秋の岩手の道を走っていると、よく出会う光景があります。薪をうずたかく積んだ軽トラックです。りんご箱と並ぶ、この土地の秋の風物詩。運転席の人は、たいてい少し得意げな顔をしています。分かります。荷台一杯の薪は、冬の安心そのものですから。今日は、薪文化の陰の主役、軽トラの話です。

軽トラは、薪暮らしの万能選手
薪の暮らしが本格化すると、軽トラのありがたみが骨身にしみます。果樹園の剪定枝をもらいに、河川支障木の配布に、薪屋への引き取りに。細い農道に入れて、汚れを気にせず積めて、荷台は水で洗える。乗用車のトランクでは、量も汚れも話になりません。岩手の農家に軽トラが一家に一台あるように、薪の家にも軽トラ(または軽トラを借りるあて)があると、燃料調達の自由度が一気に広がります。農協やホームセンターの貸し出し軽トラ、友人の一台を借りるときのお礼の薪一山。このあたりの貸し借りの呼吸も、薪文化のうちです。誰かの薪割りや積み込みを手伝った帰りに、軽トラで少し分けてもらう。そんなやりとりが、ご近所づきあいのあたたかいきっかけにもなります。
「軽トラ一台分」という単位
薪の世界には、独特の単位があります。一束、一立米、そして「軽トラ一台分」。平積みでおよそ0.4〜0.5立米、あおりの高さまでしっかり積めばもう少し。薪の売買や原木のやりとりで、この単位は今も現役です。わが家は一冬に軽トラ何台分、という把握ができるようになれば、立派な薪暮らしの中堅です。この体感の単位を持つと、薪の量を目で見積もれるようになり、買い過ぎも足りなさも減っていきます。(薪の入手の話は、基礎知識と薪販売の話。)
世界が惚れた、日本の軽トラ
雑学をひとつ。この日本の軽トラック、近年は海の向こうでも人気者です。小回りが利いて燃費がよく、頑丈で壊れにくい。アメリカでは、農場やハンターたちが中古の日本製軽トラをわざわざ輸入して愛用する動きが広がっています。狭い畦道でも山道でも入っていける実用性は、世界のどこでも重宝されるのです。日本の田んぼと畑を支えてきた名脇役が、薪を積んで山と家を往復する姿は、実にこの車の本領。派手さはないけれど、生活のいちばん近くで働く、頼れる相棒です。ちなみに軽自動車という規格は、日本独自のもの。この小さな働き者は、まぎれもない日本の発明品なのです。
積み方は、安全第一で
荷台の心得も少しだけ。重い薪は前寄り(キャビン側)に、荷重を偏らせない。あおりより上に積むなら、ロープでしっかり固定。南京結び(トラッカーズヒッチ)をひとつ覚えると、荷締めが別世界になります。過積載は車にも道交法にも反しますから、欲張りは禁物。運転は、いつもより車間を長く。家に着いて、荷台から薪棚へ積み替えるところまでが遠足です。晴れた休日に、家族総出で薪を運ぶ半日は、それ自体が秋の行事になります。(腰にやさしい運び方は、こちら。)
持たない人は、配達という手
もちろん、軽トラがなくても薪の暮らしはできます。乾燥薪の配達を頼めばいいのです。当店の薪販売も、ご自宅までお届けしています。自分で走って集める楽しみと、届けてもらう気楽さ。両方を組み合わせるのが、現実的で長続きする形です。最初の一冬は配達で楽をして、慣れてきたら自分で集める範囲を少しずつ広げる。そんな付き合い方が、無理がありません。
薪のある秋を、一緒に
岩手・盛岡のD'STYLEは、薪ストーブの設置から薪の販売・配達まで、薪の暮らしをまるごとお手伝いしています。荷台一杯の得意げな顔、あなたも今年の秋から。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: kooikkari (Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.0)


