雲の図鑑(こちら)、冬の音の図鑑(こちら)に続く、外気浴の自然図鑑シリーズ。今日は、風です。外気浴の気持ちよさの半分は、実は風が運んでいます。目に見えない名脇役の話です。

火照った肌は、風の受信機になる
サウナ上がりの肌は、汗の水分をまとった、高感度の風センサーです。汗が蒸発するとき熱を奪う気化冷却のおかげで、ふだんなら気づかないほどの微風さえ、火照った肌にははっきり感じられる。そよ風が撫でるたび、体の表面をすうっと涼しさが走る、あの快感です。つまり、同じ風でも、サウナ上がりの体だけが受け取れるごちそうがある。外気浴とは、風の解像度が上がった体で、大気と対話する時間なのです。
風速1メートルで、体感は1度下がる
風が涼しいのは、気分だけの話ではありません。風は、体のまわりにできる温かい空気の膜を吹き払い、汗の蒸発を助けて、体感温度を実際に下げます。おおよその目安として、風速一メートルにつき、体感温度は一度ほど下がると言われます。だから夏のそよ風は天の恵みですが、冬の同じ風は、思うより体を冷やします。冬の外気浴で「思ったより早くぶるっと来た」と感じるのは、この風の仕業です。夏は味方、冬は少し手強い相手。同じ風の二つの顔を知っておくと、外気浴の切り上げどきを見誤りません。
風速別・外気浴の味わい
図鑑らしく、風速別に。無風(0m)の日は、静寂の外気浴。湯気がまっすぐ立ちのぼり、音がよく通る、瞑想向きの日です。そよ風(1〜2m)は、外気浴の最高条件。頬に触れるか触れないかの風が、気化冷却をほどよく促し、いつまでも座っていられます。軟風(3〜4m)は、涼しさが加速する日。夏には天の恵み、冬は冷えすぎ注意で、毛布と風上への背中が装備です。それ以上の強風の日は、体感温度が急落するので、外気浴は短めに切り上げるか、風の陰へ。風と体感温度の関係は、冬山の常識と同じです。
椅子の置き場に、風の設計を
実用をひとつ。外気浴の椅子の定位置を決めるとき、景色(山の話)だけでなく、風も考えてください。夏は風の通り道に、冬は建物や薪棚の風陰に。同じ庭でも、風の当たり方は場所で驚くほど違います。夏の定位置と冬の定位置、二か所あると完璧です。日本語には、東風(こち)、青嵐、木枯らし、風花と、風の名前が豊かにあります。今日の風の名を考えながらの外気浴も、また一興です。
風は、香りと音も運んでくる
風が運ぶのは、涼しさだけではありません。香りと音も、風に乗ってやってきます。サウナから流れ出るロウリュの湯気の匂い、白樺のヴィヒタの葉の香り、庭の金木犀や梅の花。季節の香りが、そよ風にのって外気浴の椅子まで届く瞬間は、格別です。音もそうです。木々の葉がいっせいにざわめく音、風鈴、遠くの葉ずれ。風のない日には気づかない、こうした音と香りを、風はそっと連れてきてくれます。目を閉じて、いま風が運んできたものを数えてみる。外気浴が、いっそう豊かな時間になります。風はまた、季節そのものを運ぶ使者でもあります。春一番の生あたたかい風、夏の夕方に川からのぼる涼風、秋を連れてくる乾いた高い風、そして冬の頬を刺す北風。目を閉じていても、頬に触れる風の質だけで、今がどの季節かが分かる。移ろう風の便りを、火照った肌で受け取る。外気浴は、暦をめくるように、季節の歩みを体で味わう時間でもあるのです。
風まで味方の庭を
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写真: Kenneth Allen (Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.0)



