これまでロシアのバーニャ、韓国のチムジルバンと、世界の蒸し風呂文化を紹介してきました。今回は、地中海と中東の文化が交わる国、トルコの「ハマム」です。800年以上にわたってアナトリアの文化を象徴してきたとされる、大理石の浴場文化です。

ローマ・ビザンツから、オスマンへ
ハマムの起源は、ローマやビザンツ帝国の時代の公衆浴場文化にさかのぼるとされています。その後、オスマン帝国の時代に独自の発展を遂げ、帝国内のほとんどの都市や町に浴場が設けられるようになりました。単なる洗浄の場ではなく、健康・社交・浄化のための中心的な施設として、都市の暮らしに組み込まれていたといいます。
「ギョベックタシュ(へそ石)」という大理石の台
ハマムの構造は独特です。外側の温かい部屋、中央の高温の部屋、そして外側の涼しい休憩室という三段階の部屋で構成されています。中心となる高温の部屋には、下から熱せられた大きな大理石の台が置かれています。トルコ語で「ギョベックタシュ(へそ石)」と呼ばれるこの台に横になり、じんわりと体を温めるのがハマムの基本です。
体が十分に温まったところで、「テラック(男性側)」「ナトゥル(女性側)」と呼ばれる専門の担当者が、「ケセ」という目の粗い布製の手袋で全身を優しくこすり、古い角質を落としていきます。このケセによる垢すりは、ハマムを象徴する習慣として、今も変わらず受け継がれています。
星形の明かり取りが照らす部屋
都市部でも村でも、ハマムの建物は大理石の装飾や彫刻の施されたドーム、星形の小さな明かり取りで飾られてきました。天井の小さな穴から差し込む光が、蒸気の立ち込める部屋を静かに照らす。実用の浴場でありながら、建築としての美しさにも力が注がれてきたのがハマムの特徴です。
熱の伝え方という視点
フィンランドのサウナが空気を熱し、ロシアのバーニャが蒸気を多く使い、韓国のハンジュンマクが石窯そのものを熱するのに対し、トルコのハマムは大理石の台を下から熱し、そこに横たわることで体温を上げるという、また違ったアプローチを取っています。同じ「体を温めて汗を流す」という目的でも、それぞれの土地で手に入る材料と気候に応じて、まったく違う方法にたどり着いている。この違いを知ることは、火や熱を扱う仕事をしていて、素直に面白いところです。
よくあるご質問
Q. ハマムとサウナは、何が違いますか。
ハマムは大理石の台(ギョベックタシュ)を下から熱し、蒸気の多い環境で体を温める点が特徴です。ケセによる垢すりも大きな違いです。フィンランドサウナは空気そのものを熱し、ロウリュで一時的に蒸気を加える点が異なります。
Q. 「テラック」「ナトゥル」とは何ですか。
ハマムで垢すりやマッサージを担当する専門スタッフのことです。男性利用者を担当するのがテラック、女性利用者を担当するのがナトゥルです。
Q. 日本でハマムのような体験はできますか。
本格的なハマム施設は限られますが、蒸気を多く使うサウナ環境をつくることで、近い雰囲気を再現することは可能です。ご興味があればご相談ください。
D'STYLEは盛岡で薪ストーブとサウナを扱っています。世界各地の熱と蒸気の文化を知ることは、自分たちの暮らしに合った形を見つけるヒントになります。ご相談は無料です。
本記事は、トルコのハマム文化に関する一般的な紹介です。



