夏の外気浴の、最大にして最小の敵。蚊です。極上の脱力の耳元に、ぷーん。あの羽音一発で、ととのいの魔法は解けます。今日は、夏サウナの防衛戦。敵の習性を知り、装備を整え、風情まで確保する作戦会議です。

敵情分析 / 蚊はサウナ上がりが大好物
残念なお知らせから。サウナ上がりの体は、蚊にとってごちそうの条件が揃っています。蚊は、二酸化炭素、体温、汗の匂いに引き寄せられる虫。深い呼吸で二酸化炭素を多く吐き、体温が高く、汗ばんだ外気浴の人間は、庭でいちばん目立つ標的なのです。しかも脱力して動かない。敵にとって、これほど襲いやすい獲物はいません。つまり、無策の夏の外気浴は、献血ボランティアです。
刺すのは、産卵前のメスだけ
敵をもう少し知ると、戦い方が見えてきます。実は、人を刺す蚊はメスだけです。しかもふだんは花の蜜や樹液を吸って生きていて、血を求めるのは産卵の時期だけ。卵を育てるための栄養を、動物の血から得ているのです。狙われる理由が分かれば、腹の立ち方も少しやわらぎます。飛ぶ力は弱く、行動範囲もせいぜい数十メートルほど。二酸化炭素と体温と匂いをたよりに寄ってくる相手ですから、風で匂いを散らし、発生源の水を断てば、勝負はぐっと有利に傾きます。
防衛策 / 時間、風、水たまり
基本の三策。一、時間帯。蚊の活動のピークは夕方と朝方です。真昼と、気温の下がった深夜は比較的手薄。夏の外気浴は、あえて昼か、遅い時間にずらすのが一手です。二、風。蚊は飛ぶのが下手で、扇風機の風程度で近寄れなくなります。屋外用の充電式扇風機を椅子に向けるだけで、防御力は劇的に上がり、涼しさのおまけ付き。三、発生源を断つ。庭の水たまり、バケツの雨水、植木鉢の受け皿。ボウフラの住処を週一で点検するのが、いちばんの根治です。
蚊帳という、古くて新しい答え
そして、決戦兵器が蚊帳です。近年、キャンプ用品として吊り下げ式やテント式の蚊帳(モスキートネット)が充実しています。外気浴の椅子ごと、すっぽり蚊帳の中へ。網越しの風は通り、敵は入れず、視界は意外なほど気にならない。蚊帳の中の外気浴は、守られた安心感もあって、なかなかの風情です。昔の日本人が蚊帳の中で夏の夜を過ごした知恵、外気浴で復活させましょう。仕上げに、少し離れた風上で蚊取り線香を。あの匂いは、夏の夜の調べのようなものです。(夏サウナの作法は、こちら。)
蚊取り線香は、明治のニッポンの発明
夏の夜の心強い相棒、蚊取り線香は、実は日本生まれの発明品です。原料は除虫菊という白い花で、明治のはじめ、和歌山の上山英一郎がこの花を蚊よけに役立てることを広めました。当初は棒状でしたが、より長く燃え続けるようにと、あの渦巻き型が考え出されたと伝わります。天然由来の煙で虫を遠ざけ、香りで夏の訪れを告げる。外気浴の椅子の少し風上に一巻き置けば、蚊よけの実利と、夏の情緒が、いっぺんに手に入ります。最近は、天然のハッカ油を薄めて肌や衣類に吹きかける虫よけや、蚊の寄りにくい香りのハーブを庭に植える手も人気です。化学の力に頼りきらず、香りと風で敵をいなす。昔ながらの知恵は、外気浴の庭と、じつによく気が合います。
岩手の夏の、朗報
最後に朗報を。岩手の夏は夜が涼しく、蚊のシーズンも本州南部より短めです。そして秋が来れば、敵は撤退し、外気浴の黄金期(歳時記)が始まります。それまでの数週間の攻防戦、この記事の装備でどうぞ。岩手・盛岡のD'STYLEは、夏も冬も外気浴の楽しい庭づくりをお手伝いしています。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: Ximonic (Simo Räsänen) (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



