぜんぶで森を感じて、時間を忘れたことがあります(その話はリトアニア・スモークサウナ紀行に書きました)。仕組みを分かったうえで、自分なりの型を探していく。その時間が、たぶんサウナのいちばんの楽しみです。
盛岡・国道4号線沿いのD'STYLEショールームでは、本場フィンランドのサウナヒーターとロウリュの熱を、実際に体験できます。自宅の庭やお風呂場を「ととのう場所」に変えたくなったら、サウナの設計・施工のページをご覧のうえ、お気軽に 019-681-2477 までお電話ください。ご相談は無料です。あなたの一番深いととのいを、一緒に設計しましょう。



