冬の夕方、盛岡はもう暗くなっています。ショールームのストーブに火を入れながら、よく聞かれます。「サウナは週に何回がいいですか」。たいていの方が、どこかで週4〜7回という数字を目にしている。たしかにそう報告した研究があります。ただ、同じ論文をもう一度めくると、頻度とは別に、1回あたり何分入っていたかでも解析されていました。数字の揃い方でいえば有名なほうの頻度に軍配が上がるのですが、部屋をつくる側からすると、この入浴時間の解析のほうが手の届く話に思えます。

有名になったのは、頻度の数字のほうでした
サウナと心臓の話になると、たいてい「週4〜7回」という数字が出てきます。フィンランドの研究で、サウナに入る回数が多い人ほど、心臓が原因で亡くなる割合が低かったという報告です。テレビでも雑誌でも、この頻度の部分だけが切り取られて広まりました。
ただ、元の論文を最初から読むと、著者たちは頻度だけを見ていたわけではありませんでした。同じ集団について、1回あたり何分入っていたかでも解析しています。日本ではあまり紹介されなかった、もうひとつの数字です。
先に、どちらが強い数字なのかをはっきりさせておきます。有名になった頻度のほうは、心臓突然死、致死性の冠動脈疾患、致死性の心血管疾患、そして総死亡という四つの結果すべてで有意な関連が出ています。一方、これから紹介する1回あたりの入浴時間のほうは、心臓突然死では関連が見えたものの、総死亡では有意な関連が出ていません。数字の揃い方でいえば、頻度のほうが上です。時間のほうが大事だった、という話ではないのです。
いま「有意」という言葉を使いました。ふだんは使わない言い方だと思います。統計でいう有意とは、たまたまの偶然では説明しにくいほど、はっきり差が見えた、という意味です。逆に「有意ではない」は、差がないと分かったという意味ではありません。この人数と、この期間では、あるのかないのか見分けがつかなかった。それだけのことです。
それでもこの入浴時間の解析を取り上げるのは、こちらが設計で動かせる数字だからです。頻度は生活の都合で決まってしまいます。仕事があり、雪があり、家族の予定がある。週に何回行けるかは、努力より環境で決まる。岩手の冬なら、なおさらです。朝は除雪から始まり、日は四時過ぎに落ちる。夜にもう一度車を出す気力が残っているかは、その日の道の状態しだいです。一方で、1回何分入るかは、部屋のつくり方でかなり動かせる。設置の仕事をしていると、そう感じます。
もうひとつ先に断っておきます。これから紹介するのは観察研究であり、因果関係を示すものではありません。観察研究とは、研究者が誰かに何かをさせて比べるのではなく、それぞれの人がふだんどう暮らしていたかを記録しておいて、後から数え上げるやり方です。長く入っていた人と、短かった人。そもそも体力も暮らし方も違っていたかもしれません。だから、サウナに入ったから長生きした、とは書けない種類の研究です。それでも、数字の読み方としては面白いところがあります。
2,315人を20年追いかけて、数えられたもの
その研究は、2015年にJAMA Internal Medicine誌(175巻4号542〜548ページ)に載りました。フィンランド東部の中年男性2,315人、年齢は42歳から60歳。中央値で20.7年という長さで追跡されています。中央値とは、追跡できた長さを短い順に並べたときの、ちょうど真ん中にあたる値です。平均と違って、極端に長い人や短い人に引っぱられにくい。子どもが生まれて成人するくらいの時間、同じ人たちを見続けた記録だと思ってください。
その間に、心臓突然死が190件、致死性の冠動脈疾患が281件、致死性の心血管疾患が407件。亡くなった方は全体で929人でした。この四つの数字は、重なりを含む数え方をしているので、単純に足し合わせる数字ではありません。分類のしかたが違うだけで、同じ一件が二つの項目に数えられることがあります。いずれも亡くなった方の記録ですから、総死亡929人という数字の内側にあると考えてください。
1回あたりの入浴時間で分けたときの結果が、この記事の本題です。11分未満の群を基準にすると、19分を超える群の心臓突然死のハザード比は0.48(95%信頼区間0.31〜0.75)。11分から19分の群は0.93(0.67〜1.28)で、統計的な差は出ませんでした。
聞き慣れない言葉が二つ出てきました。ハザード比とは、比べたい二つの集団で、ある出来事の起こりやすさを割り算した数字です。1.00なら基準の群と同じ。0.48なら、基準にした群のおよそ半分の起こりやすさだった、という読み方になります。95%信頼区間は、その数字がどのくらい揺れうるかの幅です。幅が1.00をまたいでいなければ、偶然では説明しにくい差だと見なします。19分超の群は0.31〜0.75で、1.00に届いていません。11〜19分の群は0.67〜1.28で、1.00をまたいでいます。だから、こちらは差が出なかったと書かれるわけです。
