「うちのサウナ、90度って書いてあるのに、ぬるい気がする」。店でよくいただくご相談です。調べてみると、温度計そのものは元気に動いていて、掛けてある場所が答えでした、という結末がいちばん多い。サウナ室の中は、場所によって20度以上違う世界です。今日は、温度計の定位置の話。

サウナ室は、温度の層でできている
熱い空気は上へ。サウナ室の温度は、天井近くが最も高く、床へ向かうほど下がる、層の構造です(姿勢の話)。天井直下で100度でも、ベンチの座面あたりは80度、足元は60度、床は40度台、ということが普通に起きます。つまり「サウナの温度」とは、どの高さの温度かを決めない限り、半分しか語っていない数字です。施設や機器の表示温度がしばしば体感と合わないのは、センサーの高さが自分の座る高さと違うからです。
定位置は「座ったときの頭の高さ」
家庭サウナの温度計の定位置は、上段ベンチに座ったときの頭〜胸の高さ、が実用の基準です。自分が浴びている熱を知りたいのですから、自分のいる高さを測るのが道理です。ヒーターの真上や直近は、上昇気流の直撃で高めに出て、ロウリュのたびに針が踊ります。ドアの近くは開閉のたびに下がります(ドアの話)。落ち着いて測れるのは、ヒーターから対角寄りの壁の、頭の高さ。ここが定席です。
なぜ、場所で20度も違うのか
なぜここまで差が出るのか。答えは、空気の対流です。ヒーターに温められた空気は軽くなって天井へのぼり、そこで冷えながら壁を伝って下り、また温められてのぼる。この大きな循環が、部屋の中に温度の層を作ります。だから同じ90度設定でも、天井近くと足元では別世界。ロウリュで蒸気を送ると、この循環がかき混ぜられて、熱がぐるりと体を包みに来ます。あの一瞬の熱さは、温度計の数字が急に上がったのではなく、循環が体まで熱を運んできた合図です。層を知ると、座る高さの選び方まで変わってきます。体を芯から温めたい日は、思いきって上段の熱い層へ。じんわり長く楽しみたい日は、一段下りて足元寄りの穏やかな層へ。同じ部屋の中で、座る高さを変えるだけで、まるで別のサウナに入ったように熱の届き方が変わります。温度計の一つの数字に振り回されず、自分の心地よい層を探して腰を下ろす。そうやって高さを使いこなせるようになると、サウナは一段と自由で、面白い場所になります。
木製・バイメタルの、選び方
温度計そのものにも、向き不向きがあります。サウナで長く使われてきたのは、金属の伸び縮みで針を動かすバイメタル式の、木枠の丸い温度計です。電池も要らず、熱と蒸気に強く、あの高温高湿の部屋で何年も働いてくれます。デジタル温度計や精密なアルコール温度計は、80度を超える蒸気の環境を得意としません。選ぶなら、サウナ用と明記された耐熱品を。木製の枠は、内装にもすっと馴染みます。針がゆっくり動くのを眺めるのも、アナログならではの味わいです。
湿度計と砂時計の、脇役たち
温湿度計なら、体感の正体(温度×湿度。こちら)がさらに読めます。ただしサウナ用の耐熱品を。砂時計は、時間の目安が欲しい人の古典的な相棒ですが、時計を見ない楽しみ(こちら)に進んだら、外してしまうのも一興です。計器は、慣れるまでの補助輪。最後は自分の肌が、いちばんの温度計になります。
数字と体感の、答え合わせを
温度計を正しい位置に掛けると、「90度のはずがぬるい」の謎は、たいてい解けます。それでも合わないときは、石の量、換気、ドアの気密の出番です。岩手・盛岡のD'STYLEは、計器の位置ひとつから、気持ちいい熱の調整をお手伝いしています。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: Unknown authorUnknown author (Wikimedia Commons, CC BY 4.0)



