「サウナの中は写真に残らない」と以前書きました。あの主張は変わりませんが、撮っていいものもあります。炎です。薪ストーブの火、雪をかぶったサウナ小屋、外気浴から見た月。ところが炎の写真は、普通に撮ると、白飛びしたオレンジの塊になりがちです。今日は、スマホで火を美しく残すコツ。撮影の三原則と、番外編をどうぞ。

原則一 / 明るさを、思い切って下げる
炎の撮影の最大の敵は、スマホの親切心です。カメラは暗い部屋を明るく写そうとして、炎を白飛びさせ、周囲をざらざらに持ち上げます。対策は、画面の炎をタップしてピントを合わせ、そのまま指を上下させて明るさ(露出補正)を思い切って下げること。多くのスマホでは、ピント枠の横に太陽のマークが出るはずです。画面全体は暗くなりますが、炎の輪郭と、赤から黄へのグラデーションが戻ってきます。炎の写真は、暗いくらいでちょうどいい。現実の目で見た「暗い部屋の明るい火」に、写真を寄せていくのです。
原則二 / 連写して、いい瞬間を選ぶ
炎は、一秒間に何度も形を変えます。狙って撮るものではなく、数から選ぶもの。シャッターを長押しする連写(バーストモード)で数十枚撮って、炎の形がきれいな一枚を選ぶのが、正しい撮り方です。薪がはぜて火の粉が舞う瞬間、ロウリュの蒸気が立つ瞬間も、連写なら拾えます。動画で撮っておいて、あとから静止画を切り出す手もあります。夜モードは手ブレに強い一方、炎の動きがにじむことがあるので、両方試して好みで選んでください。何十枚の中から数枚を残す潔さこそ、火の写真では効きます。
原則三 / 部屋の照明を、消す
そして、いちばん効くのがこれです。撮影のときだけ、部屋の照明を消す。天井の照明が混ざると、炎の色温度と喧嘩して、写真が濁ります。火明かりだけの部屋で撮った一枚は、それだけで絵になります。小物を手前に置くのも効果的です。湯のみ、本、猫。炎は背景の主役にして、手前の暮らしにピントを合わせる構図は、スマホで撮っても映える定番です。(暗さの美学は、こちら。)
番外 / 湯気と蒸気は、逆光で狙う
火だけでなく、湯気や蒸気も、絵になる被写体です。決め手は、光の向き。ロウリュの立ちのぼる蒸気も、外気浴のとき口から出る白い息も、光を背中側から受けると、白くふわりと浮かび上がります。窓明かりや火明かりを被写体の向こう側に置いて、こちらは影の側から撮る。逆光は失敗と思われがちですが、透けるもの、立ちのぼるものを撮るときは、いちばんの味方です。湯気の一枚が撮れると、写真に温度と湿り気まで宿ります。人のシルエットを湯気の手前に入れると、そこに物語のある一枚が生まれます。ロウリュの瞬間は、蒸気が石から立ちのぼる一秒が勝負なので、ここでも連写が頼りになります。
外の一枚も、忘れずに
屋外なら、雪の日のサウナ小屋と煙突の煙、夜の小屋の窓の灯り、外気浴の椅子と月。青い夕暮れ、日没直後の十数分は「ブルーアワー」と呼ばれ、空の藍色と窓の灯りのオレンジが響き合う、プロっぽく仕上がる魔法の時間帯です。雪あかりの夜は、月と雪が自然のレフ板になり、フラッシュなしでも小屋が青白く浮かびます。手すりや雪の上にスマホを置いて撮れば、三脚がなくてもぶれません。ただし、撮影に夢中で体を冷やさないこと。ととのいの本編は、撮影の前に済ませておきましょう。
撮りたくなる暮らしを
岩手・盛岡のD'STYLEは、思わず撮りたくなる火と蒸気の暮らしをお手伝いしています。設置後の一枚、よろしければ店にも見せてください。私たちの何よりの励みです。ご相談、いつでもどうぞ。