なおこれらの数値は、年齢、喫煙、血圧、脂質、運動量といった要因で調整したあとの、多変量調整後の値です。調整とは、たとえば煙草を吸う人の割合が二つの群で違っていても、その差の分を計算のうえで揃えてから比べる操作のことです。サウナに長く入る人はもともと健康だっただけではないか、という当然の疑いに対して、著者たちなりの手当てはしてある、ということになります。
つまり、11分未満の群と11〜19分の群のあいだには統計的な差が出ず、19分を超える群で数字が動いた。ここで注意したいのは、11分と19分という区切りが、研究者があらかじめ決めた分け方だという点です。研究が「19分に境目がある」と発見したわけではありません。あらかじめ決められた三つの区分のうち、いちばん長い群で差が出た。そういう読み方が正確です。
もうひとつ、都合のいいところだけ書くわけにはいかないので残しておきます。総死亡については、入浴時間との有意な関連は見られていません。そして対象は、東部フィンランドに住む中年の男性だけです。女性は含まれておらず、日本人も、若い方も高齢の方も入っていません。この数字をそのまま自分に当てはめられるかというと、そこにはまだ距離があります。
0.48という数字を、どう受け取るか
0.48を、もう少しかみくだいておきます。19分を超えて入っていた人たちの集団では、心臓突然死の起こりやすさが、11分未満の集団のおよそ半分だった。そういう意味です。半分になる、ではありません。半分だった、です。すでに起きたことを後から数えた結果であって、これからそうなるという約束ではない。ここは何度でも書いておきたいところです。
もうひとつ。半分と聞くと大きく感じますが、これは割合どうしの比べ方です。もともと20年のあいだに、どれくらい起きる出来事なのか。その土台の話が別にあります。土台が小さければ、割合が半分でも、実際の人数の差はそれほど大きくなりません。割合の話と人数の話は、分けて受け取るほうが安全です。
そして、長く入っていた人たちには、入浴時間以外の違いもあったはずです。年齢や喫煙のように測ってあった項目は調整されていますが、測っていない違いは残ります。19分という時間だけが効いていた、という証明にはなっていません。
それでも私たちがこの解析に目を留めるのは、健康の約束だからではありません。部屋のつくりで動かせる数字だからです。次の節は、その話になります。

19分いられるかどうかは、部屋の設計の問題です
ここからが、設置をしている側の話です。19分と聞いて、そんなに入れない、と思われた方が多いと思います。私たちが見てきた範囲では、日本の施設のサウナは80〜100℃くらいで運転されていることが多く、その温度帯だと12分計を一周するあたりで降りる方が目立ちます。これは統計ではなく、店をやりながら見てきた実感として書いています。
では、研究の舞台になったフィンランド式のサウナはどうか。原著の記述では、入浴者の頭の高さで80〜100℃、相対湿度は10〜20%とされています。数字だけ並べると、日本の施設と大きくは変わりません。実際、同じ研究グループが別に行った実験では、サウナ室を73℃・湿度10〜20%に設定していました。つまり違いは、温度の高さそのものよりも、空気の質と部屋のつくりのほうにある、ということです。
相対湿度という言葉にも、少し説明が要ります。相対湿度とは、その温度の空気が抱えきれる水蒸気の量に対して、いまどれだけ入っているかの割合です。空気は温度が高いほど水蒸気を多く抱えられますから、90℃の部屋の10%と、冬の外気の10%とでは、含んでいる水の量そのものは違います。ただ、肌に当たる感じでいえば、どちらもはっきり乾いています。薪ストーブを焚いた岩手の居間が乾くのと、方向は同じだと思ってください。
フィンランド式は、基本は乾いた空気の部屋です。相対湿度10〜20%というのは、かなり乾いています。そこへ石に水をかけて蒸気を立てるのがロウリュで、蒸気が満ちるのはその一時だけです。常時高い湿度で熱を運んでいるわけではなく、乾いた空気を土台にして、熱さを一時的に持ち上げる操作だと考えるほうが実際に近い。ずっと蒸され続けているわけではないから、19分という時間が現実的になります。根性の数字ではなく、設定の結果なのだと思います。
同じ部屋でも、座る場所で体感は別物になります。熱い空気は上にたまるので、上段と下段では温度計の針がはっきり違う。天井が高すぎると熱が頭の上で遊んでしまい、低すぎると逃げ場がなくなる。ベンチの高さと天井までの寸法、そして換気の取り方。この三つで、19分いられる部屋になるか、10分で降りたくなる部屋になるかが変わります。
薪のサウナストーブなら、薪の乾き具合も効いてきます。水分の残った薪では温度が上がりきらず、煙も出る。春に割って、夏を越させて、冬に焚く。薪ストーブとまったく同じ段取りが、そのままサウナにも要ります。
ショールームでは上段と下段の両方に温度計を置いています。数字を見てから座ってもらうと、たいてい驚かれます。表示された室温が同じでも、座る高さや換気の効き方で、いられる時間は変わってしまうからです。


移動時間がゼロだと、あと5分が足せる
