「いい汗をかいた」という言い方があります。感覚の話だと思っていましたが、実は測れるものだと知りました。連続して熱に当たると、汗の中の塩分がだんだん下がっていく。汗腺が塩分を体に呼び戻すようになるからだそうです。盛岡の気候と自宅サウナの使い方に重ねながら、2本の研究を読んでいきます。
梅雨寒のあとに、いきなり夏が来る土地
岩手の6月は、まだ肌寒い日が残ります。ヤマセと呼ばれる冷たい東風が吹き込み、半袖を仕舞い込んだまま梅雨が明けることもある。そうして油断していると、7月にはもう真夏の日差しです。
体は暑さに慣れる準備ができていないまま、夏本番を迎えることになります。薪ストーブの店をしている私たちは、冬の寒さの話をすることが多いのですが、実は夏の「熱に慣れていない体」も、現場でよく相談される話題です。

汗の塩分は、連続して熱に当たると下がっていく
アメリカの研究チームが2018年に発表した報告があります(Buono MJほか、Journal of Thermal Biology誌、PMID 29301696)。4名の被験者に、気温40℃・湿度40%の環境で2時間の歩行を7日間連続で行ってもらい、汗をかく速さがそろった状態で汗の中のナトリウム濃度を測定しました。
結果は、3日目の時点ですでに汗中ナトリウム濃度が有意に下がっており、7日間を通して見るとほぼ直線的に減少していったと報告されています(相関係数r=-0.50、p<0.05という統計上の目安が示されています。pは偶然でこの差が出る確率のことで、0.05を下回ると「偶然とは考えにくい」とされる目安です)。研究者たちは、汗腺の中にある管(導管)がナトリウムを体に吸い戻す働きが、連日の熱への曝露によって高まったためだと説明しています。
別の研究でも、同じ方向の変化が報告された
もう1本、オランダの研究チームが2020年に発表した報告があります(Klous L、De Ruiter C、Alkemade P、Daanen H、Gerrett N、Journal of Thermal Biology誌、PMID 33077118)。こちらは8名の被験者に、気温33℃・湿度65%の環境で自転車運動を10日間連続で行ってもらい、汗の成分を追いました。
汗の中のナトリウムだけでなく、クロール(塩化物イオン)や乳酸も含めて、1日目と比べておよそ60%まで下がったと報告されています。方法も対象者も違う2本の研究が、同じ方向を向いていたということです。
ただし、どちらも被験者は4名、8名という少人数です。個人差の大きい生理反応を、これだけの人数で一般化するのは慎重であるべきだと、私たちも書きながら思います。研究そのものも、少数の被験者を対象にした基礎的な生理学の実験だと理解しています。

「連続」であって、「週末だけ」ではない
ここで大事なのは、研究の条件が「連続して」熱に当たったという点です。3日目、7日目、10日目という言葉が出てくる通り、間を空けずに繰り返すことが変化の前提になっています。
週末にまとめてサウナ施設へ行く、という入り方とは、条件がそもそも違います。盛岡の施設まで車で30分かかるとして、平日の夜に毎日通うのは現実的ではありません。連続して熱に当たるという研究の条件を、生活の中でそのまま再現しようとすると、どうしても自宅に近い場所にサウナがあるかどうかという話になってきます。
盛岡の気温で見る、夏支度の目安
盛岡地方気象台の平年値を見ると、5月の平均気温はまだ15℃前後、6月に入って20℃に近づき、7月・8月でようやく23℃台まで上がります。つまり、体が暑さに慣れる時間は、5月の終わりから6月にかけての、ほんの1か月ほどしかありません。
私たちがKUUTAの引き渡しでお伝えしているのは、この時期に短時間・低めの温度から始めるという使い方です。いきなり長く、熱くではなく、5月のうちから10分程度、いつもより低い温度で慣らしていく。研究が示した「連続」という条件に、自宅であれば近い形で応えられます。

湿度を足せるかどうかで、汗のかき方が変わる
フィンランド式のストーブはロウリュ(サウナストーンに水をかけて蒸気を起こすこと)で湿度を自分で調整できます。乾式のストーブでは、この調整ができません。
汗のかき方や体感の上がり方は、温度だけでなく湿度によっても変わります。研究の実験環境も、湿度40%や65%という条件が明記されていました。自宅に設置する際にどちらの方式を選ぶかは、こうした汗のかき方の違いも踏まえて、私たちは現場でお話しするようにしています。

水分と塩分は、一般的な熱中症対策の範囲で
汗の塩分が下がっていくという話をすると、「じゃあ塩分を摂らなくていいのか」と聞かれることがあります。研究が示しているのは、汗腺の働きが変わっていくという体の反応であって、水分や塩分の摂り方そのものを変えるべきだという結論ではありません。
暑い時期にサウナへ入る際は、一般的な熱中症対策と同じく、こまめな水分補給を心がけていただくのが基本です。持病があり水分や塩分の管理をされている方は、必ず主治医にご相談のうえでお使いください。
体が季節に追いつくまでの、ひと月の話
梅雨寒から真夏まで、駆け足でやってくる岩手の夏。汗の塩分が下がるまでに研究では3日、直線的な変化が見えるまでに7日から10日かかっていました。
体が季節に追いつくには、思っているより日数が必要だということかもしれません。自宅にサウナがあれば、その日数を無理なく重ねていくことができます。庭先や勝手口の近くに置いたKUUTAで、今年の夏も少しずつ体を慣らしていく。そんな使い方のご相談も、私たちはいつでもお受けしています。
本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。

研究が測っていたのは、汗という液体の中身が、日を追ってどう変わっていくかという地味な事実でした。派手な効能の話ではありません。ただ、連続して熱に当たるという条件だけは、はっきりしています。\n\n施設への往復では続けにくいことも、家の裏に置いたサウナなら続けやすい。岩手の短い初夏を、体が少しずつ慣れていく季節として使ってみる。そんな提案として、この2本の研究を紹介しました。
参照した研究
- Buono MJ ほか. Journal of Thermal Biology. 2018(PMID 29301696)
- Klous L, De Ruiter C, Alkemade P, Daanen H, Gerrett N. Journal of Thermal Biology. 2020(PMID 33077118)
- 盛岡地方気象台 平年値
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



