自宅サウナのご相談で、最も多い質問のひとつがこれです。「やっぱり、水風呂も作らないとダメですか?」。設備が増えれば費用も手間も増えますから、切実な問いです。正直にお答えします。冷水シャワーと外気があれば、ちゃんとととのえます。水風呂は、あとから足せる楽しみに取っておけます。

ととのいの本体は、温冷の「差」である
ととのいを生むのは、水風呂という設備ではなく、温→冷→休の切り替えです(温冷交代の話)。温めて広がった血管が、冷やされてきゅっと締まり、休憩でふわりとゆるむ。この落差の波が、あの浮遊感を連れてきます。冷やす手段は、いくつもあります。特に岩手には、強力な味方がいます。外気です。冬の氷点下の外気浴は、それ自体が世界級の冷却装置。雪の季節は「サウナ→雪の庭→休憩」で、本場フィンランドの湖と同格の温冷差が出ます。冷たい空気は水よりおだやかに効くぶん、心臓にもやさしい冷やし方です。この温冷の波が大きいほど、あとに来る休憩の心地よさも、深くなります。
外気浴という、岩手の贅沢
水風呂のない冷やしには、水風呂にはない喜びがあります。それが外気浴です。火照った肌を、澄んだ空気がゆっくり撫でていく感覚。盛岡の冬なら、頬に触れる冷気と、白い息と、遠くの岩手山。春は芽吹きの匂い、夏は夕立あがりの土の香り、秋は落ち葉のかさり。同じサウナでも、季節ごとにまるで違う外気が待っています。風が汗を奪っていく一瞬の鳥肌、そのあとに訪れる、ぽかぽかと火照りが戻ってくる波。遠くで鳴く鳥の声や、木々のざわめきまで、耳がやけに澄んで聞こえてきます。この移ろいを五感で味わえるのは、屋根のない空の下ならではです。
冷水シャワーの、正しい浴び方
通年の主力は、冷水シャワーです。コツは、かけ水の作法(こちら)と同じで、足先から順に、心臓へ向かって。頭から一気は、慣れるまで避ける。全身に行き渡ったら、数十秒そのまま、皮膚がきゅっと締まる感覚まで。夏の水道水はぬるくなりますが、ぬるめの締めは長く浴びられて、これはこれで気持ちいいものです。桶一杯のかぶり水を最後にバシャッ、という和式の締めも爽快です。肩までしっかり冷やしたら、あとは深呼吸をひとつ。これで一セットの締めです。
休の時間を、いちばん大切に
冷やしたあとに待っているのが、休憩です。実は、ととのいがいちばん深く訪れるのは、この「休」の時間。冷やしで引き締まった体が、椅子に身をあずけた数分でゆっくりほどけ、血が静かにめぐり直していきます。イスひとつと、ひざ掛け一枚。外気に当たりながら、まぶたを閉じて、自分の呼吸だけを追う。水風呂があってもなくても、この休憩を丁寧に取れる人が、いちばん深いところまでたどり着きます。空を見上げても、目を閉じても、正解はありません。自分がいちばん気持ちいい姿勢で、ただ座っていればいい。冷やしは、いわば主役の前ぶれ。この静かな時間こそが、本編なのです。
それでも水風呂が欲しくなったら
正直な続きも書きます。サウナ愛が深まると、多くの方が、いつか水風呂が欲しくなります。そのときの拡張手段は、段階があります。大型のたらいやプラ舟に水を張る簡易式から、チラー(冷却器)付きの本格水風呂まで。最初から水風呂ありきで予算を悩むより、シャワーと外気で始めて、愛が育ってから拡張する。この順番が、後悔のない設計だと私たちは考えています(費用の話)。
あなたの冷やし、一緒に設計します
岩手・盛岡のD'STYLEは、シャワー派にも、雪ダイブ派にも、いつか水風呂派にも、それぞれの冷やしの設計をご提案しています。水風呂の有無で迷っている方、その迷いごと、店へどうぞ。
写真: Anneli Salo (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



