本文へ

あなたの薪ストーブを全国基準で高価下取りします。さらに詳しく ›

YOMIMONO / 家と薪ストーブ ④ 家の中の気圧

冬の家は、
一本の煙突になる

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2026年10月31日

冬の家は、それ自体が一本の大きな煙突のように働きます。暖かい空気が家の中に柱のように立ち、上へ抜けようとするからです。家の中の気圧は、高さによって違います。上の階と下の階、吹き抜けの上と下で、空気の押し合いの向きが変わります。薪ストーブをどこに置き、煙突をどう通すかは、この見えない気圧の地図を知っているかどうかで変わります。

換気扇やレンジフードと燃焼空気の取り合いは「薪ストーブは、家の空気で燃えている」に、C値や外気導入は「高気密住宅と薪ストーブ」に書きました。この読みものでは、家の中の気圧そのものを描いてみます。

冬の家には、気圧の「中立の高さ」があります

暖かい空気は、冷たい空気より軽くなります。家の中が20℃、外が氷点下のとき、家の中の空気の柱は外の空気の柱より軽く、そのぶん家の上の方では中の気圧が外より高くなり、下の方では低くなります。これを煙突効果と呼びます。

上と下のあいだには、中と外の気圧がちょうど等しくなる高さがあります。この高さを中性帯と呼びます。中性帯より上では、家の中の空気が隙間から外へ押し出され、下では外の冷たい空気が隙間から入ってきます。中性帯の高さでは、隙間を通る空気の流れがありません。

条件(室内20℃)高さ1mあたりの気圧差高さ6mの2階建ての上下差
外が氷点下5.2℃(盛岡の1月の日最低気温の平年値)約1.1パスカル約6.7パスカル
外が氷点下10℃約1.35パスカル約8.1パスカル

※ 内外の空気の重さの差(ΔP=g・h・(ρ外−ρ内))から当社で計算。

中性帯が家の高さのちょうど真ん中にあれば、外が氷点下10℃の夜、1階の床の近くは外より約4パスカル低く、2階の天井の近くは約4パスカル高くなります。アメリカのペンシルベニア州立大学の住宅研究センターの資料も、冬の家の中と外の気圧差をおおむね0〜4パスカルとしています。

1階のストーブは、負圧の側に立っています

多くの家で、薪ストーブは1階に置かれます。1階は中性帯より下にあるので、家の中の気圧は外より低くなっています。ストーブと煙突から見ると、部屋の側から煙を押し上げる力が少し弱い状態です。

火が勢いよく燃えているときは、煙突の引きのほうがずっと強いので問題になりません。気をつけたいのは焚き付けの時間です。冷えた煙突の中の空気が部屋と同じ20℃のとき、高さ5mの煙突の引きは、外が氷点下5℃で約5.5パスカル、氷点下10℃で約6.7パスカルしかありません。1階の足もとの負圧が4パスカル前後あれば、焚き付けの煙を引き上げる力の大半が打ち消されます。焚き付けで煙が部屋に漏れやすいのは、このためです。

家の隙間が上の階に多い家では、中性帯が上へ寄り、1階の負圧はさらに深くなります。2階の窓を開けて換気をすると、上で空気が抜けて同じことが起きます。焚き付けのときに2階の窓が開いていないか、確かめてください。

家が煙突より背が高いと、家が勝ちます

カナダ政府の住宅用薪暖房のガイドは、外壁に沿って立ち上げた冷たい煙突と、地下や1階のストーブの組み合わせで、火を入れる前から煙突を冷たい空気が下りてきて、焚き付けの煙が部屋へ出る例を挙げています。煙突の口が2階の天井より低い家では、家のほうが背の高い煙突になり、引き合いに勝ってしまう、という説明です。

同じガイドが勧める対策は、煙突を家の中に通し、家でいちばん高い暖房された空間より上から外へ出すことです。家の中を通る煙突は温かく保たれ、家の煙突効果に負けにくくなります。当社が室内をシングル煙突でまっすぐ立ち上げ、屋根の貫通部から上を断熱二重煙突にして全高4m以上をとっているのも、同じ考え方です(煙突について)。

吹き抜けのある家は、暖かい空気の柱が高くなるので、煙突効果も強くなります。吹き抜けの下にストーブを置くなら、ストーブは柱のいちばん下、負圧の深い側に立つことになります。一方で、吹き抜けの中を立ち上がる煙突は暖かい空気に包まれて冷えにくく、引きを保ちやすくなります。この二つを合わせて、煙突の高さと口の位置を決めます。ここは当社の現場での考え方です。

換気扇を回すと、中性帯は上へ動きます

ここまでは、隙間から自然に出入りする空気の話でした。家の空気を機械で外へ出す換気扇やレンジフードを回すと、家全体の気圧が下がり、中性帯は上へ押し上げられます。家の大部分が外から空気を吸い込む側になります。先の住宅研究センターの資料では、家の負圧が3パスカル未満ならふつうは大きな心配はいらず、家の気密が高いほど、排気の量が多いほど、負圧は深くなるとしています。

