薪ストーブの写真を見るとき、ストーブ本体の脇に、すっと立っている道具たちに目が行く方は、なかなかの通です。火かき棒、ブラシ、スコップ。黒い鉄の道具が並んだ佇まいは、それだけで一枚の絵になります。でも、彼らは飾りではありません。毎日、何度も手に取る、働き者の相棒たちです。今日は、火の道具の話をさせてください。

火かき棒は、火との対話の道具
まず、いちばん出番が多いのが、火かき棒(ファイヤーツール)です。燃えている薪の位置を直し、熾火をならし、空気の通り道をつくる。火の勢いが落ちてきたとき、薪をほんの少し動かすだけで、炎がぱっと蘇ることがあります。火かき棒は、いわば火と対話するための箸。長さと重さが自分の手に合ったものを選ぶと、火いじりがぐっと楽しくなります。そして、火いじりは単純に楽しいのです。囲炉裏の時代から、火の番が子どもと年寄りの仕事だったのは、あれが誰にとっても面白いからだと、私は思っています。触りたくなる道具は、いい道具です。
革グローブは、命綱に近い
次に、革の耐熱グローブ。これは道具というより、安全装備です。熾火の近くに薪を足すとき、熱くなった扉のハンドルに触れるとき、素手では一瞬で火傷します。厚手の革グローブがひとつあれば、炉の中の作業が、落ち着いて、あわてずにできる。焚き火用の薄いものではなく、薪ストーブ用の、肘の近くまで覆う長いものを選んでください。丈夫な一双を定位置に置いておくだけで、火との付き合いの安心感が、まるで変わります。安全は、いちばん地味な道具に宿るものです。
灰の道具と、薪の置き場
灰スコップと小さなバケツは、灰の始末の必需品です(灰の話はこちらに書きました)。熾火が長く生きているので、必ず金属製を選んでください。そして、ストーブの脇の薪の置き場、ログラック。数日分の薪を室内に置いておくと、薪が部屋の温度と乾きになじんで、火つきが目に見えて良くなります。鉄のラックに整然と積まれた薪は、インテリアとしても一級品です。薪のある部屋の景色は、それ自体が、これから訪れる暖かさの予告編になってくれます。
温度計は、火の言葉の翻訳機
忘れてはいけないのが、ストーブ用の温度計。天板や煙突に置く小さな計器ですが、これが、火の状態を教えてくれる翻訳機になります。温度が低すぎれば、くすぶって煤をためているサイン。高すぎれば、焚きすぎのサイン。適温の範囲できれいに焚けているかどうかは、ストーブと煙突を長持ちさせる基本でもあります。慣れてくれば炎の色や音でわかるようになりますが、最初の一年は、温度計がいちばんの先生になってくれます。(きれいに燃やす焚き方は、こちら。)
手入れの道具は、家を守る道具
もうひとつ、地味だけれど大切な一群があります。手入れの道具です。ガラスの煤を落とすためのやわらかい布やスクレーパー、炉内の灰を掃くための小ぼうき、そして煙突掃除のためのブラシ類。日々のガラス拭きは数分の習慣ですが、これを続けるだけで、炎はいつも気持ちよく眺められます。煙突の点検と掃除は、家そのものを火事から守る、いちばん大事な手入れです。ご自分でやる方も、私たちのような専門の者に任せる方もいますが、道具を知っておくと、火との付き合いはぐっと安心なものになります。使う道具と、手入れの道具。その両方がそろって、火の道具立ては完成です。
道具から入るのも、正解です
いい道具は、暮らしを丁寧にしてくれます。火の道具が壁際にきちんと揃っている家は、それだけで、火を大切にしている家に見えるものです。岩手・盛岡のD'STYLEでは、ハースストーンやバーモントキャスティングスの薪ストーブ本体はもちろん、道具類のご相談も承っています。設置のときに、暮らしに合わせたおすすめの道具一式をご提案します。形から入る、道具から入る。火の暮らしでは、それも立派な、正しい入り方です。
写真: Thomas Bresson (Wikimedia Commons, CC BY 3.0)



