サウナの経年美の話(こちら)で、「美しく年を取らせるには手入れが要る」と書きました。今日はその実務の核心、使用後の乾燥ルーティンです。サウナの寿命を決めるのは、入っている時間ではなく、上がったあとの五分。カビと湿気に勝つための、毎回の型をお渡しします。

敵は、残った湿気です
サウナの木を傷める犯人は、熱ではありません。使用後に残る湿気です。ロウリュの蒸気、汗、濡れたタオル。上がったあとの小屋を閉め切ると、湿気は逃げ場を失い、木に染み込み、カビと黒ずみと腐れの温床になります。逆に言えば、毎回きちんと乾かしさえすれば、木のサウナは驚くほど長持ちします。熱そのものは、木にとって、乾かす力の頼もしい味方でもあります。
木が、乾くと強くなる理由
サウナに使われる木は、呼吸する素材です。湿気を吸っては吐き、その乾き縮みを繰り返しながら、何十年も生きていきます。だから、使うたびにしっかり乾かしてやれば、木はまた元の強さを取り戻す。フィンランドの湖畔に、築数十年のサウナ小屋が現役で立っているのは、この乾燥の習慣が文化として根づいているからです。彼らは、サウナを建てることと同じくらい、乾かすことを大切にしてきました。手入れとは、木の呼吸を助けてやることだと考えると、ぐっと分かりやすくなります。しっかり乾いた木は、香りも立ち、肌ざわりもさらりとして、座るたびに気持ちがいいのです。
五分のルーティン、四つの手順
型は簡単です。一、仕上げの空焚き。全員が上がったあと、ロウリュをせずに、ヒーターの熱だけで五〜十分、室内を乾かします(電気式ならそのまま数分、薪式なら残り火が仕事をしてくれます)。二、水気を払う。ベンチと床の水たまりを、スクレーパーやタオルでさっとぬぐう。座面を軽く拭くだけでも、黒ずみの出方が全然違います。三、桶とひしゃくの水を捨てて、伏せる。残り水は、カビの水源です。四、熱が落ち着いたら、ドア(と窓)を開けて換気。外の乾いた空気に、仕事を引き継ぎます。ここまでで、実働五分。ととのいの余韻のなかでやる、いい儀式です。(道具の手入れは、こちら。)
季節ごとの、ひと工夫
梅雨と秋の長雨の時期は、換気の時間を長めに。冬は、開けっ放しにすると凍結が心配な設備もあるので、空焚きを主役に。ときどき晴れた日に、マットやすのこを外に出して日光浴させると、リセットがかかります。日光は、いちばん手軽で強力な、天然の乾燥機であり殺菌灯です。そして年に一度は、ベンチを外しての大掃除と点検を。この年次点検は、プロに任せるのも手です。(掃除の現場の話は、こちら。)
黒ずみが出ても、あわてない
それでも、うっかり閉め切った翌朝、うっすら黒ずみが出ることはあります。あわてなくて大丈夫です。早めに気づけば、専用の洗剤や、表面をサンドペーパーで軽く整えるだけで、木はきれいに戻ります。大切なのは、放っておかないこと。小さなうちに手を入れれば、大ごとにはなりません。手入れは、こまめに、軽く。これが、木と長く付き合ってきた人たちの、共通の作法です。神経質になる必要はなく、気づいたら拭く、それだけで十分に間に合います。
習慣にした家の小屋は、匂いでわかる
乾燥ルーティンが根づいた家のサウナは、扉を開けた瞬間の匂いが違います。カビ臭さのかけらもない、乾いた木と、ほのかなロウリュの残り香。トントゥも住み心地のいい小屋です。(妖精の話は、こちら。)岩手・盛岡のD'STYLEは、設置のときにこのルーティンを実演つきでお渡ししています。何十年ものの小屋を、一緒に育てましょう。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: Tomi Mäkitalo (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



