「サウナで音楽を聴いてもいいものですか」。ときどきいただく、かわいらしいご質問です。フィンランドの伝統では、サウナは静寂の場所(静けさの話)。でもそれは公衆の作法の話で、自宅サウナはあなたの城です。今日は、サウナと音の話。かける日と、かけない日があっていいのです。

サウナには、もともと音楽が鳴っている
まず知ってほしいのは、サウナが無音の箱ではないことです。薪ストーブ式のサウナなら、薪のパチパチという弾ける音、炎の低いごうという声。ロウリュをすれば、灼けた石が水を受けて、ジュワッと蒸気の音を鳴らす。外では風が木々を揺らし、冬は雪の静けさが窓の外に積もる。これらは世界のどんな音響設備も再現しきれない、天然の音楽です。初めての方こそ、まずはこの音だけで数回入ってみてください。耳が澄んでいく感覚が味わえます。
静けさは、フィンランドの作法
かける話の前に、かけない話を少し。フィンランドには「サウナでは教会にいるように振る舞え」という古い言い回しがあります。サウナは体を清めるだけでなく、心を静める神聖な場所とされ、大声も争いごとも、そこには持ち込まないのが昔からの作法でした。だから公衆のサウナでは、今も静けさが尊ばれます。音のない時間は、退屈とは違います。薪の爆ぜる音と、自分の呼吸だけが残る数分。それは日常では意外なほど得がたい、上等な静寂です。まずは静けさというごちそうを、しっかり味わってみてください。
音楽をかけるなら、外に置いて小さく
そのうえで、好きな一曲と入りたい夜もあります。大歓迎です。コツは二つ。機材はサウナ室の外へ。スピーカーもスマホも、80度の熱と蒸気は苦手です。脱衣室や窓の外に置いて、ドア越し・壁越しにほんのり聞こえるくらいが、湯気と音のちょうどいい混ざり方です。防水の小型スピーカーを室内に持ち込むなら、床近くの低温帯に短時間だけ。もう一つのコツは、音量を会話より小さく。サウナの音楽は主役の座を薪に譲って、脇役でいるときがいちばん粋です。
決まった一曲が、心のスイッチになる
音楽には、時間を仕切る力があります。いつも同じ一曲をサウナの支度のときにかけると、その旋律が流れた瞬間に、頭が「これからととのう時間だ」と切り替わる。決まった音と決まった所作は、心のスイッチになります。忙しい一日から、火と蒸気の時間へ。その境目に、お気に入りの静かな一曲を置いてみてください。何度も繰り返すうちに、その曲は、あなたのサウナのためだけのテーマソングに育っていきます。夜の一曲、休日の昼の一曲と、時間帯で決めておくのも楽しいものです。音との付き合い方に、正解はありません。無音を愛する日があり、静かな一曲に背中を押される日があり、賑やかに口ずさみたい日もある。大切なのは、そのどれもが許されるのが自宅サウナだということです。施設の作法を気にせず、今日の自分に合う音を選べる。かける自由も、かけない自由も、両方とも手の中にある。その日の心に、いちばんしっくりくる音量と選曲を。あなたのサウナの、あなただけのちょうどよさを、ゆっくり探してください。
選曲は、体温に合わせて
選曲の楽しみも書いておきます。温まる時間には、テンポのゆるい曲が体に合います。外気浴には、いっそ無音が最高の一曲。ととのいの時間に耳へ何も入れないと、心臓の音と風の音だけが残って、これがまた良いのです。週末の昼サウナに好きなラジオ、ひとりの夜は薪の音だけ。日によって選べるのが、自宅サウナの贅沢です。
あなたの城の音まで、ご相談どうぞ
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターの設置から、楽しみ方の細部まで、サウナのある暮らしをまるごとお手伝いしています。音の好みの話も、けっこう盛り上がります。店でどうぞ。
写真: Vadelmapilli (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



