岩手の冬の風物詩といえば、岩洞湖のワカサギ釣りです。氷点下の湖の上、テントを並べて、小さな穴をのぞき込む人たち。本州一の寒さと言われるあの土地で、じっと当たりを待つ数時間(岩洞湖の寒さの話は、こちらに書きました)。今日はその続き、釣りのあとの話です。氷の上で冷えた体には、サウナという最高の帰り道があります。

氷上の冷えは、独特です
ワカサギ釣りの冷えは、登山や雪かきの冷えと少し違います。運動量が少ないまま、氷の上に何時間も座っている。足の裏から、腰から、じわじわと底冷えが染みてくる、静的な冷えです。厚着をしても、体の芯の温度は、少しずつ削られていく。テントとストーブで武装しても、帰るころには、体のどこかに冷えの芯棒が残っています。この芯棒、家の風呂だけでは、なかなか抜けません。手袋を外して仕掛けを結び直すたびに、指先の感覚が遠のいていく。あの静かな寒さと向き合う時間もまた、ワカサギ釣りの醍醐味です。
岩洞湖という、本州の底冷え
岩洞湖は、盛岡の北、標高およそ六六〇メートルの高地にある人造湖です。北上川の支流をせき止めてつくられたこの湖は、放射冷却の底にあたり、氷点下二十度前後まで下がる朝も珍しくありません。本州でも指折りの寒さです。この寒さで全面結氷が厚く張り、氷に穴をあけて釣る「穴釣り」が成り立つ。厳しい寒さが、この土地ならではの遊びを生んでいるわけです。その寒さの分だけ、あとのサウナの熱は、ありがたく体に沁みます。氷上に色とりどりのテントが点々と並ぶ光景は、岩手の冬の名物。氷の厚さを見きわめてから始まる、寒さと安全のあいだの遊びです。
サウナは、解凍装置
そこで、サウナです。深部まで届く熱は、底冷えの芯棒を根元から溶かしてくれます。かじかんでいた足先が、熱の中でじんじんとほどけていく数分間は、釣り人へのごほうびそのもの。冷えた日のサウナは、いつもの倍、気持ちいい。フィンランドの人たちが氷の湖で泳いでからサウナに駆け込む、あの往復を、岩手の釣り人は釣り竿を持ってやっているようなものです。湖の民同士、楽しみ方は同じなのです。(冷えと温めの理屈は、雪かきとサウナの話と同じです。)
釣果の天ぷらと、「公魚」の字
この一日には、完璧な締めが待っています。釣ってきたワカサギの天ぷらです。ワカサギはキュウリウオ科の小魚で、多くが一年で一生を終える魚。「公魚」と書くのは、江戸時代に霞ヶ浦のワカサギが将軍家へ献上され、公儀御用の魚とされたことに由来すると言われます。将軍に献じられた魚を、自分で釣り、自分の家の熱で回復した体で食べる。レモンをきゅっと絞って、熱いうちに。頭からしっぽまで丸ごと食べられ、淡白な身に衣の油がまわると、いくらでも箸が進みます。子どもの釣った五匹も、ちゃんと主役です。(サ飯の幸せは、こちら。)
「寒い遊び」が、二倍おいしくなる
家にサウナがあると、冬の外遊びの計算が変わります。寒さは、あとで熱に変換されるポイントのようなもの。冷えれば冷えるほど、サウナが効く。ワカサギも、スキーも、雪かきさえも、「あとのサウナ」込みで組み立てると、岩手の冬はぜんぶ遊び場になります。寒さを嫌うのではなく、寒さを味方につける。この発想の切り替えこそ、雪国で冬を楽しむ人の知恵です。(岩手の冬の楽しみは、サウナ歳時記。)
釣り人のご家庭に、おすすめです
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、冬の遊び人たちの基地づくりをお手伝いしています。釣りから帰って三十分後にととのっている暮らし、始めませんか。おすすめの一台のご相談、いつでもどうぞ。
写真: Martin Stojanovski (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