家の換気の方式によっても、家の中の気圧の状態は変わります。国土交通省の資料では、給気も排気も機械で行う第1種換気は家の中の気圧を一定に保ちやすく、給気だけを機械で行う第2種換気は正圧に、排気だけを機械で行う第3種換気は負圧になるとされています。住宅の居室には、1時間に部屋の空気の半分を入れ替える換気量が、建築基準法施行令で求められています。

換気の方式給気排気家の中の気圧
第1種換気機械機械一定に保ちやすい
第2種換気機械自然正圧
第3種換気自然機械負圧

薪ストーブは、どこまでの負圧に耐えられるか

カナダの住宅金融公社(CMHC)の煙突の安全試験の手引きでは、煙が部屋に漏れ出す心配が出てくる家の負圧の目安を、機器の種類ごとに示しています。扉を閉めて燃やす気密型の薪ストーブは−10パスカル、扉のない開放型の暖炉は−3〜−4パスカルです。扉と気密のいい薪ストーブは、開放型の暖炉よりずっと負圧に強い機器です。

それでも、焚き付けのように煙突が冷えている時間や、空気を絞りすぎてくすぶっているときは、引きが弱くなり、漏れやすくなります。カナダ政府のガイドは、煙が部屋に漏れるいちばん多い原因はくすぶるような燃やし方だとし、排気ファンを回している家では、燃焼用の外気をダクトで引いていても、同じ負圧で煙が漏れた例を挙げています。外気導入は大切な備えですが、それだけで安心せず、家の側の負圧と燃やし方の両方に気を配ります。

一酸化炭素は、においも色もありません

煙が部屋に漏れるとき、いちばん怖いのは一酸化炭素です。一酸化炭素は色もにおいも味もなく、血液の中で酸素を運ぶヘモグロビンと、酸素の約245倍も強く結びつきます。世界保健機関(WHO)の室内空気のガイドラインは、15分なら約86ppm、1時間なら約30ppm、8時間なら約9ppmを超えないことを目安としています。

空気中の一酸化炭素症状が出るまで主な症状
200〜300ppm5〜6時間頭痛・耳鳴り
1,100〜1,500ppm1.5〜3時間けいれん・意識を失う
1,600〜3,000ppm1〜1.5時間死亡することがある
5,000〜10,000ppm1〜2分死亡

※ 東京消防庁のページ(出典は『火災便覧 第3版』)から、ppmに直して当社が整理したもの。

人の鼻では気づけないので、警報器に頼ります。消防庁の資料によると、住宅用の火災・一酸化炭素警報器の多くは2段階で知らせ、50ppmを超える低い濃度では黄色いランプの点滅のあと5分ほどで声で、高い濃度ではすぐに声で知らせます。薪ストーブのある部屋には、取扱説明書に従って一酸化炭素警報器を付けてください。

家の気圧の地図を、設計で描きます

確かめること理由
ストーブの階と煙突の高さ1階は中性帯より下の負圧側。煙突の口は家でいちばん高い暖房空間より上に出す
煙突の通り道家の中を通すと温かく、家の煙突効果に負けにくい。外壁沿いの冷たい煙突は焚き付けで逆流しやすい
吹き抜け暖かい空気の柱が高くなり、下の負圧が深くなる
換気の方式と排気の量第3種換気やレンジフードは負圧をつくる。焚き付けのときは止めるか弱める
上の階の窓2階の窓を開けると中性帯が上がり、1階の負圧が深くなる
一酸化炭素警報器においのない危険に、機械で備える

家の性能が上がるほど、家の中の空気は設計どおりに動くようになります。気圧の地図を描いてからストーブの場所と煙突の道を決めれば、焚き付けから熾火まで、煙は素直に上へ抜けていきます。新築でもリフォームでも、間取りの段階からご相談ください。

関連するページ:家と薪ストーブは、熱と水と空気でつながっている・屋根の上の風と、煙突の高さ・高気密住宅と薪ストーブ・薪ストーブは、家の空気で燃えている・薪ストーブの煙は、なぜにおうのか

参考:Penn State PHRC 技術資料(2012年3月)、カナダ住宅金融公社(CMHC)『A Guide to Residential Wood Heating』(2008年、目録)、国土交通省「換気に関する規定」(PDF)、建築基準法施行令第20条の8、WHO『Guidelines for indoor air quality: selected pollutants』(2010年、WHO)、東京消防庁(一酸化炭素)、消防庁の資料(PDF)、盛岡の気温は気象庁の平年値(1991〜2020年)。気圧差と煙突の引きの数字は当社の計算です。

D'STYLE
有限会社D'STYLE

岩手県盛岡市。薪ストーブ・ペレットストーブ・サウナの設計施工と煙突掃除。設置実績900件超。日本暖炉ストーブ協会会員。

ストーブの場所は、空気の流れで決める。

家の高さ、換気の方式、煙突の通り道。間取りの段階で家の中の気圧を描いておくと、焚き付けから煙が素直に上がります。