火のそばの夜の過ごし方として、読書、ボードゲーム、映画ときて、今日は第四の道です。手仕事。編み物、繕いもの、木削り。手を動かす夜は、頭を空っぽにする夜です。そしてここ岩手は、実は手仕事の伝統の濃い土地。火と手仕事の夜の話をさせてください。
編み棒のリズムは、薪の音に合う
冬の夜の編み物には、独特の心地よさがあります。編み目をひとつ、またひとつ。単純な動作の繰り返しに、手が没頭していくと、頭の中のおしゃべりが静かになっていく。編み物をする人が「無心になれる」と口を揃えるのは、あれが手で行う瞑想だからです。そこに、薪のはぜる音と炎のゆらぎが加わると、没頭はさらに深くなる。編み棒のかちかちという小さな音と、薪のぱちぱち。この二重奏は、冬の夜のためにあるような取り合わせです。編んでいるのがサウナハットや外気浴用の毛布カバーなら、言うことなしです。(火と読書の話は、こちら。)
岩手は、ホームスパンの土地
手仕事といえば、岩手には誇るべき伝統があります。ホームスパン。羊毛を手で紡ぎ、手で織る毛織物で、明治期に伝わって以来、岩手は国内随一の産地であり続けています。長い冬の手仕事として根づいたこの文化は、囲炉裏端の夜なべ仕事の系譜です。南部鉄器も、南部箒も、みんな冬の手が生んだもの。火のそばで手を動かす夜は、この土地の暮らしの、いちばん古い型のひとつなのです。ホームスパンのひざ掛けを、薪ストーブの前で。岩手の冬の完成形だと思います。(囲炉裏の話は、こちら。)
削る、繕う、直す夜
編み物だけではありません。ナイフで木のスプーンやバターナイフを削るグリーンウッドワークは、薪の端材が材料になる、薪ストーブの家と相性抜群の趣味です。削りくずは、焚き付けへ。穴のあいた靴下を繕い、道具の柄を直し、ヴィヒタを束ね直す。「直しながら使う」夜の手仕事は、暮らしの道具への愛着をそのまま深くします。(直す文化の話は、こちら。)
手仕事の灯りだけ、少し明るく
実用の注意をひとつだけ。手元の細かい作業は、部屋全体は暗くても、手元だけはしっかり照らしてください。読書灯と同じ理屈で、スタンドひとつで目の疲れがまるで違います。(灯りの話は、特等席のつくり方。)
没頭できる夜を、あなたの家に
岩手・盛岡のD'STYLEは、手を動かしたくなる夜の似合う薪ストーブの設置をお手伝いしています。編みかけの毛糸と、削りかけのスプーンと、燃えている火。それだけで足りる夜を。ご相談、いつでもどうぞ。



