子どもの絵本を読み聞かせていて、ふと気づいたことがあります。名作と呼ばれる絵本には、いい火が、実にたくさん出てくるのです。今日は、絵本の中の火をめぐる話。そして、その絵本をどこで読むのがいちばんか、という話です。

ぐりとぐらの、あの黄色いカステラ
まず、国民的名作『ぐりとぐら』。森で見つけた大きな卵で、大きなカステラを焼く、あのお話です。思い出してください、あのカステラは、大きな鍋と、焚き火で焼かれます。ふくらんでいく生地、森中に広がる匂い、匂いに集まってくる動物たち。あの場面の多幸感は、「火が食べものに変わる魔法」と「火のまわりにみんなが集まる幸せ」の、絵本における完璧な表現です。薪ストーブで焼き芋や焼きりんごをやる日、子どもの目に宿るのは、まさにぐりとぐらの世界です。(焼きりんごの話は、こちら。)
三匹のこぶたは、煙突の物語
『三匹のこぶた』の結末を、覚えていますか。れんがの家を吹き飛ばせなかった狼は、最後、煙突から侵入を試みて、暖炉の大鍋に落ちる。あの物語は、実は「頑丈な家と、火のある暮らしが家族を守る」という寓話です。『てぶくろ』や『かさじぞう』、囲炉裏端の昔話たち。厳しい冬と、それを越えるための火と暖かさは、世界中の児童文学の背骨になっています。子どもたちは絵本を通じて、火が怖いものであると同時に、暮らしを守るものであることを、物語の形で学んでいるのです。(火育の話は、こちら。)
マッチ売りの少女の、小さな炎
火を描いた名作は、あたたかい話ばかりではありません。アンデルセンの『マッチ売りの少女』では、凍える少女がマッチを一本ずつ擦り、その小さな炎の中に、暖かいストーブや、ごちそうや、優しい祖母の姿を見ます。火は、暖かさの象徴であると同時に、それを持たないことの切なさをも照らす。子どもは、火のありがたさを、物語の芯で深く受け取ります。あたたかな部屋でこの絵本を読み聞かせるとき、膝の上の子が、無意識にストーブのほうへ体を寄せる。その小さな仕草に、こちらの胸が熱くなります。火のある家で読むからこそ、この物語はいっそう心にしみるのです。
読み聞かせの特等席は、火の前
そして、これらの絵本をどこで読むか。答えはもう、お分かりですね。薪ストーブの前です。絵本の中で焚き火が燃えるとき、現実の部屋でも薪がはぜている。物語の火と目の前の火が重なる読み聞かせは、子どもの記憶に、特別な深さで刻まれます。膝の上の子どもの重さ、ページをめくる音、薪の音。読んでいる親のほうが、先にうっとりしてしまう時間です。(炉端の語りの伝統は、遠野物語の話に。)
物語は、炉端で生まれた
そもそも物語は、火のまわりで生まれ、火のまわりで受け継がれてきました。囲炉裏を囲み、祖父母が語る昔話に、子どもたちが目を輝かせる。遠野の昔話も、北欧の神話も、もとは文字ではなく、炎に照らされた語りの声でした。ゆらめく火明かりは、聞き手の想像力をふくらませる、いちばん古い舞台照明です。テレビや動画にはない、語り手と聞き手が同じ火を見つめる時間。絵本の読み聞かせは、その何千年と続いてきた炉端の営みを、現代の家によみがえらせる行いでもあるのです。膝の上の子の重みごと、その時間をゆっくり味わってください。
物語の火を、目の前の火に
絵本で火に憧れた子どもに、火のある暮らしを贈れたら、それは素敵な子育てだと思います。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハースストーンやバーモントキャスティングスの薪ストーブの設置で、読み聞かせの特等席づくりをお手伝いしています。ご相談、いつでもどうぞ。カステラの焼ける家、つくりませんか。
写真: Robyn Jay from Brisbane, Australia (Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.0)



