サウナから出て、水風呂へ向かう。その間にある、小さな儀式の話をします。かけ湯、かけ水。たった数杯の水を体にかけるだけの動作ですが、ここには、マナーと、体を守る知恵の両方が詰まっています。ベテランほど、この数秒を、おろそかにしません。今日は、その理由をひとつずつ。

まず、汗を流すというマナー
水風呂の前に汗を流すのは、いちばん基本のマナーです。サウナでかいた汗をそのまま水風呂に持ち込めば、みんなで使う水を汚してしまう。シャワーか、かけ水で、全身の汗をさっと流してから入る。これは日本の銭湯文化が長い時間をかけて育てた、美しい作法です。他人と湯を分け合ってきた江戸の湯屋の時代から、日本人は、湯を汚さない心づかいを、細やかに磨いてきました。自宅のサウナでも、この習慣は続けてください。水風呂やクールダウン設備を清潔に保つことは、結局、自分の気持ちよさに返ってきます。
心臓から、遠い順に
そして、かけ水には体を守る役割があります。サウナで温まりきった体に、いきなり全身で冷水を浴びると、血管が急に縮んで血圧が跳ね上がり、心臓に負担がかかります。昔からお風呂で言われてきた手順が、ここでも正解です。心臓から遠いところから、順番に。まず足先、ふくらはぎ、腰、手先、そして胸の順に、かけ水で冷たさの予告を体に送る。数杯のかけ水で、体は「これから冷えるぞ」と準備を整え、水風呂の一歩目が、ぐっと穏やかになります。特に冬の岩手の水は、身を切るほど冷えていますから、この予告がよく効きます。(温冷交代の知識は、こちら。)
頭を冷やす、ひと工夫
のぼせやすい人に、もうひとつ。水風呂に入る前、冷たいタオルを頭に乗せたり、うなじにかけ水をしておくと、頭がすっきりして、のぼせを感じにくくなります。頭は熱がこもりやすい場所。サウナ室でも、上気しやすい人はタオルで頭を覆うと、長く快適に座っていられます。熱いところは体の中心で受け、冷たいものは頭に。この上下の使い分けが、無理のないととのいのコツです。頭がのぼせないと、水風呂の気持ちよさも、外気浴のうっとりも、ひと味深くなります。
水通しという、粋な知恵
サウナーの間には「水通し」という言葉もあります。サウナに入る前に、先に水風呂やシャワーでさっと体を冷やしておくことです。体の表面をあらかじめ冷やしておくと、サウナ室で長く快適に座っていられて、発汗の立ち上がりも変わってきます。夏の暑い日、一セット目の前の水通しは、格別に気持ちがいい。順番の常識を少し崩した、遊び心のある知恵です。もともとは、熱い温泉や湯船の前に、いきなり熱に飛び込まないための「かかり湯」の変形とも言えます。試すときは、体が冷えすぎない程度に、さっとどうぞ。冬は水通しを省いて、かけ湯だけにするなど、季節で使い分けるのも、体をよく知る人のやり方です。
儀式が、時間を丁寧にする
かけ湯も水通しも、慣れれば十秒の動作です。でも、この小さな儀式を丁寧にやる人のサウナは、全体が丁寧になります。急がず、順を追って、体と対話しながら。茶道のお点前のように、決まった所作が、時間そのものを深くしてくれる。サウナの気持ちよさの何割かは、こういう「間」でできています。(入り方の基本は、こちら。)
作法ごと、お渡しします
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、サウナの設置のときに、こうした入り方の作法まで含めてお渡ししています。道具と一緒に、その道具を生かす文化も。おすすめの楽しみ方のご相談、いつでもどうぞ。
写真: Stanislav.nevyhosteny (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



