六月から七月、岩手にも梅雨が来ます。火の家にとって、この季節は静かな防衛戦です。敵は、湿気。薪も、小屋も、部屋も、放っておけばじめじめの軍門に降ります。今日は、梅雨の知恵の総集編。乾かす腕の見せどころの季節です。
薪の「湿気戻り」に、風を
せっかく乾いた薪も、梅雨の長雨で表面が湿気を吸い戻します。防衛の基本は、雨に当てないことと、風を通すこと。薪棚の屋根の点検、地面からの跳ね返り対策、そして詰め込みすぎない積み方。梅雨どきに薪を移動するなら、崩して積み直すだけでも風の通りが変わります。心配はいりません、中まで乾いた薪の湿気戻りは表面だけで、晴れが数日続けば元に戻ります。慌てず、風に任せること。(薪棚の話は、こちら。)
サウナ小屋は、乾燥運転を一手間
サウナの大敵カビにとって、梅雨は繁忙期です。使用後の乾燥ルーティン(こちら)を、この季節だけは一段階厚めに。仕上げの空焚きを長めに、換気の時間もたっぷりと。しばらく使わない週も、週に一度は短時間ヒーターを入れて、小屋を乾かしてあげてください。人が入らなくても、乾燥運転だけはする。これが梅雨のサウナ小屋の延命術です。タオルとマットは、使うたび必ず屋内で完全乾燥を。
梅雨のだるさに、汗のリセット
じめじめは、体にも重くのしかかります。湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体に熱と水分がこもって、なんとなくだるい。梅雨どきの重さは、この汗の出しづらさが一因です。そこでサウナの出番。しっかり温まって気持ちよく汗をかき、外気で切り替える。こもっていた熱と気分が、すっと軽くなります。雨で外に出られない休日こそ、家サウナで一汗。窓を打つ雨音を聞きながらの外気浴もまた、梅雨だけの風情です。じめじめを、楽しみのほうへ変えてしまいましょう。
じめじめの夜は、あえて一夜焚き
そして、梅雨の隠し技です。肌寒くじめじめした梅雨寒の夜、あえて薪ストーブを短時間焚く「一夜焚き」。部屋の湿気が引き、洗濯物が乾き、体の冷えも取れる。除湿機より風情のある除湿です。やませの吹く冷夏の年(こちら)は、六月の炉に火が入る夜が何度もあります。梅雨に焚けるのも、薪ストーブの懐の深さです。
道具と鉄を、錆から守る
梅雨は、鉄にとっても試練です。焚かない季節の薪ストーブの本体や、火かき棒、火ばさみといった鉄の道具は、湿気で錆が出やすくなります。オフシーズンに入る前に、炉の中の灰をきれいに払い、金属の表面を乾いた布でひと拭き。気になるところに、ごく薄く専用のオイルをなじませておくと安心です。扉を少し開けて風を通し、炉内に湿気をこもらせない工夫も効きます。夏のあいだの静かなひと手間が、次の冬の焚きはじめを軽くしてくれます。サウナ小屋の道具も、同じ心づかいで。桶や柄杓、木のベンチは、しっかり乾かしてから風の通る場所へ。金属のヒーターまわりは、灰や水滴を残さずに拭き上げておきます。梅雨から夏にかけての湿気は、木にも鉄にも重くのしかかりますが、ひと手間で道具の寿命は大きく延びます。長持ちさせる家は、たいてい、季節の変わり目に手を動かす習慣を持っています。じめじめの季節の点検は、火と蒸気の道具への、静かな恩返しです。
梅雨明けの、からりとした一番風呂へ
防衛戦を戦い抜くと、ごほうびが来ます。梅雨明けの、からりとした夏空。よく守った薪はすぐ焚ける状態で夏の土用干しへ、カビ知らずの小屋は夏サウナの本番へ。梅雨は、夏の楽しみの仕込み期間でもあるのです。岩手・盛岡のD'STYLEは、季節ごとの手入れの相談も含めて、火と蒸気の暮らしに伴走しています。じめじめのお悩み、いつでもどうぞ。
写真: Markus Rantala (Makele-90) (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



