薪ストーブの煙突屋をやっていると、たまに「薪ストーブとは関係のない仕事」が舞い込みます。コーヒー焙煎機の排気工事も、その一つです。豆を煎る機械から立ちのぼる熱と煙とチャフ(豆の薄皮)を、屋外まで安全に逃がす。考えてみれば、これは私たちが薪ストーブの煙突で毎日やっていることと、驚くほど近い仕事でした。
焙煎機は、小さな炎の機械である
コーヒー豆の焙煎機は、ドラムの中で生豆を転がしながら、下からガスの炎で熱を加える機械です。豆が煎られる過程で薄皮(チャフ)が舞い、煙とともに立ちのぼります。この煙と熱をどこにも逃がさなければ、店内は煙たく、焙煎香どころではなくなってしまいます。だから焙煎機には必ず排気の出口があり、そこから屋外まで、煙とチャフを運ぶ道をつくらなければなりません。
この「炎を焚いて、出てきた煙とチャフを外まで安全に運ぶ」という構造は、薪ストーブと煙突の関係とまったく同じです。燃やす対象が薪か豆かの違いだけで、求められる仕事の本質は変わりません。

搬入から、もう工事は始まっている
焙煎機は決して小さな機械ではありません。木箱に厳重に梱包された状態でトラックに載って届き、クレーンで慎重に下ろします。ここから店内の据付位置まで運び込み、水平を出し、排気の取り出し口の向きを合わせて設置する。ここまでの段取りだけでも、薪ストーブを二階の設置場所まで運び込む作業と重なる部分が多くあります。


壁を抜き、煙の道をつくる
設置がすんだら、次は排気です。焙煎機から出た煙とチャフは、まず機械側で大きなゴミを落としたうえで、ダクトを通して屋外へ導きます。壁に穴を開け、断熱された二重の筒を通し、外壁を貫通させる。ここでの考え方は、薪ストーブの煙突を天井や壁から屋外へ抜く工事とほぼ同じです。可燃物から必要な離隔を取ること、貫通部から雨水や虫が入らないようにすること、抜けた先の煙が近隣の迷惑にならない向きと高さを選ぶこと。炎の種類が違っても、気にすることは共通しています。

雪が積もる季節にも、煙は抜けなければならない
岩手の冬は、外壁から抜けた排気筒の先にも雪が積もります。屋根に近い高さから排気筒を抜く場合、雪の重みで筒がたわんだり、垂れ下がった雪庇(せっぴ)がふさいでしまったりしないよう、抜く位置と支持の仕方を考える必要があります。これも薪ストーブの煙突を雪国の屋根から立ち上げるときに、毎年考えていることと同じです。

薪ストーブ屋が、コーヒー焙煎機の仕事もする理由
私たちの本業は、あくまで薪ストーブとサウナです。ただ、炎を焚く機械の排気をどう安全に外へ導くかという技術は、対象が薪ストーブでもペレットストーブでも、コーヒー焙煎機でも、根っこのところで同じ考え方を使います。だからこうした相談をいただいたときは、遠慮なく現場に入らせてもらっています。
ピザ窯や薪でのクッキングも、私たちの得意分野の延長にある仕事です。火を焚く場所と道具が変わっても、その火をどう安全に、心地よく暮らしや商いの中に落とし込むかという一点は、ずっと変わりません。今後もこうした現場の話を、写真とともに紹介していきたいと思っています。