岩手でサウナに通うとなると、まず道の話になります。冬は路面が凍り、日が落ちるのも早い。片道の運転を思えば、なんとなく元を取ろうという気持ちが働きます。せっかく来たのだから、と我慢して座り続ける。これは時間の伸ばし方としては、あまり良い伸ばし方ではありません。
自宅にサウナがあると、この構造が変わります。移動がゼロなので、無理をする理由がない。今日は12分でやめておこう、と気楽に降りられます。逆に、体調のいい日には、あと5分を足せる。足したところで失うものがないからです。
冬の朝、除雪をひと回りして家に入ると、背中は汗ばんでいるのに指先だけが冷えている。そういう日に、着替えて車を出してどこかへ行くかというと、たいていは行きません。庭に小屋があれば、火を入れて、支度をして、そのまま入れます。薪なら温まるまでに時間がかかりますし、電気なら先に温めておける。どちらが良いという話ではなく、その家の時間割に合うほうを選ぶ、という話です。
ここは念を押しておきます。家に置けば研究と同じことが起きる、という話ではありません。あの数字は、フィンランドの中年男性を20年追いかけた観察の記録です。日本の家庭に持ち込んだときに何が起きるかは、誰も調べていません。私たちが言えるのは、我慢して時間を伸ばすのと、無理なく座っていられるのとでは、同じ19分でも中身が違うだろう、というところまでです。
薪ストーブと同じで、火のある場所が敷地の内側にあるかどうかは、使う回数だけでなく、一回の過ごし方まで変えてしまいます。庭のサウナ小屋から出て、雪の匂いのする外気に当たって、また戻る。その往復を気負わずにできることは、実は温度設定と同じくらい大きい。岩手の冬は長いので、なおさらです。

それでも、長く入ることが目的ではありません
念のために書いておきます。19分は目標の数字ではありません。研究が示したのは、そういう入り方をしていた人たちの集団で、心臓突然死の発生が少なかったという関連です。観察研究なので、因果関係は示していません。総死亡との有意な関連が出ていないことも、対象が東部フィンランドの中年男性だけで、女性や日本人に当てはまるかは分からないことも、先に書いたとおりです。
最初に書いた「有意ではない」の話が、ここでもう一度効いてきます。総死亡との関連が見えなかったのは、関係がないと確かめられたからではありません。この人数と期間では見分けられなかった、というだけです。関係があるとも、ないとも言い切れない。だからこの記事では、断定を避けて書いています。
体は人それぞれです。血圧を指摘されている方、心臓の薬を飲んでいる方、通院中の方は、時間を伸ばす前に主治医に相談してください。何度で何分までなら大丈夫か、と具体的に聞くと、答えも具体的に返ってきます。飲酒後は入らない、入る前に水分を取る、ひとりで長く入らない。この三つは、温度設計より先に来る話だと思っています。
そして、つらいのを我慢して座り続けるのは、19分の意味とは違います。研究に出てくるサウナは、そこにいた人たちが19分いても平気でいられる部屋でした。同じ時間でも、中身が違う。時間を伸ばしたいなら、まず温度と湿度と換気を見直す。順番はそちらが先です。
D'STYLEは盛岡でサウナと薪ストーブを扱っています。ショールームには実際に入れるサウナ室があり、上段と下段の温度差や、ロウリュをかけたあとの湿度の動きを、その場で確かめていただけます。何分入れるかは、体力の話に見えて、実は設計の話です。ストーブの出力、石の量、換気の取り方、ベンチと天井の寸法。そこを詰めた部屋は、我慢しなくても長くいられます。岩手の冬は長く、外に出るのがおっくうになる季節が半年近く続きます。その半年に、家の中へ行ける場所がひとつ増えること。家庭用サウナの設置をお考えなら、まず一度、座ってみてください。数字より先に、体のほうが答えます。
本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- Laukkanen T, Khan H, Zaccardi F, Laukkanen JA. JAMA Internal Medicine. 2015;175(4):542-548(KIHDコホート。フィンランド東部の中年男性2,315人・42〜60歳を中央値20.7年追跡した観察研究。本文のハザード比は年齢・喫煙・血圧・脂質・運動量などを含む多変量調整後の値。同論文中でフィンランド式サウナは入浴者の頭部の高さで80〜100℃、相対湿度10〜20%と記述されている)
- Lee E, Laukkanen T, Kunutsor SK, Khan H, Willeit P, Zaccardi F, Laukkanen JA. European Journal of Preventive Cardiology. 2018;25(2):130-138(同じ研究グループによる実験研究。サウナ室の条件は73℃・相対湿度10〜20%。本文中のフィンランド式サウナの設定温度の例として参照)
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



