サウナ設備の話では、ヒーターと石ばかりが主役になります。でも、ととのいの現場を思い出してください。あの多幸感の本番は、サウナ室の中ではなく、外の椅子の上で起きています。つまり、外気浴の椅子は、サウナ体験の後半戦をまるごと担う、縁の下の主力選手。今日は、その椅子の話です。

すべては「預けきれるか」で決まる
いい外気浴の椅子の条件は、突き詰めればひとつです。全身の力を、完全に預けきれること。背もたれが立ちすぎた椅子では、体幹が姿勢を保とうと働き続けて、脱力が完成しません。理想は、背もたれが深く倒れ、足が心臓より高く上がり、頭のうしろまで支えられる状態。体のどこにも「支える仕事」が残っていないと感じられたとき、ととのいは一段深くなります。サウナーの間でインフィニティチェアと呼ばれるリクライニングチェアが絶大な支持を得ているのは、まさにこの「力の抜けきる角度」が出せるからです。
無重力の姿勢は、宇宙生まれ
この「力が抜けきる姿勢」には、じつは宇宙の裏付けがあります。アメリカ航空宇宙局が、無重力の中で人の体が自然に落ち着く形を調べたところ、背は少し倒れ、ひざは軽く曲がって持ち上がる、独特の「中立姿勢」をとることがわかりました。宇宙船の座席は、この姿勢を基準に作られています。足を心臓より高くして横たわると、脚にたまっていた血が戻りやすくなり、体はいっそう楽になる。外気浴の椅子で深く沈むあの心地よさは、宇宙飛行士が味わう無重力の解放感と、どこか親戚なのです。
座る椅子にも、出番がある
では寝られる椅子が常に正解かというと、そうでもありません。短い休憩を挟みながらテンポよく回す日、家族で椅子を分け合う場面、雪の日にさっと腰かけたいとき。安定した普通の椅子や、木のベンチにも、ちゃんと出番があります。一セット目や二セット目は、まだ心拍が落ち着ききらないので、腰かけて呼吸を整えるだけでも十分。深く沈み込みたくなるのは、体が芯からゆるむ後半です。おすすめは二段構え。さっと座れる椅子と、預けきる椅子。最終セットの外気浴だけ、寝られる椅子で長めに、が贅沢な使い分けです。
岩手の外気浴は、道具で伸びる
雪国の外気浴には、道具の工夫が要ります。素材は、雪と水に強く、凍っても割れにくいものを。金属のフレームは冬、肌に触れるとひやりとするので、タオルを一枚。そして、毛布です。冬の外気浴は、毛布を一枚かけるだけで、心地よくいられる時間がぐっと延びます。体は冷やしすぎず、顔だけ冬の澄んだ空気に触れている状態は、雪見の露天風呂と同じ理屈。足元にすのこや板を一枚敷けば、足裏から這い上がる冷たさも和らぎます。フィンランドの人たちが凍った湖のほとりで平然とくつろげるのも、こうした足元と首まわりの小さな備えを、昔から知っているからです。(雪の外気浴の話は、サウナ歳時記。)
椅子の向きは、景色へ
最後に、置き方をひとつだけ。椅子の向きは、家の壁ではなく、景色へ。庭の木、遠くの岩手山、夜なら星の方角へ。ストーブ前の椅子を炎に向けるのと、同じ理屈です。何を見ながらととのうかまで含めて、外気浴の楽しみ。目に映る景色が、その日のととのいの深さを、そっと決めています。(星空の話はこちら、特等席の理論はこちら。)
後半戦まで、設計します
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、サウナ本体だけでなく、外気浴の椅子と景色まで含めたご提案をしています。ととのいの後半戦まで、一緒に設計しませんか。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: LPfi (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



