サウナと心臓の話を、この読みものでは何度か取り上げてきました。フィンランド東部の中年男性2,315人を20年以上追いかけたKIHDコホート研究は、心臓突然死や運動能力との関係だけでなく、実はもうひとつ、別の臓器についても報告を出しています。脳です。

同じ2,315人が、もう一度出てくる
2017年、学術誌Age and Ageing(46巻2号245〜249ページ)に、このコホートを使った別の論文が載りました。対象は同じく42歳から60歳の男性2,315人。追跡期間は中央値で20.7年と、これまで紹介してきた研究とほぼ同じ長さです。今回数えられたのは、認知症とアルツハイマー病の発症でした。
結果は、サウナ入浴の頻度で分けて報告されています。週に1回の人たちを基準にすると、週4〜7回入っていた人たちは、認知症の発症が66%低く、アルツハイマー病の発症は65%低かったと報告されています。年齢や生活習慣などの要因で調整したうえでの数字です。
「66%低い」という数字の中身
ここでも、前に別の記事で書いたのと同じ注意が必要です。66%低いというのは、割合の比べ方であって、10人に6.6人が防げるという意味ではありません。もともと20年のあいだに認知症を発症する人がどれくらいいるか、という土台の大きさによって、実際の人数の差は変わってきます。
そして、これは観察研究です。サウナによく入る人たちと、あまり入らない人たちを、研究者が意図的に分けたわけではありません。もともとの体力や生活習慣、社会とのつながりの多さなど、測っていない違いが残っている可能性があります。年齢や喫煙、血圧といった主要な項目は調整されていますが、それで説明しきれない部分は残ります。サウナに入ったから認知症を防げた、と言い切れる研究ではありません。
なぜ、脳に関係があるとされるのか
この論文の著者たちは、いくつかの経路を考察として挙げています。ひとつは、心臓や血管の健康との関係です。同じコホートの別の報告で、サウナ入浴の頻度が高い人ほど心血管系の疾患による死亡が少なかったことが示されており、血管の状態が良く保たれることが、脳への血流にも良い影響を与える可能性が指摘されています。もうひとつは、熱にさらされることで誘導される、いわゆるヒートショックプロテインという物質の働きです。これらはあくまで「考えられる経路」として論文中で触れられているもので、この研究そのものが仕組みを証明したわけではありません。
対象がフィンランドの中年男性に限られている点も、繰り返しになりますが重要です。女性のデータは含まれていませんし、日本人でも、高齢者でもありません。この結果をそのまま「サウナは認知症を防ぐ」と読み替えるのは、論文の書き方からも距離があります。

岩手で、この話をどう受け止めるか
認知症の予防をうたうつもりはありません。ただ、この論文が扱っているのは「継続してサウナに入る」という生活習慣そのものです。週4〜7回という頻度は、施設に通っていては現実的に難しい回数です。往復の時間、料金、冬の道路事情。これらが重なると、習慣として続けるハードルは上がります。
自宅にサウナがあれば、この頻度の壁はかなり下がります。以前の記事でも書きましたが、移動時間がゼロになると、無理に我慢して回数を減らす理由がなくなる。岩手の冬は長く、家の中で完結する習慣を持てるかどうかは、単純な便利さ以上の意味を持つのかもしれません。
よくあるご質問
Q. 週4〜7回入れば、認知症を防げますか。
そのようには読めません。観察研究であり、因果関係を示すものではないこと、対象がフィンランドの中年男性に限られることは、本文に書いたとおりです。特定の効果を約束するものではありません。
Q. 高齢の方や持病のある方が、この頻度で入っても大丈夫ですか。
この研究の対象は42〜60歳の健康な男性です。高齢の方、心臓や血圧に指摘のある方は、頻度や温度について必ず主治医にご相談ください。
Q. 認知症のリスクは、サウナ以外に何が関係しますか。
この論文が扱っているのはサウナ入浴頻度との関連のみです。運動、睡眠、社会的なつながりなど、他の生活習慣も広く関わるとされています。サウナだけを特別視せず、総合的に生活を見直すことをおすすめします。
D'STYLEは盛岡でサウナと薪ストーブを扱っています。研究が示しているのは、あくまで統計上の関連です。それでも、続けやすい環境を家の中に用意することには意味があると考えています。ご相談は無料です。
参照した研究
- Laukkanen T, Kunutsor S, Kauhanen J, Laukkanen JA. Age and Ageing. 2017;46(2):245-249(KIHDコホート。フィンランド東部の中年男性2,315人・42〜60歳を中央値20.7年追跡した観察研究。週4〜7回群は週1回群と比べ、認知症の発症が66%、アルツハイマー病の発症が65%低かったと報告。Cox回帰モデルにより年齢等の交絡要因を調整)
この記事は研究の紹介であり、認知症の予防・治療効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



